実は私、転生者です。 ~俺と霖とキネセンと

ねぎ(塩ダレ)

文字の大きさ
上 下
1 / 12
本編

七不思議の幽霊

しおりを挟む
俺の学校にも、当たり前ながら七不思議がある。
だいたいは全国的なものと代わり映えがないのだが、1つだけ変わったものがある。
「梅雨時になると自殺した男子生徒の霊が現れる」と言うものだ。
だが、調べたが、この学校が始まってから今日まで、自殺した生徒はいない。
だいたい何なんだよ?梅雨になると現れるって??
他はどうした!?
まぁ、夏になるから気を使ってくれているのかもしれないが……。
どんだけ空気読んでるんだよ、その幽霊?
別に七不思議とかそんなに興味はなかったが、ゴールデンウィーク明けのやたら暑さがくどくなると、そんな怪談話をし始める会話がどこからか聞こえてきた。
梅雨入りはいつだろう?
ギラギラする太陽を手で遮り、そんな事を思った。




暑かったのが嘘のように、雨が続いて梅雨入りした。
その頃はすっかりあの七不思議の話は忘れていた。
そんな事より夏休みの方が待ち遠しい。
その前のテスト期間が恨めしいが、そこは仕方がない。
楽しみの前の苦行だ。
致し方ない。
そしてテストの店が悪くても、提出物をしっかりやっていれば最悪の事態は免れる。
俺はクラスの回収に間に合わず、出し忘れた実験ノートの提出をしに化学準備室を訪れた。

「やっぱ、月も関係あるんじゃないか?」

「どうだろう?でも冬にも見えたんだよね?」

「長雨だったからな、あの時は。」

何だか話し声がする。
俺は気にせず、準備室のドアをノックした。
慌てたような雰囲気はあったが、すぐにドアが開いた。

「何だ?」

「あ、実験ノート、回収に間に合わなくて出しに来た。」

「お~、お疲れ~。」

キネセンはかったるそうに言いながら、ノートを受け取った。
キネセン、化学の杵玄人先生だ。
確か、クロウトと書いてゲントって読む名前で、名前は格好いいなと思った。
キネセンは若い先生なので比較的、皆、打ち解けてる。
女子がキャーキャー言ったりもするが、キネセンはかったるそうにするだけで、あまり態度を変えないので、男子からもあまり妬まれていない。

「どうした?柘植?」

「キネセン、今、誰かと話してなかったか?」

俺はキネセンの後ろを覗き込んだが、誰もいなかった。
キネセンは特に何かを隠そうとしている様子はなく、俺が中を覗けるように体をずらしてくれた。

「あ~、電話だ、電話。スピーカーにしてた。」

俺は少しだけ準備室に入ってキョロキョロしたが、やはり誰もいなかった。

「こら、入るな。ここは薬品とかあっから、生徒入れられないんだよ。」

「ヤバい薬品もあるの!?」

「あるある。だから入るな。」

「ちょっとくれよ!」

「馬鹿。言っとくが、ヤバいやつは重さ量って管理されてんだ。盗んだってバレるからな。」

「うわ~、面倒臭せぇ~!キネセンが管理してんの?」

「今はな。何かあったら俺の責任になるから、入ってくるな!」

「え~!お茶ぐらい出せよ~!」

「ほら、さっさと帰れ!」

「わかったから押すなよ!いてぇなっ!」

俺はそう言って、準備室から追い出された。
俺は押されたところを大袈裟に払った。

「気をつけて帰れよ~。」

「うるせ~!」

「勉強しろよ~!」

「余計なお世話だっつーの!」

悪態をつく俺に、キネセンは特に何も言わず、相手にもせずにドアを閉めた。
何だよ、本当、愛想のない先生だな!?
まぁ、人によって愛想を振り撒くタイプではないから、男子からも女子からもだいたい嫌われていないんだけど。
あんなんじゃ、先生の中で浮くんじゃないか??
あんまり先生って感じもないし。
俺はそんな事を思いながら、下駄箱に向かった。

「なぁ、知ってるか!?例のアレ!!」

「聞いた聞いた!!出たんだろ!?」

「そうそう!」

下駄箱に溜まってた生徒達が何か話していた。

「やっぱ、梅雨に入ったからかな!?」

「さぁ?でも七不思議通りだよな~!」

「ちょっと探しに行かね!?」

「行っちゃう!?」

そんな事を言っている。
俺は上履きをしまい、スニーカーに履き替えた。
七不思議通り??
ああ、梅雨に入ると出てくるって幽霊か。
誰か見たのか、梅雨入りしたからそんな噂になるのか。
まぁ、どうでもいい。
俺は傘を取ろうと傘立ての前に立った。
しかし、どこを探しても俺の傘がない。

「クソッ!どこのどいつだっ!!」

傘が盗られたらしいことに苛立ちながら、鞄を漁る。
入れっぱなしで忘れていた折り畳みが出てくる。
良かった、なかったらアウトだった。
傘を開こうと顔を上げると、ちょうどキネセンが2階の廊下を歩いていた。
その後ろを見かけない男子生徒が歩いている。
誰だろ、あれ?
ぼんやりとそれを見ていたら、ふっとその生徒が消えた。

「!?」

え?っと思った。
目を擦ってもう一度見るが、キネセンの後ろには誰もいない。
いや、落ち着け、俺。
ただ、しゃがんだとか、奥に行ったとかで見えなくなっただけだし!
そんなわけないし!!

「……馬鹿らし。」

俺はどぎまぎしているのを誤魔化すように呟いて、雨の中、歩き出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

どうやら手懐けてしまったようだ...さて、どうしよう。

彩ノ華
BL
ある日BLゲームの中に転生した俺は義弟と主人公(ヒロイン)をくっつけようと決意する。 だが、義弟からも主人公からも…ましてや攻略対象者たちからも気に入れられる始末…。 どうやら手懐けてしまったようだ…さて、どうしよう。

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。 彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。 ……あ。 音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。 しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。 やばい、どうしよう。

皇帝の立役者

白鳩 唯斗
BL
 実の弟に毒を盛られた。 「全てあなた達が悪いんですよ」  ローウェル皇室第一子、ミハエル・ローウェルが死に際に聞いた言葉だった。  その意味を考える間もなく、意識を手放したミハエルだったが・・・。  目を開けると、数年前に回帰していた。

あの日の記憶の隅で、君は笑う。

15
BL
アキラは恋人である公彦の部屋でとある写真を見つけた。 その写真に写っていたのはーーー……俺とそっくりな人。 唐突に始まります。 身代わりの恋大好きか〜と思われるかもしれませんが、大好物です!すみません! 幸せになってくれな!

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

処理中です...