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本編
七不思議の幽霊
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俺の学校にも、当たり前ながら七不思議がある。
だいたいは全国的なものと代わり映えがないのだが、1つだけ変わったものがある。
「梅雨時になると自殺した男子生徒の霊が現れる」と言うものだ。
だが、調べたが、この学校が始まってから今日まで、自殺した生徒はいない。
だいたい何なんだよ?梅雨になると現れるって??
他はどうした!?
まぁ、夏になるから気を使ってくれているのかもしれないが……。
どんだけ空気読んでるんだよ、その幽霊?
別に七不思議とかそんなに興味はなかったが、ゴールデンウィーク明けのやたら暑さがくどくなると、そんな怪談話をし始める会話がどこからか聞こえてきた。
梅雨入りはいつだろう?
ギラギラする太陽を手で遮り、そんな事を思った。
暑かったのが嘘のように、雨が続いて梅雨入りした。
その頃はすっかりあの七不思議の話は忘れていた。
そんな事より夏休みの方が待ち遠しい。
その前のテスト期間が恨めしいが、そこは仕方がない。
楽しみの前の苦行だ。
致し方ない。
そしてテストの店が悪くても、提出物をしっかりやっていれば最悪の事態は免れる。
俺はクラスの回収に間に合わず、出し忘れた実験ノートの提出をしに化学準備室を訪れた。
「やっぱ、月も関係あるんじゃないか?」
「どうだろう?でも冬にも見えたんだよね?」
「長雨だったからな、あの時は。」
何だか話し声がする。
俺は気にせず、準備室のドアをノックした。
慌てたような雰囲気はあったが、すぐにドアが開いた。
「何だ?」
「あ、実験ノート、回収に間に合わなくて出しに来た。」
「お~、お疲れ~。」
キネセンはかったるそうに言いながら、ノートを受け取った。
キネセン、化学の杵玄人先生だ。
確か、クロウトと書いてゲントって読む名前で、名前は格好いいなと思った。
キネセンは若い先生なので比較的、皆、打ち解けてる。
女子がキャーキャー言ったりもするが、キネセンはかったるそうにするだけで、あまり態度を変えないので、男子からもあまり妬まれていない。
「どうした?柘植?」
「キネセン、今、誰かと話してなかったか?」
俺はキネセンの後ろを覗き込んだが、誰もいなかった。
キネセンは特に何かを隠そうとしている様子はなく、俺が中を覗けるように体をずらしてくれた。
「あ~、電話だ、電話。スピーカーにしてた。」
俺は少しだけ準備室に入ってキョロキョロしたが、やはり誰もいなかった。
「こら、入るな。ここは薬品とかあっから、生徒入れられないんだよ。」
「ヤバい薬品もあるの!?」
「あるある。だから入るな。」
「ちょっとくれよ!」
「馬鹿。言っとくが、ヤバいやつは重さ量って管理されてんだ。盗んだってバレるからな。」
「うわ~、面倒臭せぇ~!キネセンが管理してんの?」
「今はな。何かあったら俺の責任になるから、入ってくるな!」
「え~!お茶ぐらい出せよ~!」
「ほら、さっさと帰れ!」
「わかったから押すなよ!いてぇなっ!」
俺はそう言って、準備室から追い出された。
俺は押されたところを大袈裟に払った。
「気をつけて帰れよ~。」
「うるせ~!」
「勉強しろよ~!」
「余計なお世話だっつーの!」
悪態をつく俺に、キネセンは特に何も言わず、相手にもせずにドアを閉めた。
何だよ、本当、愛想のない先生だな!?
まぁ、人によって愛想を振り撒くタイプではないから、男子からも女子からもだいたい嫌われていないんだけど。
あんなんじゃ、先生の中で浮くんじゃないか??
あんまり先生って感じもないし。
俺はそんな事を思いながら、下駄箱に向かった。
「なぁ、知ってるか!?例のアレ!!」
「聞いた聞いた!!出たんだろ!?」
「そうそう!」
下駄箱に溜まってた生徒達が何か話していた。
「やっぱ、梅雨に入ったからかな!?」
「さぁ?でも七不思議通りだよな~!」
「ちょっと探しに行かね!?」
「行っちゃう!?」
そんな事を言っている。
俺は上履きをしまい、スニーカーに履き替えた。
七不思議通り??
ああ、梅雨に入ると出てくるって幽霊か。
誰か見たのか、梅雨入りしたからそんな噂になるのか。
まぁ、どうでもいい。
俺は傘を取ろうと傘立ての前に立った。
しかし、どこを探しても俺の傘がない。
「クソッ!どこのどいつだっ!!」
傘が盗られたらしいことに苛立ちながら、鞄を漁る。
入れっぱなしで忘れていた折り畳みが出てくる。
良かった、なかったらアウトだった。
傘を開こうと顔を上げると、ちょうどキネセンが2階の廊下を歩いていた。
その後ろを見かけない男子生徒が歩いている。
誰だろ、あれ?
ぼんやりとそれを見ていたら、ふっとその生徒が消えた。
「!?」
え?っと思った。
目を擦ってもう一度見るが、キネセンの後ろには誰もいない。
いや、落ち着け、俺。
ただ、しゃがんだとか、奥に行ったとかで見えなくなっただけだし!
そんなわけないし!!
「……馬鹿らし。」
俺はどぎまぎしているのを誤魔化すように呟いて、雨の中、歩き出した。
だいたいは全国的なものと代わり映えがないのだが、1つだけ変わったものがある。
「梅雨時になると自殺した男子生徒の霊が現れる」と言うものだ。
だが、調べたが、この学校が始まってから今日まで、自殺した生徒はいない。
だいたい何なんだよ?梅雨になると現れるって??
他はどうした!?
まぁ、夏になるから気を使ってくれているのかもしれないが……。
どんだけ空気読んでるんだよ、その幽霊?
別に七不思議とかそんなに興味はなかったが、ゴールデンウィーク明けのやたら暑さがくどくなると、そんな怪談話をし始める会話がどこからか聞こえてきた。
梅雨入りはいつだろう?
ギラギラする太陽を手で遮り、そんな事を思った。
暑かったのが嘘のように、雨が続いて梅雨入りした。
その頃はすっかりあの七不思議の話は忘れていた。
そんな事より夏休みの方が待ち遠しい。
その前のテスト期間が恨めしいが、そこは仕方がない。
楽しみの前の苦行だ。
致し方ない。
そしてテストの店が悪くても、提出物をしっかりやっていれば最悪の事態は免れる。
俺はクラスの回収に間に合わず、出し忘れた実験ノートの提出をしに化学準備室を訪れた。
「やっぱ、月も関係あるんじゃないか?」
「どうだろう?でも冬にも見えたんだよね?」
「長雨だったからな、あの時は。」
何だか話し声がする。
俺は気にせず、準備室のドアをノックした。
慌てたような雰囲気はあったが、すぐにドアが開いた。
「何だ?」
「あ、実験ノート、回収に間に合わなくて出しに来た。」
「お~、お疲れ~。」
キネセンはかったるそうに言いながら、ノートを受け取った。
キネセン、化学の杵玄人先生だ。
確か、クロウトと書いてゲントって読む名前で、名前は格好いいなと思った。
キネセンは若い先生なので比較的、皆、打ち解けてる。
女子がキャーキャー言ったりもするが、キネセンはかったるそうにするだけで、あまり態度を変えないので、男子からもあまり妬まれていない。
「どうした?柘植?」
「キネセン、今、誰かと話してなかったか?」
俺はキネセンの後ろを覗き込んだが、誰もいなかった。
キネセンは特に何かを隠そうとしている様子はなく、俺が中を覗けるように体をずらしてくれた。
「あ~、電話だ、電話。スピーカーにしてた。」
俺は少しだけ準備室に入ってキョロキョロしたが、やはり誰もいなかった。
「こら、入るな。ここは薬品とかあっから、生徒入れられないんだよ。」
「ヤバい薬品もあるの!?」
「あるある。だから入るな。」
「ちょっとくれよ!」
「馬鹿。言っとくが、ヤバいやつは重さ量って管理されてんだ。盗んだってバレるからな。」
「うわ~、面倒臭せぇ~!キネセンが管理してんの?」
「今はな。何かあったら俺の責任になるから、入ってくるな!」
「え~!お茶ぐらい出せよ~!」
「ほら、さっさと帰れ!」
「わかったから押すなよ!いてぇなっ!」
俺はそう言って、準備室から追い出された。
俺は押されたところを大袈裟に払った。
「気をつけて帰れよ~。」
「うるせ~!」
「勉強しろよ~!」
「余計なお世話だっつーの!」
悪態をつく俺に、キネセンは特に何も言わず、相手にもせずにドアを閉めた。
何だよ、本当、愛想のない先生だな!?
まぁ、人によって愛想を振り撒くタイプではないから、男子からも女子からもだいたい嫌われていないんだけど。
あんなんじゃ、先生の中で浮くんじゃないか??
あんまり先生って感じもないし。
俺はそんな事を思いながら、下駄箱に向かった。
「なぁ、知ってるか!?例のアレ!!」
「聞いた聞いた!!出たんだろ!?」
「そうそう!」
下駄箱に溜まってた生徒達が何か話していた。
「やっぱ、梅雨に入ったからかな!?」
「さぁ?でも七不思議通りだよな~!」
「ちょっと探しに行かね!?」
「行っちゃう!?」
そんな事を言っている。
俺は上履きをしまい、スニーカーに履き替えた。
七不思議通り??
ああ、梅雨に入ると出てくるって幽霊か。
誰か見たのか、梅雨入りしたからそんな噂になるのか。
まぁ、どうでもいい。
俺は傘を取ろうと傘立ての前に立った。
しかし、どこを探しても俺の傘がない。
「クソッ!どこのどいつだっ!!」
傘が盗られたらしいことに苛立ちながら、鞄を漁る。
入れっぱなしで忘れていた折り畳みが出てくる。
良かった、なかったらアウトだった。
傘を開こうと顔を上げると、ちょうどキネセンが2階の廊下を歩いていた。
その後ろを見かけない男子生徒が歩いている。
誰だろ、あれ?
ぼんやりとそれを見ていたら、ふっとその生徒が消えた。
「!?」
え?っと思った。
目を擦ってもう一度見るが、キネセンの後ろには誰もいない。
いや、落ち着け、俺。
ただ、しゃがんだとか、奥に行ったとかで見えなくなっただけだし!
そんなわけないし!!
「……馬鹿らし。」
俺はどぎまぎしているのを誤魔化すように呟いて、雨の中、歩き出した。
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