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本編
臆病な帰還者
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話し合いの場になった生徒相談室の引き戸を一礼して閉める。
ふぅ、と息を吐いた俺の肩に、若手だがヤリ手の弁護士さんが労うように手を掛けた。
「いいスタートです。このまま行きましょう。」
「はい……。何かすみません……色々……。」
「いえ、仕事ですから。」
そこまで言われてハッとした。
俺は焦って弁護士さんの顔を見る。
「そう言えば費用って?!」
そう。
普通、弁護士なんて簡単につけれないのはそれなりの費用がかかるからだ。
しかもガスパーが手配したのであれば、それはラティーマー家の弁護士もしくはそこに所属する人。
つまり、大手のやり手弁護士という事になる。
焦った俺の顔を顰めたがキョトンと見つめた後、その人はプッと吹き出した。
「心配には及びません。大丈夫ですよ。」
「いや……いやいやいやいや?!」
あわあわする俺に、歩きながら弁護士さんは鞄から1枚の紙を取り出すと見せてくれた。
それを手にとって目を通す。
「?!?!」
「きちんと契約済みです。」
「え?!ウソ……?!でも?!」
確かにそれは契約書で、親の署名捺印がされている。
でも……弁護士費用って、こんなに安いもんなの??
一般庶民のガキには相場がわからないけど、それでもなぁ……何か思ってたのと違う……。
「ご心配なく。これはうちの事務所で作成された正式な契約書ですから。」
「え……でも……。」
「思われた金額ではない理由は、この件に学生インターン研修を含めているからです。依頼主様の了承を得て業務に職業体験生を同行させて頂いておりますので、この料金設定とさせて頂きました。」
「インターンって……。」
「また、私自身が経験の浅い弁護士である事もあるかと。」
そう言ってにっこり微笑まれたのだが、弁護士の経験が浅いってどういう事かよくわからないけれど、どう考えても仕事のできるできないでいったらできる人だと思う。
俺が相当変な顔をしていたんだろう、弁護士さんはクスクスと笑った。
「こう見えて新米なんですよ。単独案件としてはね。兎に角、費用などの事は気になさらなくて大丈夫です。他にも色々ご負担にならないよう手配しておりますし、冗談でしょうけどご家族は君のお年玉貯金からも出すと言っていましたよ。それでもご家族へのご負担が気になるなら、今現在の時点では親御さんに甘えられて、将来出世払いされてはいかがですか?」
そうなのか……俺のお年玉貯金も使用されるのか……。
痛手ではあるが背に腹は変えられないし、何より家族に負担をかけずに済むならそれに越した事はない。
それにしても出世払いって言ってもなぁ~。
今の御時世そう簡単に出世とかしないのに、どの時点で支払う事を言うんだろう??
納得したようなしないような顔の俺を、弁護士さんはおかしそうに見ていた。
でも本当にこの人がいてくれて助かった。
教頭と生徒指導主任、3年の生徒指導教員2名の計四人を前に、畳み掛けられると言葉に詰まる俺をフォローし、誘導されそうになるのをさらりと阻止して受け流すだけでなく、にこやかな笑みを絶やさずにチクリと攻撃するのを忘れない弁護士さん。
本当、事件のショックから抜け出しきれてない俺の頭では対応しきれなかった。
今までエドと揉めた人たちがなんであっさり丸め込まれちゃったんだろうと思っていたが、精神ダメージを受けている状態で大人に囲まれ色々言われたら、頭真っ白になって向こうの言う通りに流されてしまうだろう。
それだけでもとても助けられているのに、こうして費用やらなんやらの事まで考えてくれているなんて本当にありがたいとしか言いようがない。
「何から何まですみません。」
「いえ、私は弁護士としての仕事をしているだけで、細かな部分はインターン生の計らいです。」
「その……インターンって……。」
弁護士さんは微笑むだけで答えなかった。
それが誰を指しているかなんて、聞かなくてもわかる。
多分、インターンなんて言葉のアヤだ。
実際には高校生を弁護士業務のインターンにする訳がない。
ただ、そういう言い方をしないと俺が余計な心配をするからそう言っているのだ。
何というか、本当にガスパーには頭が上がらない。
「……サーク!!」
歩きながら話していると俺を呼ぶ声がした。
振り向くと、ライルが走って来る。
1日会っていないだけだというのに、なんだか随分会わなかった気分だ。
何故か止まる素振りもなく勢いそのまま走ってくるので、俺はどうしたら良いのかわからず固まった。
「うりゃ~!!」
「は?!何すんだよ?!」
ハグでもされるのかと思ったが、そこはライル。
唐突なラリアートをかましてきて俺は動揺した。
「お~!!良いもん食ってテカテカだな?!羨ましいぞ!コラ!!」
「おい待て、俺がいつ良いもん食ったって?!」
「知ってるぞ?!ギルにたくさんセレブ飯食わされたんだろ?!」
「たくさんは食わされてねぇよ!!」
そのままヘッドロックされ、グリグリとグーでこめかみを攻められる。
あまりにいつも通りで、俺も反射的にいつも通りに反応していた。
何でもない。
何も変わらない。
それがライルなりの優しさなんだ。
そう思った。
ニカッと笑う顔に笑い返したが、なんかうまく笑えたのかわからない。
でも俺の姫騎士はそれすら気にせず笑い飛ばした。
「……相変わらず騒がしいな、オメェらは……。」
そんなライルの後ろからガスパーとリオが歩いて来た。
俺達を見たガスパーは呆れたようにため息をつき、リオは弁護士さんに挨拶している。
「サーク……。見たところ変わりなくてよかった。」
「色々ありがとな、リオ。」
そして俺を見つめ、リオは微笑んで頷いた。
「見たところ変わりない」という言葉が本当かはわからない。
でもそう言って笑ってくれた事が嬉しかった。
ああ、学校に帰ってきた。
気心のしれた相手を前にそう実感する。
「……他の皆は?」
ライルや二人が現れた事で、俺は控えめにそう聞いた。
まだ授業中なので普通なら会う事はないのだが、この三人がここにいると言う事は他の皆も授業を抜け出してどこかで待機している可能性が高い。
会いたい……。
でも、今は会いたくない……。
そんな気持ちが胸の中にある。
複雑な思いが顔に出たのだろう。
リオは少し困ったように微笑んだ。
「ごめんね、サーク。今日のところはサークもまだ疲れてるだろうから、私たち三人が代表で顔を見に来たんだよ。」
俺を気遣った言葉。
それにホッとしたような寂しいような気持ちになる。
会いたい。
でも今は会いたくない。
でも……会いたい……。
誰に?
そんな自問自答の答えを知りながら、俺は顔を上げ前を向き、考えないようにした。
授業が続く静かな校舎の廊下を歩く。
俺自身は今日のところはこのまま帰れと言われているので帰るしかない。
学校側が話し合いの場所にクラスの教室から離れた生徒相談室を選んだのも、他の生徒と接触させないためだ。
何か問題があって生徒指導をする際は基本、他の生徒と接触させないようにするのは知っていたが、自分がそうなってみるとなんだか除け者にされたみたいな虚しさを覚える。
「とりあえず、ギルのリムジンで話そう。」
「やった!俺!初リムジン!!」
「馬鹿か、お前……。別にリムジンなんて良いもんでもないぞ?!」
「出た出た、金持ちの「それぐらい当たり前じゃん」発言。」
「はぁ?!俺がいつそんな事言ったってんだよ?!」
「まあまあ、落ち着いて。」
「そうだよ、ガスパー。静かにしないと私たちがサークに会っている事を咎められかねない。」
「……何だよ、クソッ。俺が悪ぃみたいに……。」
そんな話をする皆に俺はちょっと笑った。
何というか、本当、こんな時なのにいつもと変わらない。
そんな「当たり前」のドタバタがなんだか嬉しかった。
「……お~いっ!!」
校舎を出てグラウンドを歩いていると、どこからかそんな声がした。
振り向くと、うちのクラスの窓にクラスメイトがわらわらと集まって手を降っていた。
皆、いつもと変わらない馬鹿さ加減で笑っている。
「……アイツら。」
思わず呟く。
手を振り返すと教室はお祭り騒ぎになっていた。
ちょうどザクス先生の授業だったらしく、皆がバシバシと丸めたノートか何かで叩かれて席に戻るよう促されている。
まぁザクス先生ならバカやってもそこまで怒られはしないだろう。
げんこつは食らうかもしれないけどな。
「アホだなぁ。おとなしくしてろよって言ったのに。」
ライルもそう言いながら手を降ってる。
なんか、ホッとした。
クラスの皆がいつも通り過ぎて泣けてくる。
「いい仲間だね、サーク。」
「うん。ちょっと馬鹿だけどな。」
そんな俺にリオがそっと並んで言った。
正直、何気に学校に来るのが怖かった部分もある。
あんな事があったのだから、それなりに好奇の目に晒されるんじゃないかと。
でもリグの話でも、この件の詳細は今の所漏れていない。
それは学校側が漏らさないようにしている事もあるだろうが、クラスメイトや皆が俺を気遣ってくれている部分でもある。
ひとりじゃない。
一人で抱え込まなくていい。
話し合いの前、ガスパーのかけてくれた言葉が現実的に俺の中に染み込んでいく。
心無い言葉や目に晒される事も今後はあるだろう。
でも、俺はきっと大丈夫だろう。
自分自身でまだ自分自身のダメージを把握しきれていなくて不安定な部分もある。
それでも俺は前に進める。
俺を守り、手を差し伸べ、共に歩んでくれる仲間がいるから。
「……ありがとな。」
もう一度振り返り、誰もいなくなった教室の窓を見上げ俺は呟いた。
ライルがガシっと俺の肩を抱く。
特に何かツッコむ訳でもなく、ニヤッと笑った。
リオが柔らかく微笑み、ガスパーがフンッと鼻を鳴らした。
帰ってきたんだな、学校に……。
1日休んだだけなのに、物凄く遠くに感じたその場所は、以前と変わらず当たり前にそこにあって、俺を当たり前に受け入れてくれていた。
ふぅ、と息を吐いた俺の肩に、若手だがヤリ手の弁護士さんが労うように手を掛けた。
「いいスタートです。このまま行きましょう。」
「はい……。何かすみません……色々……。」
「いえ、仕事ですから。」
そこまで言われてハッとした。
俺は焦って弁護士さんの顔を見る。
「そう言えば費用って?!」
そう。
普通、弁護士なんて簡単につけれないのはそれなりの費用がかかるからだ。
しかもガスパーが手配したのであれば、それはラティーマー家の弁護士もしくはそこに所属する人。
つまり、大手のやり手弁護士という事になる。
焦った俺の顔を顰めたがキョトンと見つめた後、その人はプッと吹き出した。
「心配には及びません。大丈夫ですよ。」
「いや……いやいやいやいや?!」
あわあわする俺に、歩きながら弁護士さんは鞄から1枚の紙を取り出すと見せてくれた。
それを手にとって目を通す。
「?!?!」
「きちんと契約済みです。」
「え?!ウソ……?!でも?!」
確かにそれは契約書で、親の署名捺印がされている。
でも……弁護士費用って、こんなに安いもんなの??
一般庶民のガキには相場がわからないけど、それでもなぁ……何か思ってたのと違う……。
「ご心配なく。これはうちの事務所で作成された正式な契約書ですから。」
「え……でも……。」
「思われた金額ではない理由は、この件に学生インターン研修を含めているからです。依頼主様の了承を得て業務に職業体験生を同行させて頂いておりますので、この料金設定とさせて頂きました。」
「インターンって……。」
「また、私自身が経験の浅い弁護士である事もあるかと。」
そう言ってにっこり微笑まれたのだが、弁護士の経験が浅いってどういう事かよくわからないけれど、どう考えても仕事のできるできないでいったらできる人だと思う。
俺が相当変な顔をしていたんだろう、弁護士さんはクスクスと笑った。
「こう見えて新米なんですよ。単独案件としてはね。兎に角、費用などの事は気になさらなくて大丈夫です。他にも色々ご負担にならないよう手配しておりますし、冗談でしょうけどご家族は君のお年玉貯金からも出すと言っていましたよ。それでもご家族へのご負担が気になるなら、今現在の時点では親御さんに甘えられて、将来出世払いされてはいかがですか?」
そうなのか……俺のお年玉貯金も使用されるのか……。
痛手ではあるが背に腹は変えられないし、何より家族に負担をかけずに済むならそれに越した事はない。
それにしても出世払いって言ってもなぁ~。
今の御時世そう簡単に出世とかしないのに、どの時点で支払う事を言うんだろう??
納得したようなしないような顔の俺を、弁護士さんはおかしそうに見ていた。
でも本当にこの人がいてくれて助かった。
教頭と生徒指導主任、3年の生徒指導教員2名の計四人を前に、畳み掛けられると言葉に詰まる俺をフォローし、誘導されそうになるのをさらりと阻止して受け流すだけでなく、にこやかな笑みを絶やさずにチクリと攻撃するのを忘れない弁護士さん。
本当、事件のショックから抜け出しきれてない俺の頭では対応しきれなかった。
今までエドと揉めた人たちがなんであっさり丸め込まれちゃったんだろうと思っていたが、精神ダメージを受けている状態で大人に囲まれ色々言われたら、頭真っ白になって向こうの言う通りに流されてしまうだろう。
それだけでもとても助けられているのに、こうして費用やらなんやらの事まで考えてくれているなんて本当にありがたいとしか言いようがない。
「何から何まですみません。」
「いえ、私は弁護士としての仕事をしているだけで、細かな部分はインターン生の計らいです。」
「その……インターンって……。」
弁護士さんは微笑むだけで答えなかった。
それが誰を指しているかなんて、聞かなくてもわかる。
多分、インターンなんて言葉のアヤだ。
実際には高校生を弁護士業務のインターンにする訳がない。
ただ、そういう言い方をしないと俺が余計な心配をするからそう言っているのだ。
何というか、本当にガスパーには頭が上がらない。
「……サーク!!」
歩きながら話していると俺を呼ぶ声がした。
振り向くと、ライルが走って来る。
1日会っていないだけだというのに、なんだか随分会わなかった気分だ。
何故か止まる素振りもなく勢いそのまま走ってくるので、俺はどうしたら良いのかわからず固まった。
「うりゃ~!!」
「は?!何すんだよ?!」
ハグでもされるのかと思ったが、そこはライル。
唐突なラリアートをかましてきて俺は動揺した。
「お~!!良いもん食ってテカテカだな?!羨ましいぞ!コラ!!」
「おい待て、俺がいつ良いもん食ったって?!」
「知ってるぞ?!ギルにたくさんセレブ飯食わされたんだろ?!」
「たくさんは食わされてねぇよ!!」
そのままヘッドロックされ、グリグリとグーでこめかみを攻められる。
あまりにいつも通りで、俺も反射的にいつも通りに反応していた。
何でもない。
何も変わらない。
それがライルなりの優しさなんだ。
そう思った。
ニカッと笑う顔に笑い返したが、なんかうまく笑えたのかわからない。
でも俺の姫騎士はそれすら気にせず笑い飛ばした。
「……相変わらず騒がしいな、オメェらは……。」
そんなライルの後ろからガスパーとリオが歩いて来た。
俺達を見たガスパーは呆れたようにため息をつき、リオは弁護士さんに挨拶している。
「サーク……。見たところ変わりなくてよかった。」
「色々ありがとな、リオ。」
そして俺を見つめ、リオは微笑んで頷いた。
「見たところ変わりない」という言葉が本当かはわからない。
でもそう言って笑ってくれた事が嬉しかった。
ああ、学校に帰ってきた。
気心のしれた相手を前にそう実感する。
「……他の皆は?」
ライルや二人が現れた事で、俺は控えめにそう聞いた。
まだ授業中なので普通なら会う事はないのだが、この三人がここにいると言う事は他の皆も授業を抜け出してどこかで待機している可能性が高い。
会いたい……。
でも、今は会いたくない……。
そんな気持ちが胸の中にある。
複雑な思いが顔に出たのだろう。
リオは少し困ったように微笑んだ。
「ごめんね、サーク。今日のところはサークもまだ疲れてるだろうから、私たち三人が代表で顔を見に来たんだよ。」
俺を気遣った言葉。
それにホッとしたような寂しいような気持ちになる。
会いたい。
でも今は会いたくない。
でも……会いたい……。
誰に?
そんな自問自答の答えを知りながら、俺は顔を上げ前を向き、考えないようにした。
授業が続く静かな校舎の廊下を歩く。
俺自身は今日のところはこのまま帰れと言われているので帰るしかない。
学校側が話し合いの場所にクラスの教室から離れた生徒相談室を選んだのも、他の生徒と接触させないためだ。
何か問題があって生徒指導をする際は基本、他の生徒と接触させないようにするのは知っていたが、自分がそうなってみるとなんだか除け者にされたみたいな虚しさを覚える。
「とりあえず、ギルのリムジンで話そう。」
「やった!俺!初リムジン!!」
「馬鹿か、お前……。別にリムジンなんて良いもんでもないぞ?!」
「出た出た、金持ちの「それぐらい当たり前じゃん」発言。」
「はぁ?!俺がいつそんな事言ったってんだよ?!」
「まあまあ、落ち着いて。」
「そうだよ、ガスパー。静かにしないと私たちがサークに会っている事を咎められかねない。」
「……何だよ、クソッ。俺が悪ぃみたいに……。」
そんな話をする皆に俺はちょっと笑った。
何というか、本当、こんな時なのにいつもと変わらない。
そんな「当たり前」のドタバタがなんだか嬉しかった。
「……お~いっ!!」
校舎を出てグラウンドを歩いていると、どこからかそんな声がした。
振り向くと、うちのクラスの窓にクラスメイトがわらわらと集まって手を降っていた。
皆、いつもと変わらない馬鹿さ加減で笑っている。
「……アイツら。」
思わず呟く。
手を振り返すと教室はお祭り騒ぎになっていた。
ちょうどザクス先生の授業だったらしく、皆がバシバシと丸めたノートか何かで叩かれて席に戻るよう促されている。
まぁザクス先生ならバカやってもそこまで怒られはしないだろう。
げんこつは食らうかもしれないけどな。
「アホだなぁ。おとなしくしてろよって言ったのに。」
ライルもそう言いながら手を降ってる。
なんか、ホッとした。
クラスの皆がいつも通り過ぎて泣けてくる。
「いい仲間だね、サーク。」
「うん。ちょっと馬鹿だけどな。」
そんな俺にリオがそっと並んで言った。
正直、何気に学校に来るのが怖かった部分もある。
あんな事があったのだから、それなりに好奇の目に晒されるんじゃないかと。
でもリグの話でも、この件の詳細は今の所漏れていない。
それは学校側が漏らさないようにしている事もあるだろうが、クラスメイトや皆が俺を気遣ってくれている部分でもある。
ひとりじゃない。
一人で抱え込まなくていい。
話し合いの前、ガスパーのかけてくれた言葉が現実的に俺の中に染み込んでいく。
心無い言葉や目に晒される事も今後はあるだろう。
でも、俺はきっと大丈夫だろう。
自分自身でまだ自分自身のダメージを把握しきれていなくて不安定な部分もある。
それでも俺は前に進める。
俺を守り、手を差し伸べ、共に歩んでくれる仲間がいるから。
「……ありがとな。」
もう一度振り返り、誰もいなくなった教室の窓を見上げ俺は呟いた。
ライルがガシっと俺の肩を抱く。
特に何かツッコむ訳でもなく、ニヤッと笑った。
リオが柔らかく微笑み、ガスパーがフンッと鼻を鳴らした。
帰ってきたんだな、学校に……。
1日休んだだけなのに、物凄く遠くに感じたその場所は、以前と変わらず当たり前にそこにあって、俺を当たり前に受け入れてくれていた。
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