姫、始めました。〜男子校の「姫」に選ばれたので必要に応じて拳で貞操を守り抜きます。(「欠片の軌跡if」)

ねぎ(塩ダレ)

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本編

どうかその傍らに

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シルクはその姿を見つけると、あからさまにぷいっとそっぽを向いた。
あの、来てくれるゲスト皆に神対応をするシルクが、だ。
でもクラスメイトも騎士たちも、それは見慣れていたので微笑ましく笑うだけだった。

「……この寒いのに、どこで見つけてきたんだよ、それ?!」

「あ~、確かにこれは探すのに苦労しました。花問屋さんに直接お願いして譲ってもらったんです。綺麗でしょ?」

「ふ~ん。わざわざありがと。はい。貰ってあげる。」

シルクはツンケンとそう言って手を伸ばした。
しかし相手は爽やかに笑うだけだ。

「……イヴァン?何してんの??」

「すみません。これは貢物じゃないんです。」

「……え?!」

そうあっさり言われてしまい、シルクは固まった。
列に並んで貢物を渡しに来たのだから、それは当然、自分の物だと思ったので何を言われたのかわからなかったのだ。

「貢物はこっちです。1000円きっかり。もちろん本命です。」

そう言ってイヴァンは、シルクがもらえると思っていた物と同じ紙袋に入っていた、ちょっとお高そうな包みを取り出し差し出した。
でも、シルクは受け取れない。

シルクは頭が真っ白になっていた。
だってそれが1000円ピッタリの物なのなら、そのもらえると思っていたモノ・・まで受け取ったら、金額オーバーになる。
だからどうしても受け取れなかったのだ。

「……もうすぐ卒業ですから、今回はペンにしました。大学で使ってもらえると嬉しいんですけど……。」

卒業を控えたシルクに、1000円という制限の中、何を贈るべきか真剣に考えて選んだものなのだろう。
差し出された小さな箱には、確かにイヴァンの想いが詰まっているのがわかった。

でも……。

シルクは俯いてグッと手を握った。
イヴァンの差し出す箱を頑なに受け取らない。
周りのクラスメイトや騎士たちもそれを少しだけ不思議そうに見つめる。

だって……と思う。

なら、その「ひまわり」は?!
俺にくれるんじゃないなら、誰に贈るの?!

イヴァンが自分以外の誰かにその花を贈る事を想像した。
嫌だと思った。
自分以外の人間に、イヴァンがその花を渡すのは嫌だと思った。

「………………っ。」

「シルクさん??」

なんでだよ!!
シルクは叫びそうになる。

「ひまわり」は、俺の象徴なのに……っ!!

その花をこの季節外れにわざわざ苦労して入手したというのに、イヴァンはそれをシルクへの貢物ではないという。
悔しくて悲しくて暴れたくなる。

でも同時に、今までイヴァンにしてきた事が走馬燈のように頭の中をかけ巡った。

イヴァンはずっと自分を追いかけて来てくれた。
入学式の突然の告白騒動から始まり、何度も何度も、騎士の誓いをしようとしてくれた。

でもさせなかった。
だって騎士の誓いなんて欲しくなかったのだ。

シルクはサークが好きで、必死に追いかけていた。
自分の気持ちに気づいてもらえなくても、他の人が好きでも、それでも追いかけ続けたのだ。
時には心が折れそうになった。

でも、イヴァンが自分と同じように追いかけてくれた。
気持ちが折れそうになるたびに、折れずに真っ直ぐ自分を追いかけてくれるイヴァンに支えられた。
自分も諦めずに追いかけようと思えたのだ。

でも……それはイヴァンからしてみれば、どれだけ必死に追いかけても振り向いてもらえない事に過ぎない。
その辛さは、どれだけ頑張ってもサークに気づいてすらもらえなかったシルクには痛いほどわかっていた。

ああ……そうか……。

イヴァンはここで区切りをつけたのだ。
シルクはそう思った。

追いかけても追いかけても振り向いてくれないシルク。
愛想を尽かされても仕方がない。
おそらくイヴァンは、シルクが高校を卒業するのを期に、自分もその想いから卒業する事にしたのだ。

「……そっか。」

シルクは力なく呟いて、イヴァンから箱を受けとった。
イヴァンなら、ずっと自分を追いかけ続けてくれると勘違いしていた。
誰だって追いかけても追いかけても振り向いてもらえなかったら傷つく。
自分はイヴァンを傷つけすぎてしまった。
だから、こうなってしまって当たり前なのだ。

せめて、最後は笑って見せよう。

こみ上げる涙をぐっと堪えて、シルクは笑おうと顔を上げた。
その上げた視線に、見たことのないイヴァンの顔があった。

「……え……??」

揺るがない強い眼差し。
覚悟を決めた顔は落ち着いていたが力強かった。

ひまわりの花を手に、イヴァンがシルクに跪く。

周りの騎士があっ!と小さく声を上げた。
だが、もう最後なのだ。
騎士の誓いぐらいさせてやろうと彼らは思ってしまった。

イヴァンは、1本のラッピングされたひまわりの花を持っていた。
それを剣に見立てて顔の前で構え、そしてシルクに跪くと、花の方ではなく持ち手の方をシルクに差し出した。
頭は垂れず、下から真っ直ぐにシルクを見つめる。

「……これは騎士の誓いではありません。」

「え……?」

「愛の誓いです。」

「!!」

シルクはその言葉に息を呑んだ。
周りのクラスメイトも、騎士たちも、貢物を渡しに来た生徒たちも、突然の事に言葉を失っていた。

「……おい!イヴァン!!」

だがファースト騎士がハッとして声を上げた。
それによって他の騎士たちもクラスメイトも我に返る。

よりにもよって今日はバレンタイン合戦当日。
ここで告白されてはならないのだ。
万に一つシルクがそれに応えてしまったら、姫資格を失う。
つまりゲームオーバーになる。
その場にいた全員が、何としてもそれを阻止しようと動こうとした。


「……誰も動かないで!!」


そこに鋭い声が響いた。

シルクだ。
姫であるシルクがその場の全員にそう命じた。

「……これは……俺とイヴァンの問題だ……。邪魔した奴は……無事で済むと思うな……。」

シルクの声に誰も動けなかった。
その心を汲んだとも言うし、実際問題、動いたらただでは済まないとわかっていたからだ。
そんなシルクにイヴァンは少しだけ笑ってしまった。

「はは。物騒なお姫様だなぁ。」

「何だよ?!文句あんのかよ?!」

「いえ、機会を与えて下さり、ありがとうございます。シルク姫。」

ツンツンと言うシルクに、イヴァンは礼儀を尽くす。
確かに覚悟を決めてここに来たが、入学式同様、騎士とクラスメイトに抑え込まれたら、伝えたい事も伝えられないと思っていた。
最悪、大乱闘も覚悟していたが、ここでは女王様であるシルクが絶対。
精神的支配も強いが、何しろ物理的にシルクに勝てる相手はいない。
だから全員、シルクがそう言うなら黙るしかないのだ。

イヴァンは改めてじっとシルクを見つめた。
見上げたシルクはいつものようにツンツンしているが、目元は潤んでいて赤くなっていた。

少しはシルクに思われているのだと知った。
これが見れただけでも良かったとイヴァンは思う。
そして語りだした。


「……あなたが好きです。愛しています。」

「あ、そっ。」

「僕は花言葉には疎いのですが、今回は失敗しないよう色々勉強しました。」

「ふ~ん。」

「花を一本贈るのは、「一目惚れ」という意味があるそうです。」

「……知ってる。」

「でも、ずっと黙っていた事があります。」

「……何?」

「僕があなたに一目惚れしたのは、入学式の時ではありません。」

「?!」

そう言われ、シルクはびっくりしてイヴァンを見つめた。
しかし自分を見つめるイヴァンの目には嘘はなかった。
どういう事だ?!と混乱する。
そんなシルクをイヴァンはふふっと笑った。


「……あなたは……いつも……誰もいない階段で隠れて泣くんですよね……。」


言われている意味がわからない。
シルクはただじっとイヴァンを見つめた。

「……小学生低学年の時、異種格闘技戦大会に出られた時の事を覚えていますか?」

「!!」

そう言われ、シルクはかぁっと赤くなった。
小学校低学年・異種格闘技大会・階段で泣くと言う3つが、パチンと自分の中で繋がったからだ。

「ウソ?!何で知って……?!」

「いましたから、僕。あの場所に。」

「ウソ……?!」

シルクは焦った。
別に隠すような恥ずかしい過去ではないが、小さい時の自分を知られているというのは妙に焦るのだ。
しかも……イヴァンは知っている。
誰にも見つからないように泣いていた事を知っている。

「あの時、シルクさんはあまりに強いからって、小学校低学年なのに、中学年の部に入れられていて……。なのに、あはは。あなたが強いのは本当、昔っから変わらないですよね。」

「ちょっと!やめろよ!!」

突然の昔話。
無性にこそばゆくてたまらない。
しかしイヴァンはやめなかった。
つらつらと幼い日の事が語られていく。

「僕は兄弟子の応援であそこにいたんですけどね。ほら、準々決勝の相手、覚えてます?」

「あんまり覚えてない。」

「ですよね、いきなりのストレート勝ちでしたから。」

「……よくわかんないけど、ごめん。」

「いえいえ。……ただ、負けた兄弟子の事なんて周りは少しも見てなくてムカついて、大人たちは低学年なのに強いあなたをチヤホヤしてて、シルクさんもそれが当然みたいな澄ました顔してて……。小さいのにこまっしゃくれた嫌な子だなって思って見てたんです。」

シルクはキョトンとした。
今、自分を好きだという話をされているはずなのに、「こまっしゃくれた嫌な子」と言われた気がする。

「……一目惚れの話はどこいった訳?!」

「まあまあ、慌てずに……。で、決勝は午後からで、希望者は見て帰る事になったから僕は残ってたんです。でも昼食の後、試合が始まるまで暇で暇で……。フラフラ会場の周りを歩き回ってたら、建物裏の非常階段で……隠れて泣いてる子がいたんです。」

「…………。」

「あの子でした。僕びっくりしたんです。あんなに強くて大人にチヤホヤされてツンと澄ましてた子が、自分の体を抱きしめて小さくなって震えてたんです。怖くない、大丈夫。って呟きながら、必死に歯を食いしばリながらもボロボロ、ボロボロ泣いてたんです。」

シルクは黙ってしまった。
あの時は本当に怖かったのだ。
シルクといえどまだ小学校低学年。
大人ほどではないけれど、自分よりずっと大きな相手と戦わなくてはならなず、なのに周りはシルクが勝って当然だという雰囲気だったのだ。

「僕、自分が恥ずかしかったです。同じ低学年なのに、三・四年生と戦わなきゃいけないなんて怖いに決まってるのに、あなたの事を嫌な子だなんて思ってしまって……。小学校の一・二年生と三・四年生って明らかに体格差があるじゃないですか?たまに体格のいい子もいますけど、シルクさんはそうじゃなかったですし。なのにあなたは周りから期待されているから誰にも弱い所を見せれなくて、ツンツンとしているしかなくて……。見つからないように隠れて一人、泣きながら震えてたんです……。」

教室の中はシン……と静まり返っていた。
誰もかイヴァンの語る、幼い頃のシルクに胸を痛めていた。
中には鼻をグズグズ言わせて涙ぐんでいる者もいる。

「でも……。僕はその時あなたに声がかけれませんでした。誰にも見つからないようあんな所に隠れて必死に歯を食いしばっているあなたを見てしまった罪悪感もあったし……、当時の僕は……そんなあなたを支えてあげられるほど強くなかったから……。」

シルクはツンっとそっぽを向いた。
鼻の奥が痛くて、そうしないと泣いてしまいそうな気がしたのだ。
そんなシルクにイヴァンはにっこりと微笑んだ。

「決勝では、そんな事なかったみたいにまっすぐ立ってて、カッコ良かったです。」

「……馬鹿。そんな昔の事、忘れろよ……。」

「それは無理です。一目惚れですから。」

「!!」

そこで出てくるのかよ?!とシルクは思った。

昔々の幼い頃の記憶。
一人で怖くて泣いた記憶。
でも……。
それを見守り、知らないところで応援されていた。
今更ながらそれを知り、嬉しかった。

「……僕はあの後から必死に稽古に励みました。もし次にあなたが泣いてるのを見たら、今度は支えてあげたかったから。次に会う時までに、あなたに声をかけられるだけちゃんと強くなろうって。」

知らなかった。
シルクはそう思いながらイヴァンを見つめた。
イヴァンの真っ直ぐな目がシルクだけを見つめている。
この双眸はそんなにも昔から、真っ直ぐに自分を見つめてくれていたのだ。

「あなたの涙が忘れられなかったんです。」

イヴァンはそう言った。
シルクの可愛さでも、美しさでも、色気でも、強さでもなく、イヴァンはシルクの弱さに惚れ込んだのだ。

「表向きは可愛くて強くて揺るがなくて、いつだってこまっしゃくれてツンツンしてるのに、誰にも見られないように、必死に歯を食いしばりながらも顔をグシャグシャにして泣いているあなたが忘れられなかったんです。」

「……そんな顔、覚えてるなよ……。」

「すみません。でも一目惚れしちゃったんです。」

あの泣き顔は衝撃的だった。
イヴァンの心にズガンッと大きな衝撃を与えた。
あんなにツンッとしていたのに、一人で泣いていたシルク。
不細工に顔を歪め、隠れてボロボロ泣いていた。
本当は怖くてギュッと自分を抱きしめて震えていた姿は、人前で見たよりずっと小さくて……。

まだ小学校低学年だ。
誰かに側にいて欲しいはずなのに、誰にもその姿を見せることができなくて隠れて泣いている。

側に行きたい。
抱きしめてあげたい。
でも試合で見たシルクの強さを考えると、自分がみっともなくてそれができなかった。

シルクはイヴァンの話を聞き、恥ずかしくなって手で顔を覆っていた。
可愛いだの綺麗だの好きだの色っぽいだの、そういう事は言われ慣れている。
強いとかそういう事は言われ慣れている。
だが堪えきれず、溢れてしまった弱さを好きだと言われるとは思わなかった。

「あえてそこ?!勘弁してよ!も~!!」

なんでそこ?!
俺、もっといいとこあるのに、何でそこ?!
何で人に見せられたもんじゃない、不細工な泣き顔に惚れたの?!
自分でもそこは抹消したいくらいなのに、イヴァンはそこが好きだというのだ。
全く訳がわからなくて恥ずかしくて仕方なかった。

でも、だからこそイヴァンの想いを信じられた。
シルクの外見でも、表向きの明るさでも、武術の強さでもなく、一番みっともない弱さを好きになってくれたのだから。

とはいえ、自分の恥ずかしい一面を暴露されてしまい、あまりの恥ずかしさに身悶えするシルク。
そんなシルクをイヴァンは愛おしそうに見つめる。

「ふふっ。高校でやっと再会できた時は嬉しくて……。いの一番に告白しちゃったんですけど……。まさかこんな制度に阻まれるとは思ってもみませんでした。しかもシルクさん、絶対、僕の事、騎士にしてくれないし……。」

何とも微笑ましい光景。
皆、イヴァンが告白している事を忘れ、照れるシルクとちょっと拗ねるイヴァンを和やかに見守る。

しかし穏やかだったのはそこまでだった。
イヴァンは声色を変えた。


「……先日、あなたが……泣く時は絶対に人に見られないように階段に隠れるあなたが……人目を憚らず泣くのを見ました……。」

「……………………。」

「顔をグシャグシャにして泣くあなたを見たのは……あの日以来でした……。」


教室内に沈黙が落ちた。
それがいつの事かなど、皆、わかっていた。

ズキリとシルクの胸が痛む。
あの日、知ってしまったのだ。
自分の気持ちと醜さを。

シルクはグッと奥歯を噛んだ。

サークが好きだった。
どうしても諦められないほど好きだった。
だからウィルとサークがすれ違っているだけで両想いな事に気づいていながら、二人に教えなかった。
その結果、すれ違いが原因でサークはあんな目にあってしまった。

自分が黙っていたから……。
想い合っている二人がくっつけなかったどころか、好きな人を取り返しのつかない目に合わせるところだった。

あれから、長い間考えた。

苦しくて切なくて、ウィルには全てを話した。
ウィルはそんなシルクをハグして、いいよと言ってくれた。
少しだけ心は軽くなったが、罪が消えた訳ではない。

自分にはもう……。
サークを好きでいる資格はない。
そう思った。

大切な人の幸せより、自分の気持ちを押し通そうとしたのだ。
それはあんなにムカついて許せないと思ったエドと一緒だった。
それに気付いた時、シルクは自分はサークを好きだと言う資格はないのだと気付いた。

「……イヴァン……俺は……。」

イヴァンは……。
そんな自分をどう思ったのだろう?

あの後、道場に連れて行かれたシルクはさんざん泣いた。
そして考えがまとまらないまま、イヴァンにあれこれ話した。
だからイヴァンは自分の醜さも汚さも知っているはずなのだ。

それでも、まだ、好きだと言ってくれるのだろうか?

「まだ、あの人が好きですか?」

「………………。」

「自分の気持ちを否定しないで下さい、シルクさん。……好きでいていいんです。たとえ卑怯でも汚くても、それでも、どうしても消せないほど好きなら、好きでいていい。僕はそう思います。」

ハッとして顔を上げる。
イヴァンの視線は真っ直ぐだった。

ポロリ……と涙が溢れた。

ずっと胸につっかえていた痛み。
それが緩やかに溶けていく。

本当は誰かにそう言って欲しかったのだ。
たとえ卑怯でも、醜くても、それほど本気なのだから好きでいていいのだと……。

「……イヴァン…………。」

「僕はあなたを否定しません。全部ひっくるめて、あなたが好きです。」

「…………っ。」

「僕は、今度は側にいると決めたんです。今度だけじゃない。ずっとずっとこの先も、あなたが泣く側にいるんだって……。」

「……イヴァン……。」

「僕は残念ながら、あなたを守れるほど強くないですし……あなたの強さを知っているので、正直、それ以上に強くなれる自信はないです。」

「ないのかよ……っ。」

「でも、あなたの隣にいる事はできます。あなたの隣に立てるまでには強くなります。あなたがこの先どこへ向かおうと、その隣に立てるよう強くなり続けます。あなたが泣く事があっても、もう一人で泣かせません。」

イヴァンの言葉にシルクは涙を堪えきれなかった。
ポロポロ零れ落ちるそれを隠すように両手で顔を覆う。
そんなシルクをイヴァンは真っ直ぐに見つめ続けた。


「……必ず、俺はあなたの隣に立ち続けます。」

「こ…ここで俺って言うなよ~。馬鹿ぁ~……。」

「あなたが好きです。どうかその傍らを、俺にください。」


A組の教室は静まり返っていた。
クラスメイトたちも、騎士たちも、貢物を持ってきたファンたちも、誰も言葉を発する事ができなかった。

ただ一人、巡回でB組の写真を取り終えてA組にやって来た写真部の生徒だけが、導かれるように神聖なそのひとコマをカメラに収めたのだった。
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