姫、始めました。〜男子校の「姫」に選ばれたので必要に応じて拳で貞操を守り抜きます。(「欠片の軌跡if」)

ねぎ(塩ダレ)

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「……何か、ちょっと離れた隙に……壮絶な事が起きてたみたいだな……。」

ライルが教室に戻ると、ただならぬ雰囲気が残り香のように漂っていた。
クラスメイトたちは疲れきっているし、ギャラリーは興奮しているし……サークに至ってはさめざめと泣いている。

「だ~か~ら~!開~け~ろ~!!」

前のドアではシルクが開けろと騒ぎ、ギルがそれを頑なに阻止している。
何であのドアに執着してんだろ?
こっちが開くのに??
不思議に思いながらも、こっそり出前を頼んだ「ブツ」をキッチンスペースに置いてサークに近づいた。

「……うぅ……もう……お嫁に行けない……。」

「サークって嫁志望だったのか……。知らなかった。」

サークは聞こえた声にハッと顔を上げた。
そして苦々しく睨みつけた。

「ライル!!どこ行ってたんだよ!!大変だったんだからな!!」

「みたいだな??何??この惨状??」

「ガスパーがキレて本命渡してきて!!リオも来て!!……俺……ひとりロシアンルーレットやらされたんだからなぁ~!!」

サークの言っている事は今ここに来たばかりのライルには意味不明だった。
ただ、おそらく物凄く面白い事が起こっていたのは理解した。

「……いない間にそんな面白い展開になってたなんて……。見逃して損した。」

「損とか言うな!!どれだけ大変だったと……!!」

「どれだけ大変だったんだ??」

「…………思い出させるなぁ~!!俺の人としての尊厳を返せ~っ!!」

そして机に突っ伏して喚き出す。
よくわからないが、相当面白い事になっていたらしい。
サークでは話しにならないので簡易キッチンスペースに戻り、ぐったりしているクラスメイトに大体の事を教えてもらった。

「……何それ?面白すぎるんだけど?!」

「いや……ギャラリーとリオ様は面白かったと思うけど……サークがエラい事になって……こっちは大変だったんだって……。」

「リオは?」

「……満足して帰った。」

「ふ~ん。それであっちは??」

「……あ~、忘れてた……。一番始めに来て、ずっとあれ……。」

「粘るな?!シルク?!」

未だ開けろ開けないのと騒いでいるシルクとギル。
あれもあれで凄いはずなのに、それを上回る事態だったせいでBGMと化している。

「……とりあえず、いったん状況を正常化するか。」

少し考えてからライルは動き出した。







「はい♡サーク、あ~ん♡」

俺はべそべそ半泣きのまま、言われるまま口を開いた。
目の前には上機嫌なシルク。
ビスケットですくわれたアイスが口の中に入れられる。

「……旨い……旨いよ……。」

ヤバ目のロシアンルーレットの後だから、ごく普通のバニラアイスがめちゃくちゃ美味しく感じる。
リオ……本当に容赦がない……。
だからTVのあれは、半ばヤラセなんだよ……。
ギャラリーを楽しませるための演出なんだよ……。
あんなのガチでやったら死ぬっての……。
落ち込む俺に、シルクが甲斐甲斐しくアイスを食わせてくれる。

「美味しい?!サーク?!」

「うん。」

「うふふっ♡良かった~♡」

それを不機嫌そうな男が二人、睨んで見ている。
ギルはどうでもいいが、極寒のブリザードを出しているもう一人の方は無視する訳にはいかないからこの辺でやめておこう。
アイスはもう少し食べたかったけど仕方ない。
俺はにこにこと爽やかな笑顔で液体窒素なみの冷気を垂れ流しているそいつを手招きした。

「……どうしたんです?サークさん??」

「いいからここ座れ。」

俺はそれまで座っていた椅子から立ち上がり、イヴァンを座らせた。
いきなり向き合う事になったシルクとイヴァンは互いにかぁっと赤くなった。

「……え?!ちょっと何?!」

「ええと?!こ、これは?!」

あわあわする初々しさが何か新鮮でおかしい。
俺はニヤッと笑うと二人に言った。

「俺だけ食わしてもらう訳にはいかないだろ?」

「え?!いやでも?!」

「いいからお前も見せ物になっとけ。ほら!シルクもさっさとしろ!!」

「え……そ、そういうのは~二人きりの時にぃ……。」

「何照れてんだよ?おい。」

俺の意図がわかったのかギャラリーも拍手と声援を送り出す。
まぁ、ここに来てるのはガチのシルクファンじゃないから可能だったんだけどな。

「……え……じゃ、じゃあ……あ、あ~ん??」

「え、あ……はい……。」

めちゃくちゃ照れながらビスケットでアイスをすくうと、シルクがイヴァンに差し出した。
イヴァンも目を白黒させながらもおずおずと口を開く。

「~~~っ!!」

「も!もう終わり!!もうやらない!!」

真っ赤になったシルクは俺にアイスのカップを押し付けると、慌てたように立ち上がって教室から逃げて行った。

「シルクさん?!」

口の中のものを慌てて飲み込み、イヴァンも立ち上がる。
そしてちょっと悔しそうに俺を睨んだ。

「……仕方ないので、今のでチャラにしますよ。」

そう捨て台詞を残して、教室を飛び出して行ったシルクを追い掛けて行った。
何か初々しいなぁ~。
イヴァンはそんな感じでも納得するけど、シルクがあんな感じになるとは思わなかった。
俺は自分の仕事に満足して、渡されたカップアイスを食べようとしたのだが……。

「?!」

いきなりヒョイッとそれを奪われた。
誰だよと思って横を見ると、ギルがアイスのカップを持って、無表情に俺を見下ろしている。

「……おい、まさかとは思うが……。」

しかし俺の言う事なんか聞いちゃいないストーカーは、おもむろに机においてあるビスケットを手に取るとアイスをすくい、俺の方に突き出してくる。

「やめろ!!やらないならな?!」

「………………。」

「ちったぁ!なんか言え!!」

「……食え。」

「嫌に決まってんだろぉ~っ!!」

無理矢理食わせようとするギル。
しかも無表情で有無を言わさずやってくるから怖い……。
ジタバタするその様子にギャラリーは爆笑している。

「はいはい。そこまで。」

ライルが間に入り、ギルの持っていたビスケットを奪うと食べてしまう。
スン……とギルが真顔になって押し黙った。

「そろそろファースト騎士は警護に戻ってもらえるかな?俺がいなくなった途端、侵入者が多かったみたいだし。騎士は俺とお前しかいないのに、それじゃ困るんだよね~。安心してサークの側を離れられないじゃんか。ファースト騎士がいるから大丈夫だと思ったのにさぁ~。」

「…………………………。」

「これ以上、もぐもぐタイムの妨害があると困るんだよ。わかるだろ?だからドア前で睨みを効かせてもらえる??」

ギルは何も答えなかった。
しかし指示に従い、外に出ていく。
確かにライルがいなくなってから侵入者がバンバン来たし、そこをツッコまれたら何も言い返せないよな、お遊びとはいえ一応、俺のファースト騎士って事になってるんだし。

「よし。これで邪魔者はいなくなった。」

「おい、邪魔者ってさすがに言いすぎだろ……。」

「いや、邪魔者だね。こっちが必死に姫を売り込んでるのに、嫉妬して邪魔してくる騎士なんか。」

前はあんなにギルを利用してたのに……。
なんかよくわからんが、ライルってたまに怖い……。

それにしても……と思う。

さっきからそこはかとなくいい匂いがしていて気になっている。
俺はそわそわしながらライルを横目で見つめた。

「……次、アレ食べるのか??」

「なんだよ?食べたいのか??サーク??」

そう聞くと、ニヤッとライルが笑った。
うぅ、もったいぶるなよぉ~!!
俺は我慢できなくなって叫んだ。

「食べたいに決まってんだろぉ?!こんないい匂い嗅がされて!!我慢できるかぁ~っ!!」

思わず生唾を飲み込む。
だって、ライルが帰ってきてからずっと、美味しそうなカレーの匂いがしているのだ。
餌を前にジタバタする犬のように地団駄を踏む俺をライルは椅子に座らせるとよしよしと撫でる。
悔しい!悔しいがカレーには勝てん!!
ギャラリーの方も匂いに気づいていたので、それを今か今かと待っている。

「よしよし。では気を取り直してメインデッシュと行きましょうかね?」

ライルがパチンッと指を鳴らすと、クラスメイトがテイクアウト(?)されたようなカレーを持ってくる。
レトルトのカレーじゃなくて、かなり本格的なヤツだ。
しかもどう見ても大盛り。
ギャラリーからもおおっと声が漏れる。

「え?!何これ?!凄くない?!」

「ちょっと奮発してみた。俺からの貢物って事で。」

「……え?!」

「あ、本命じゃないから安心しろよ。」

そこでこれまでの事もあり、どっと笑いが起きた。
俺も笑いながらちょっとほっとする。

しかし、だ……。

カレー……。
それは魅惑の食べ物……。

男子高校生でカレーが嫌いなヤツはあまりいないだろう。
しかもこの香り……。
複雑で繊細で、甘くもありスパイシーでもある。
どう考えても専門店のカレーだ。
匂いだけで飯が食える。

食べなくてもわかる。
絶対、旨いヤツだ。

俺だけでなく、教室に漂うその香りに魅了された全員が、俺の前のカレーに注目し、唾を飲み込んでいる。

「……た、食べていい?!食べていいの?!」

「もちろん。どうぞ?」

横にいるライルに確認を取り、俺はパンッと手を合わせた。


「……いただきます!!」


プラスチックスプーンの包装をひっペ剥がし、魅惑のカレーに突き刺す。
ルーのたくさんの野菜と果物を煮込んだとろみがご飯に絡みつく。

「……~~~っ!!旨っ!!……うっ、でも辛っ!!」

野菜の甘味の中に、ガツンとした辛さが広がる。
結構辛い。
でも物凄く美味しい!!

「辛い~!!でも旨い~!!美味すぎる~!!」

俺は辛さではふはふ言いながらも夢中でカレーを口に運ぶ。
ギャラリーもクラスメイトもカレーに釘付けだ。

スパイスの刺激が血管の隅々まで流れ、俺は次第に汗ばんできた。
額に滲んだ汗を拭い、スプーンを口に突っ込む。

「ウマ~!!スゲー旨いよ!!」

「それは良かった。」

ライルはにこにことタオルを渡してくれる。
俺はそれを首にかけ、汗を拭きながらカレーを食べる。

「……あっちぃ~!!カレー食べてたら暑くなってきた!!」

スパイスの効いた本格派なカレー。
俺は流れる汗を拭う。
マジで暑いんだけど?!
でもカレーが美味すぎて止まらない。

「……す、すみませ~ん!ライブ撮影なんですけど……入っても良いですか~?!」

そこにまた撮影班が来た。
後ろからギルに睨まれて、ちょっと泣きそうな顔でこっちにお伺いを立ててくる。
どうすんの?とライルを見たら、満面の笑みで手招きしている。
まぁ、俺はどうでもいいけど。
カレー旨いし。

すでに汗だくになり始めた俺をライブカメラが撮りはじめる。
水を飲むついでにちょっと顔を上げて周りを見た。

「……??」

何だろう??
カレーに夢中になっていて気づかなかったけど、なんか変な雰囲気だ。
ギャラリーは押し黙り、妙な熱意を持って俺を見ている。
俺は流れる汗を無意識に肩で拭う。

「……くはっ。」

「こ、これ……見てていいの?!」

「……ヤバくない?!」

なんか妙な言葉がヒソヒソ飛び交っている。
ヤバイって何が??
よくわからないままスプーンを口に入れる。
ちょっと舌がピリピリしてきた。

「うっわ、なんか汗、止まんないんだけど?!」

「だと思って着替えさせといたんだよ。帰り、困るだろ?」

「そうだったのか~。なんか色々ありがとな、ライル。」

だらだら汗を流しながらカレーを食べる俺。
周りがゴクン、と唾を飲み込む。
まぁ美味そうだもんな、このカレー。
つか、旨いんだけど。

「……もう少し寄っても良いですか?!」

「邪魔にならないよう、しゃがんだ状態からでしたらどうぞ?」

妙に興奮している撮影班。
ライルがそれに対しにこやかにそう言った。
許可を得た撮影班が嬉々として近づいて来る。
そして机を挟んだ下から煽るようにライブカメラで俺を取り始める。

………………。

汗だくでカレー食ってんの、そんな近くから舐めるように撮って何が面白いんだ??
俺はよくわからず、怪訝な顔でカメラを見つめる。

しかし暑いな?!
汗、止まんないんだけど?!

「……ライル!ちょっと脱いでいい?!」

「どうぞどうぞ♪」

ライルが衣装として用意してくれた物なので、一応確認を取る。
いいと言われたので俺は立ち上がり、ツナギのジッパーを下ろした。
開いた隙間からチラ見せのように下に着ていたTシャツが覗く。

「ぬ、脱ぐ?!」

「……ヒャッ!!」

「そんな……っ!!」

変な声がギャラリーから上がる。
いや、別に裸になる訳じゃねぇし??
俺はタオルで額の汗を拭くと、ツナギの袖から腕を出した。
キャーみたいな悲鳴が上がる。
いや、別に全部脱ぐって訳じゃないから……。
上をTシャツだけにするだけだから。
俺は少し呆れながらツナギの上側だけを脱いで袖を腰で結んだ。

「……よしっ!!」

袖も襟もなくなったことで風通しが良くスッキリする。
これで準備はできた。
俺はカレーの残りを食べようと椅子に座り直した。

のだが……。

バンッ!とドアが開く。
今度は何だ?!と顔を向けると、ダークサイド丸出しなギルが鬼みたいな無表情でこちらを見ていた。
思わず固まる。

え……何……っ?!

「ライル……!!流石にこれは認め……っ!!」

そう言ってズンズンと教室に入ってこようとしたその時、ギルが消えた……。
は??何??
と思ったらひょっこりとシルクが顔を覗かせた。

「ライル~♪後は任せて♪これで取引成立ね~♪」

そう言ってバタン、とドアが閉まる。
静まり返る教室。

い、一体何だったんだ……??
取引って??

よくわからずライルを見上げるが、してやったりという顔で笑っているので、俺は黙っている事にした。
こういう顔のライルに話しかけても、ろくな答えが帰ってくる事などない。

俺は諦めて、カレーに集中する事にした。






「……良いものが見れた……。」

「もぐもぐタイムと思いきや……まさかのセクシーシーンまで……。」

「そっち系でくるとは……そっち系で来るとは……っ!!」

「ガテン系もアリだよなぁ……。」

「あんなの見せられたら……色々見方が変わっちゃうよ……。」

「飛び入りの姫たちも良かったし……。」

「……ヤンキー姫があんなエロ可愛いとか知らなかった……。」

「恋って人を変えるよなぁ~。」

「リオ様もあのノリOKでお笑い好きとか、なんか親しみ湧いたし……。屈託なく笑ってるの凄い可愛かった……。」

「シルク姫たちのファーストバイトも見れたし。」

「他の姫に行かずに並んだかいがあったよな……。」

「見に来なかった奴、大損だよな……。」

「こんなサービス満点なショー……もう見る事もないだろうなぁ……。」

もぐもぐタイムが終了し、ギャラリーは満足そうに帰っていく。
俺はカレーの名残の汗を拭いながらそれを見送った。

「……しかし、何だったんだ??これ??」

「もぐもぐタイムだよ。」

「いや、それはわかっているけどさぁ??」

そもそももぐもぐタイムって何だよ??
俺が食ってるの見て、なんか面白かったのか?本当に??

でもよくわからないが見に来てくれたギャラリーは満足しているし、ライルも計画通りって顔しているし、もぐもぐタイムは成功に終わったようだ。

流石に冷えてきたので、ツナギの袖を解いて着直した。
そこに物凄く不機嫌全開なギルと、にっこにこのシルクがやってくる。

「あ~!!何で~?!俺も半脱ぎ、間近で見たかった~!!」

来るなりそう喚くシルク。
しかしそう言ったシルクをギルが押さえつけようとして軽い牽制合戦になる。
何なんだよ??いったい……。
よくわからずにそれを見守る。

「……なぁ、取引って??」

「ん??なんの事だ??」

全ての元凶は間違いなくライルだろう。
しかし、それをおいそれと明かすタマでもない。

まぁ今回の企みについては、俺自身はあまりよくわからなかった。
旨いカレーが食えただけだし。
むしろ酷かったのはリオのロシアンルーレットだし。

ニヤッと笑うライルは何も答えない。
ギルとシルクはじゃれてるし。

俺はため息をついて、会場の後片付けをするクラスメイトを手伝った。
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