2 / 74
本編
最後の最後に何で俺?!
しおりを挟む
「………………は??」
サークは持っていたシャーペンを落とした。
意味がわからなかった。
「だから、今年の『姫』に選ばれたんだって。」
「辞退します。終了。」
「ダメダメ!一度やったヤツは辞退可能だけど、まだやったことない奴は強制だから。」
「はぁ?!ていうか!お前ら?!俺がC組の『姫』で良い訳?!」
「だって他にいないじゃん?」
「ライルは?!」
「断固拒否。」
「ライルと違って、たかだか3ヶ月なんだから我慢しろよ~。」
そう、3年になってクラスが決まった時、うちのクラスには「姫」というタイプがいなかった。
そんでもってとりあえず見た目もそれなりで小さめなライルが「姫」にされた。
そもそも、「姫」って何なのかと言う話だ。
俺達は男子校で、当たり前だが女子はいない。
その為、非公式ながらクラスごとに「姫」が決められる。
「姫」の役割は、まぁ姫だ。
男子なんだけどお姫様扱いする。
いたれりつくせり、皆に可愛がられるマスコットみたいなもんだ。
体育祭や文化祭等のイベント時は女装したりもする。
ただ基本、「姫」が嫌がる事は絶対に禁止であり、妙な事を「姫」にしようとするとクラス全員にボコられる。
皆に大事にされ、ちやほやされる。
だから好んで「姫」をやりたがる奴だっているくらいだ。
「ショーンは一年の時、候補に上がってただろ??お前がやれよ!!」
「え??そりゃ、一年の時は身長小さかったから候補になったけど……。」
「めちゃくちゃ背が伸びたもんな、お前……。後、色白なのに髭が濃すぎる……。」
「とにかく!!まだやった事のねぇヤツには辞退権はねぇ!!強制だから!!」
「嫌に決まってんだろ?!」
「俺らだって苦肉の策なんだよ!!」
「そうそう、サークは『姫』って言うより、もふもふの小動物って感じだからなぁ~。可愛いって言えば可愛いけど、『姫』ってんじゃないんだよなぁ~。」
「殴るぞ、お前ら……。」
「そりゃさ~、俺らももうすぐ卒業だし、男の『姫』とかもういいっていえばいいんだけどさぁ~。」
「だったら!!うちのクラスはなしでいいだろ?!」
「駄目に決まってんだろ?!2月にバレンタイン合戦があんだからよぉ!!」
バレンタイン合戦というのは、そのクラスの「姫」がどれだけ貢物をもらうかを競う、学年最後の非公式イベントだ。
これは一人3人までの「姫」に貢物を渡していい事になっていて、その為、自分のクラスの「姫」以外に二人渡せる為、一番貢がれた「姫」がいるクラスは鼻が高い……と言うか、貢物はクラスで山分けなので、たくさん「姫」が貰えれば貢がれるほど分け前が増えるので、皆、必死なのだ。
ただ一応、高い貢物は学校に怒られるので、金額は一つにつき1000円までと伝統で決まっている。
「お前らさぁ~?俺が『姫』になって、貢物が集まると思ってんのか??」
言いたい事はわかるがと、サークはため息をついてそう言った。
無理やり「姫」を作ったって、貢物が集まる訳がないのだ。
しかし、クラスメイトは俺の言葉に顔を見合わせる。
何言ってんだこいつって顔で俺を見てくるが、一切、間違った事は言ってないつもりなんだが??
「……サークって……。」
「あんま、自分の事、わかってないよな……うん。」
そして顔を見合わせ、ため息をついた。
何なんだよ??意味がわからない。
そこにうんうんと頷きながら、ライルが割って入ってきた。
「本当、サークって自分の事わかってないよなぁ~。」
「ライル!!いるんならお前やれよ!!」
「俺はもう1学期・2学期、頑張っただろ??」
「後、3ヶ月…学校に来る日にちを考えたら2ヶ月程度じゃんか!!もう少し頑張れよ!!」
そう言うが、ライルは皆と顔を見合わせお手上げのポーズをする。
「あのな、サーク。実は1学期の時点でお前を『姫』にしようってほぼ決まってたんだよ。」
「はい?!」
「だって、うちのクラス、シルクみたいなお色気ギャル系もいないし、ウィルやリオみたいな正統派美人もいないし、不良ツンデレ枠のガスパーみたいのもいないし~。」
「……それの対抗馬が何で俺になるんだよ、おい。」
全くわからなくてツッコむ。
しかし皆はかなり真剣な顔で詰め寄ってきた。
「むしろお前以外に対抗馬になれる奴がいると思うか?!」
「うちの学年、希に見る『姫豊作学年』だったんだぞ?!あのレベルの『姫』は普通、学年に一人か二人いれば万々歳なところを!!四人も揃えてたんだぞ?!」
「それはわかる!!だが俺が言いたいのは!何でそれの対抗馬が俺なんだって事だよ!!」
そう言うとまた、皆が顔を見合わせる。
何なんだよ、本当、意味わかんねぇんだけど?!
はぁ~とため息をつき、ライルが真剣な顔で俺の机の前に座り、ずいっと顔を寄せてきた。
「あのな、サーク?これだけレジェンド級の「姫」が揃ってんだよ、うちの学年。」
「わかってるよ?!」
「それに、多少可愛い系の奴とか、多少綺麗系の奴とかで対抗できると思うか?!」
「できないに決まってんだろ?だから諦めろよ、運がなかったんだよ、うちのクラスは。」
「そうかもしれない。だが!!その鉄壁のレジェンド達を打ち破る秘策がうちのクラスにはある!!」
「はぁ?!どこに?!」
「お前だ!サーク!!」
「だから!なんで俺?!」
「可愛い系も綺麗系もツンデレ系も駄目だが!うちにはお前がいる!!彼らすら魅了する『超平凡なのになぜかド級アイドルヒロイン系・難攻不落の堅物主人公系!皆に取り合いにされる「平凡激烈愛され系」!!』それがお前だ!!」
熱くライルが言い切ると、クラスメイトたちは拍手喝采。
よく言ったと大盛り上がりだ。
しかし言われた俺は意味がわからず呆けてしまう。
………………。
「平凡激烈愛され系」って、何??
盛り上がるクラスメイトをよそに、俺は思考回路が完全に止まり、無機物になっていた。
とはいえ、よくわからないまま、俺は高校最後の3ヶ月間を「3年C組の『姫』」として過ごす事になったのだった……。
サークは持っていたシャーペンを落とした。
意味がわからなかった。
「だから、今年の『姫』に選ばれたんだって。」
「辞退します。終了。」
「ダメダメ!一度やったヤツは辞退可能だけど、まだやったことない奴は強制だから。」
「はぁ?!ていうか!お前ら?!俺がC組の『姫』で良い訳?!」
「だって他にいないじゃん?」
「ライルは?!」
「断固拒否。」
「ライルと違って、たかだか3ヶ月なんだから我慢しろよ~。」
そう、3年になってクラスが決まった時、うちのクラスには「姫」というタイプがいなかった。
そんでもってとりあえず見た目もそれなりで小さめなライルが「姫」にされた。
そもそも、「姫」って何なのかと言う話だ。
俺達は男子校で、当たり前だが女子はいない。
その為、非公式ながらクラスごとに「姫」が決められる。
「姫」の役割は、まぁ姫だ。
男子なんだけどお姫様扱いする。
いたれりつくせり、皆に可愛がられるマスコットみたいなもんだ。
体育祭や文化祭等のイベント時は女装したりもする。
ただ基本、「姫」が嫌がる事は絶対に禁止であり、妙な事を「姫」にしようとするとクラス全員にボコられる。
皆に大事にされ、ちやほやされる。
だから好んで「姫」をやりたがる奴だっているくらいだ。
「ショーンは一年の時、候補に上がってただろ??お前がやれよ!!」
「え??そりゃ、一年の時は身長小さかったから候補になったけど……。」
「めちゃくちゃ背が伸びたもんな、お前……。後、色白なのに髭が濃すぎる……。」
「とにかく!!まだやった事のねぇヤツには辞退権はねぇ!!強制だから!!」
「嫌に決まってんだろ?!」
「俺らだって苦肉の策なんだよ!!」
「そうそう、サークは『姫』って言うより、もふもふの小動物って感じだからなぁ~。可愛いって言えば可愛いけど、『姫』ってんじゃないんだよなぁ~。」
「殴るぞ、お前ら……。」
「そりゃさ~、俺らももうすぐ卒業だし、男の『姫』とかもういいっていえばいいんだけどさぁ~。」
「だったら!!うちのクラスはなしでいいだろ?!」
「駄目に決まってんだろ?!2月にバレンタイン合戦があんだからよぉ!!」
バレンタイン合戦というのは、そのクラスの「姫」がどれだけ貢物をもらうかを競う、学年最後の非公式イベントだ。
これは一人3人までの「姫」に貢物を渡していい事になっていて、その為、自分のクラスの「姫」以外に二人渡せる為、一番貢がれた「姫」がいるクラスは鼻が高い……と言うか、貢物はクラスで山分けなので、たくさん「姫」が貰えれば貢がれるほど分け前が増えるので、皆、必死なのだ。
ただ一応、高い貢物は学校に怒られるので、金額は一つにつき1000円までと伝統で決まっている。
「お前らさぁ~?俺が『姫』になって、貢物が集まると思ってんのか??」
言いたい事はわかるがと、サークはため息をついてそう言った。
無理やり「姫」を作ったって、貢物が集まる訳がないのだ。
しかし、クラスメイトは俺の言葉に顔を見合わせる。
何言ってんだこいつって顔で俺を見てくるが、一切、間違った事は言ってないつもりなんだが??
「……サークって……。」
「あんま、自分の事、わかってないよな……うん。」
そして顔を見合わせ、ため息をついた。
何なんだよ??意味がわからない。
そこにうんうんと頷きながら、ライルが割って入ってきた。
「本当、サークって自分の事わかってないよなぁ~。」
「ライル!!いるんならお前やれよ!!」
「俺はもう1学期・2学期、頑張っただろ??」
「後、3ヶ月…学校に来る日にちを考えたら2ヶ月程度じゃんか!!もう少し頑張れよ!!」
そう言うが、ライルは皆と顔を見合わせお手上げのポーズをする。
「あのな、サーク。実は1学期の時点でお前を『姫』にしようってほぼ決まってたんだよ。」
「はい?!」
「だって、うちのクラス、シルクみたいなお色気ギャル系もいないし、ウィルやリオみたいな正統派美人もいないし、不良ツンデレ枠のガスパーみたいのもいないし~。」
「……それの対抗馬が何で俺になるんだよ、おい。」
全くわからなくてツッコむ。
しかし皆はかなり真剣な顔で詰め寄ってきた。
「むしろお前以外に対抗馬になれる奴がいると思うか?!」
「うちの学年、希に見る『姫豊作学年』だったんだぞ?!あのレベルの『姫』は普通、学年に一人か二人いれば万々歳なところを!!四人も揃えてたんだぞ?!」
「それはわかる!!だが俺が言いたいのは!何でそれの対抗馬が俺なんだって事だよ!!」
そう言うとまた、皆が顔を見合わせる。
何なんだよ、本当、意味わかんねぇんだけど?!
はぁ~とため息をつき、ライルが真剣な顔で俺の机の前に座り、ずいっと顔を寄せてきた。
「あのな、サーク?これだけレジェンド級の「姫」が揃ってんだよ、うちの学年。」
「わかってるよ?!」
「それに、多少可愛い系の奴とか、多少綺麗系の奴とかで対抗できると思うか?!」
「できないに決まってんだろ?だから諦めろよ、運がなかったんだよ、うちのクラスは。」
「そうかもしれない。だが!!その鉄壁のレジェンド達を打ち破る秘策がうちのクラスにはある!!」
「はぁ?!どこに?!」
「お前だ!サーク!!」
「だから!なんで俺?!」
「可愛い系も綺麗系もツンデレ系も駄目だが!うちにはお前がいる!!彼らすら魅了する『超平凡なのになぜかド級アイドルヒロイン系・難攻不落の堅物主人公系!皆に取り合いにされる「平凡激烈愛され系」!!』それがお前だ!!」
熱くライルが言い切ると、クラスメイトたちは拍手喝采。
よく言ったと大盛り上がりだ。
しかし言われた俺は意味がわからず呆けてしまう。
………………。
「平凡激烈愛され系」って、何??
盛り上がるクラスメイトをよそに、俺は思考回路が完全に止まり、無機物になっていた。
とはいえ、よくわからないまま、俺は高校最後の3ヶ月間を「3年C組の『姫』」として過ごす事になったのだった……。
30
お気に入りに追加
150
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる