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第二章「別宮編」
ピロートーク
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「あの~お客さん、怒ってます?」
俺は片付けをしながら聞いた。
けれど悲しいかな、沈黙がそれに答える。
彼はあの後ぐったりしてしまい、俺は布を敷いて彼を寝かせ、穴やらナニやらの始末をした。
まぁ、実験の時とあまり変わらない。
ただゴムは上手に着けてあったようで、外に飛び出したりはしていないので手間が少なくて助かった。
「……………………。」
彼はずっと無言。
泣いたせいで目が腫れそうなので寝かせてすぐタオルを水で濡らして目の上に当ててやったら、それを押し当てるようにして何も言わなくなった。
下のほうも拭いて、ズボンを履かせる。
これで粗方、後始末は終わった。
終わった、のに……。
彼はず~と無言。
目にタオルを当てたまま、無言。
意識が飛んでる訳じゃない。
そんなに怒らなくても良いのに。
「頼まれた通り、大きさはかっただけなのに……。」
「……言いたいことはそれだけか?」
やっと答えた声は、いつもより低くて淡々としている。
実験なんかをしていても、皆、最後に気持ちよくイカせてあげると喜ぶのに、何で怒るんだろう?
そんな冷たい態度を取られ、俺はちょっと傷心だった。
「めちゃくちゃ気持ちよさそうにイッたくせに……。」
そう、俺はちゃんと彼をイカせてあげた。
多分、彼がそれまで味わった事のない快楽で。
だというのに、俺は言った瞬間、思い切り蹴っ飛ばされた。
「痛っ?!何すんだ?!」
「あのな!はかるって言われたのに疑似性器突っ込まれて!やめろって言っても大きくするし!挙げ句、手を押さえられて!卑猥な事をたくさん言われて!後ろだけでイかされたんだぞ!!」
「駄目なのかよ??」
俺は不思議そうに聞いた。
だって彼はネコになりたがっていた。
その最初のチュートリアルをこなしたのに、どうして怒っているのか俺にはわからなかった。
「…………初めてだったんだぞ……。」
ぼそっと呟かれた言葉。
その声はか細く少し震えていた。
彼はまた黙ってしまう。
ヤバい、泣かした!?
何となくそんな気がして慌てて顔を覗き込む。
悪い事はしてないつもりだが、彼の涙は妙に俺を焦らせる。
「ごめん、泣くなよ?!」
「泣いてない!!」
泣いてない??
なら何なんだよ??
俺が不思議がってタオルを捲ると、彼はただ真っ赤になっていた。
眉目秀麗な顔が、今、起きた事を受けとめきれずに真っ赤になっている。
俺はぽかんとその顔を見つめた。
彼みたいな男がこんな顔してるとは思わなかった。
なんでだか目が反らせない。
「馬鹿野郎!恥ずかしくて死にそうだ!!」
そして俺の手からタオルを取り返し、目を覆ってしまう。
全身がぷるぷると羞恥に震えている。
あ、ヤバい。
何だろう?この感覚は?
何故か言葉が無くなって俺は固まった。
よくわからない感覚。
それは嬉しいような恥ずかしいようなくすぐったさを持っていた。
その感覚を胸いっぱいに吸い込んだ後、俺は大きく溜め息をついて項垂れる。
そんな俺を、タオルの隙間からチラリと彼が見やった。
「……何でお前が落ち込むんだ?賢者タイムか?」
「お前!それ嫌味!?」
「何で嫌味なんだ?」
「あのな!あんたみたいな綺麗なヤツが!あんな淫らで綺麗だったのに!あんな凄いもの見せられたのに!自分のちんこが無反応なんだぞ!落ち込みもするだろ!!どんだけ機能不全なんだよ!!俺のちんこは!!」
「ぷっ……。」
「笑うな!ちんこが勃つからって!自慢すんな!」
「あははっ!!」
ムスッとむくれる俺を彼はケラケラ笑う。
なんだよ?!
そんなに笑わなくてもいいだろうが?!
俺はふて腐れ、つんけんと片付けを再開した。
「……なぁ。」
「なんだよ。」
「俺は、綺麗だったのか?」
「綺麗だったよ。」
「あんなに乱れてたのに?」
「乱れてたから綺麗だったんじゃん。」
「……そうか。」
彼はそれだけ言うと、また黙ってしまった。
また始まった沈黙。
でも、さっきと違って嫌な気はしなかった。
彼が何を考えているのかは、俺にはわからない。
けれど心地よい静寂がそこにはあった。
だから多分、嫌な気分ではないんだろうなと思った。
片付けが終わり、俺は商品を身繕い始める。
なんだかんだ言っても、これは商売だからな。
「ローションはいくついる?」
「2つ。」
「2つ買うなら大きいボトルにすれば??」
「隠しにくくなるから嫌だ。」
「ふ~ん?じゃ、硬化油はどうする?」
「1つ。」
「ディルドとバイブはどうする?」
「~~~っ!!」
「なんだよ?要らないのか?せっかくはかったのに?」
「……いるっ。モノは委せる!!」
淡々と事務的に質問して商品を袋に詰めていく俺。
そんな俺に彼はちょっと苛立ったように答えた。
う~ん?物静かで冷静なタイプだと思ってたけど、結構、感情的なところもあるよな、コイツ。
まぁ、ヤッてる事が事だから仕方ないけど。
俺はスルーを決め込んで受け流す。
「はいはい。で?大きさだけど、少し小さいのと、ちょうど良さそうなのと、少し大きめのの3つがあたりがいいと思うんだけどさ~。」
「……小さいのって何だよ。」
「測定してみて、結構、締め付け強そうだから、自分でするとき、慣れないうちは力んじゃってちょうどいいのだと入れられないと思うからさ。小さめのがあった方がいいと思うんだよね。」
「~~~っ!!」
「だから、何で怒るんだよ??」
「……うるさいっ。」
「も~。とりあえずそれでいい?それとも小さめのとちょうどいいのの二本にして、大きいのはまた今度にする?」
「………………。」
「ねぇ?」
「あ~!もう!!3つとも入れといてくれ!!馬鹿!!」
「だから~?何でそんなに怒るんだよ??」
「自分で考えろ!!」
なんでだか不機嫌になられ、俺は困ってしまう。
考えろと言われてもなぁ??
俺、コイツには実験みたいな酷い事は何もしてないのに。
むしろ、凄く気を使ってる。
だって一応「お客様」だからな。
なので仕事として対応するしかない。
「入れる時は引くぐらいローションとか使えよ。ナマモノじゃないから、濡れてこないんだし。」
「~~~!わかったよっ!!」
彼は俺が何か言うたびにつっけんどんになる。
なんか傷つくなぁ~。
あんなエッチな事もした仲なのに~。
とはいえ商品も決まり、俺は渡すものとそうでない物を分けて荷物を片付け始める。
「あ、そうだ。チョーカー貸してみな。」
「何で?」
「サービスでメンテナンスしてやるよ。」
その言葉に彼は起き上がり、首からチョーカーを外すと俺に渡してくる。
俺は鞄から機材を出していじり始めた。
その手元を彼が覗き混む。
「メンテナンスってどれぐらいの頻度で頼めばいいんだ?」
「ん~使用頻度にもよるしな~。でも今後も俺から何か買うなら、その度にサービスで見るよ。」
「……わかった。」
彼はそう言うと、ぽすんと俺の膝に頭を乗せた。
思わぬ彼の行動に俺はぽかんとする。
「え?何?」
「見てわからないのか?」
「??」
「膝枕だ。」
まぁ、そうですね??
そんな事するタイプに見えなくて意外だったのと、何で彼が俺にそんな事をするのかわからなくて聞いたんだけどね。
でもクールなイケメン風な彼が、犬が懐くみたいにちょこんと膝に頭を乗せてきてちょっと可愛い。
俺は彼の好きにさせながら、チョーカーのメンテナンスに戻る。
「俺の膝枕は高いよ?」
「へ~?いくらなんだ?」
「お値段、何と!昼飯一回分!!」
「高っ!!」
「高い?!」
かなり激安価格を提示して笑いを取ろうとしたのに、高いと言われ面食らう。
驚く俺をくすくす彼が笑って見上げてくる。
「何でだよ!酷くない?!むちゃくちゃ良心的だろうが!!」
「そうかなぁ??」
「それに今なら!何と!先着1名様にかぎり!昼飯一回分をお付けします!」
「あはははっ!!それって!!」
「実質、無料!!実質無料となっております!早い者勝ちですよ~!!いかがですか?!お客様?!」
「ふふっ。なら1つもらおうかな?」
「お買上げありがとうございます!」
「あはは!何だよそれ?!」
俺の軽快な営業トークに彼が大笑いした。
なんか、いいな。
こういうの。
その不思議な時間を心地よく思う。
名前も知らない。
どこの部隊かも知らない。
あまり見かけないし制服が少し違うから、第三別宮警護部隊の人ではないと思う。
俺の話はその道の人には浸透し始めているから、別部隊などからもちらほら顧客が来ている。
警護や警備、軍部所属といえど、ここは貴族社会。
下手に外部に手を出すより、内々で購入できた方が何かと良いのだ。
彼もそんな人の一人なのだと思う。
俺は彼の事を何も知らない。
聞けば教えてくれるかもしれない。
でも俺は何も聞かなかった。
俺は片付けをしながら聞いた。
けれど悲しいかな、沈黙がそれに答える。
彼はあの後ぐったりしてしまい、俺は布を敷いて彼を寝かせ、穴やらナニやらの始末をした。
まぁ、実験の時とあまり変わらない。
ただゴムは上手に着けてあったようで、外に飛び出したりはしていないので手間が少なくて助かった。
「……………………。」
彼はずっと無言。
泣いたせいで目が腫れそうなので寝かせてすぐタオルを水で濡らして目の上に当ててやったら、それを押し当てるようにして何も言わなくなった。
下のほうも拭いて、ズボンを履かせる。
これで粗方、後始末は終わった。
終わった、のに……。
彼はず~と無言。
目にタオルを当てたまま、無言。
意識が飛んでる訳じゃない。
そんなに怒らなくても良いのに。
「頼まれた通り、大きさはかっただけなのに……。」
「……言いたいことはそれだけか?」
やっと答えた声は、いつもより低くて淡々としている。
実験なんかをしていても、皆、最後に気持ちよくイカせてあげると喜ぶのに、何で怒るんだろう?
そんな冷たい態度を取られ、俺はちょっと傷心だった。
「めちゃくちゃ気持ちよさそうにイッたくせに……。」
そう、俺はちゃんと彼をイカせてあげた。
多分、彼がそれまで味わった事のない快楽で。
だというのに、俺は言った瞬間、思い切り蹴っ飛ばされた。
「痛っ?!何すんだ?!」
「あのな!はかるって言われたのに疑似性器突っ込まれて!やめろって言っても大きくするし!挙げ句、手を押さえられて!卑猥な事をたくさん言われて!後ろだけでイかされたんだぞ!!」
「駄目なのかよ??」
俺は不思議そうに聞いた。
だって彼はネコになりたがっていた。
その最初のチュートリアルをこなしたのに、どうして怒っているのか俺にはわからなかった。
「…………初めてだったんだぞ……。」
ぼそっと呟かれた言葉。
その声はか細く少し震えていた。
彼はまた黙ってしまう。
ヤバい、泣かした!?
何となくそんな気がして慌てて顔を覗き込む。
悪い事はしてないつもりだが、彼の涙は妙に俺を焦らせる。
「ごめん、泣くなよ?!」
「泣いてない!!」
泣いてない??
なら何なんだよ??
俺が不思議がってタオルを捲ると、彼はただ真っ赤になっていた。
眉目秀麗な顔が、今、起きた事を受けとめきれずに真っ赤になっている。
俺はぽかんとその顔を見つめた。
彼みたいな男がこんな顔してるとは思わなかった。
なんでだか目が反らせない。
「馬鹿野郎!恥ずかしくて死にそうだ!!」
そして俺の手からタオルを取り返し、目を覆ってしまう。
全身がぷるぷると羞恥に震えている。
あ、ヤバい。
何だろう?この感覚は?
何故か言葉が無くなって俺は固まった。
よくわからない感覚。
それは嬉しいような恥ずかしいようなくすぐったさを持っていた。
その感覚を胸いっぱいに吸い込んだ後、俺は大きく溜め息をついて項垂れる。
そんな俺を、タオルの隙間からチラリと彼が見やった。
「……何でお前が落ち込むんだ?賢者タイムか?」
「お前!それ嫌味!?」
「何で嫌味なんだ?」
「あのな!あんたみたいな綺麗なヤツが!あんな淫らで綺麗だったのに!あんな凄いもの見せられたのに!自分のちんこが無反応なんだぞ!落ち込みもするだろ!!どんだけ機能不全なんだよ!!俺のちんこは!!」
「ぷっ……。」
「笑うな!ちんこが勃つからって!自慢すんな!」
「あははっ!!」
ムスッとむくれる俺を彼はケラケラ笑う。
なんだよ?!
そんなに笑わなくてもいいだろうが?!
俺はふて腐れ、つんけんと片付けを再開した。
「……なぁ。」
「なんだよ。」
「俺は、綺麗だったのか?」
「綺麗だったよ。」
「あんなに乱れてたのに?」
「乱れてたから綺麗だったんじゃん。」
「……そうか。」
彼はそれだけ言うと、また黙ってしまった。
また始まった沈黙。
でも、さっきと違って嫌な気はしなかった。
彼が何を考えているのかは、俺にはわからない。
けれど心地よい静寂がそこにはあった。
だから多分、嫌な気分ではないんだろうなと思った。
片付けが終わり、俺は商品を身繕い始める。
なんだかんだ言っても、これは商売だからな。
「ローションはいくついる?」
「2つ。」
「2つ買うなら大きいボトルにすれば??」
「隠しにくくなるから嫌だ。」
「ふ~ん?じゃ、硬化油はどうする?」
「1つ。」
「ディルドとバイブはどうする?」
「~~~っ!!」
「なんだよ?要らないのか?せっかくはかったのに?」
「……いるっ。モノは委せる!!」
淡々と事務的に質問して商品を袋に詰めていく俺。
そんな俺に彼はちょっと苛立ったように答えた。
う~ん?物静かで冷静なタイプだと思ってたけど、結構、感情的なところもあるよな、コイツ。
まぁ、ヤッてる事が事だから仕方ないけど。
俺はスルーを決め込んで受け流す。
「はいはい。で?大きさだけど、少し小さいのと、ちょうど良さそうなのと、少し大きめのの3つがあたりがいいと思うんだけどさ~。」
「……小さいのって何だよ。」
「測定してみて、結構、締め付け強そうだから、自分でするとき、慣れないうちは力んじゃってちょうどいいのだと入れられないと思うからさ。小さめのがあった方がいいと思うんだよね。」
「~~~っ!!」
「だから、何で怒るんだよ??」
「……うるさいっ。」
「も~。とりあえずそれでいい?それとも小さめのとちょうどいいのの二本にして、大きいのはまた今度にする?」
「………………。」
「ねぇ?」
「あ~!もう!!3つとも入れといてくれ!!馬鹿!!」
「だから~?何でそんなに怒るんだよ??」
「自分で考えろ!!」
なんでだか不機嫌になられ、俺は困ってしまう。
考えろと言われてもなぁ??
俺、コイツには実験みたいな酷い事は何もしてないのに。
むしろ、凄く気を使ってる。
だって一応「お客様」だからな。
なので仕事として対応するしかない。
「入れる時は引くぐらいローションとか使えよ。ナマモノじゃないから、濡れてこないんだし。」
「~~~!わかったよっ!!」
彼は俺が何か言うたびにつっけんどんになる。
なんか傷つくなぁ~。
あんなエッチな事もした仲なのに~。
とはいえ商品も決まり、俺は渡すものとそうでない物を分けて荷物を片付け始める。
「あ、そうだ。チョーカー貸してみな。」
「何で?」
「サービスでメンテナンスしてやるよ。」
その言葉に彼は起き上がり、首からチョーカーを外すと俺に渡してくる。
俺は鞄から機材を出していじり始めた。
その手元を彼が覗き混む。
「メンテナンスってどれぐらいの頻度で頼めばいいんだ?」
「ん~使用頻度にもよるしな~。でも今後も俺から何か買うなら、その度にサービスで見るよ。」
「……わかった。」
彼はそう言うと、ぽすんと俺の膝に頭を乗せた。
思わぬ彼の行動に俺はぽかんとする。
「え?何?」
「見てわからないのか?」
「??」
「膝枕だ。」
まぁ、そうですね??
そんな事するタイプに見えなくて意外だったのと、何で彼が俺にそんな事をするのかわからなくて聞いたんだけどね。
でもクールなイケメン風な彼が、犬が懐くみたいにちょこんと膝に頭を乗せてきてちょっと可愛い。
俺は彼の好きにさせながら、チョーカーのメンテナンスに戻る。
「俺の膝枕は高いよ?」
「へ~?いくらなんだ?」
「お値段、何と!昼飯一回分!!」
「高っ!!」
「高い?!」
かなり激安価格を提示して笑いを取ろうとしたのに、高いと言われ面食らう。
驚く俺をくすくす彼が笑って見上げてくる。
「何でだよ!酷くない?!むちゃくちゃ良心的だろうが!!」
「そうかなぁ??」
「それに今なら!何と!先着1名様にかぎり!昼飯一回分をお付けします!」
「あはははっ!!それって!!」
「実質、無料!!実質無料となっております!早い者勝ちですよ~!!いかがですか?!お客様?!」
「ふふっ。なら1つもらおうかな?」
「お買上げありがとうございます!」
「あはは!何だよそれ?!」
俺の軽快な営業トークに彼が大笑いした。
なんか、いいな。
こういうの。
その不思議な時間を心地よく思う。
名前も知らない。
どこの部隊かも知らない。
あまり見かけないし制服が少し違うから、第三別宮警護部隊の人ではないと思う。
俺の話はその道の人には浸透し始めているから、別部隊などからもちらほら顧客が来ている。
警護や警備、軍部所属といえど、ここは貴族社会。
下手に外部に手を出すより、内々で購入できた方が何かと良いのだ。
彼もそんな人の一人なのだと思う。
俺は彼の事を何も知らない。
聞けば教えてくれるかもしれない。
でも俺は何も聞かなかった。
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