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第三章「砂漠の国編」
ガーデンパーティー
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「あははっ!!本当かい?鼻から吸わされたって!?」
森の町に、皆の笑い声が響く。
ガーデンパーティーのように、日当たりのいい場所に品の良いテーブルセットを出してお茶をしている。
「本当ですよ!いきなり強引に引き寄せられて、頭、押さえてぐいっと顔を寄せてきて!!キスされるのかと目を閉じたら!!ズボッですよ!?鼻の穴にビン突っ込んで!!鬼の形相で「いいから吸えっ!!」てっ!!」
「ひ、酷い!酷すぎる!おかしい~!!」
「サークちゃん……鬼ね……。もう!シルクちゃんてば純情を弄ばれて可哀想~っ!!」
ゲラゲラ笑う皆に、俺は酷い男として批難される。
何でだ!?
あんなに頑張ったのに!何でだ!?
俺は不貞腐れて、マドレーヌを口に放り込んだ。
一対多数。
何か言うと5倍のいい返しが来るので、俺の口は言葉を出さずに食べることに専念する。
西の国を離れた後、本格的に王国に戻る前に森の町に報告にいくと、無理矢理戻した状態も心配だから、シルクを連れてきてもいいと言われ連れてきた。
「それにしても本当、サークちゃんてむちゃくちゃ!!呪われたままの核をそのまま突っ込んじゃうなんて!!呪いが壊せたから良かったけど!下手したら、シルクちゃん自身も呪われたのよ!?わかってる!?」
「は~い、師匠~。今後は気を付けま~す。」
「なにその生返事っ!!」
師匠はさっきから上半身裸になっているシルクの背中に手をかざし、欠片の調整をしてくれている。
やはりあのやり方は、かなり無謀だったようだ。
シルクの体にもあの核のようなものにも、だいぶ負担がかかってしまった。
そんな訳で、シルクはしばらくの間、ここで治療を受ける事になった。
とはいえシルクは魔術師ではないので、魔術本部に来てもハウスパートナーはつかなかった。
なので今回限りのお客さん扱いだ。
「それにしても呪いか……。確かに言われてみれば、呪いなら可能かもな。」
「人を呪い殺す術の応用かもね?調べてみなくちゃ。」
穏やかな時間。
けれどそこで交わされる言葉は、とてものどかなお茶会の会話とは思えない。
そんな中、隣に座っていたロイさんが俺に目配せした。
「……何人だい?」
「多分、10人は……。」
「そうか。西の国は怖いことをする……。」
ロイさんは静かにお茶を口にした。
人数は呪いの元にされた人の数だ。
残忍な方法で痛め付けて殺して、憎悪等を集める。
あの呪いは、シルクの欠片をきっちり包んで綻びすらなかった。
それはシルクの欠片に存在が近いものでできていた証だ。
あの呪いは、カイナの民の命を使って作られたものなのだろう。
それを考えると、術の正体を明かさずシルクに戻せたのはかえって良かったと俺は思う。
皆と笑っているシルクを見る。
辛いことが多かっただろう。
これからも、背負い続けなければならない苦しみもある。
それはずっとシルク苦しめ続けるだろう。
だからせめて、これからシルクが出会うものが、こうして笑っていられるものであって欲しいと思う。
「……サーク。」
「はい。」
「あの子が今後どうなるかは、主となった君の心次第だ。カイナの民とその主ともなれば、君やシルクを利用しようとするものがたくさん現れるだろう。気をつけなさい。」
「はい。」
「いい仲間をたくさん持ちなさい。君は面白い巡りを持っているから、手を伸ばせばきっと届くよ?……私たちのようにね。」
「ありがとうございます。」
古の秘武術、演舞。
かつて西の国の王がそれを恐れ、受け継がれていた隠れ里を探し出して滅ぼした。
その失われたはずの武術の完全継承者に、俺は主に選ばれてしまった。
カイナの民の事はよくわからない。
けれどあの誓いを口にしたシルクの覚悟は理解しているつもりだ。
正直、自分には荷が重いとも思う。
でも出会ってしまったのだ。
あの砂漠の国で俺たちは。
俺が旅に出るなんて突拍子もないことをしなければ出会わなかった。
シルクがあそこで、行き倒れていなければ、出会わなかった。
巡りというのは、そういうものなのだろうか?
「主~!今日の治療、終わりました~!」
「わかった!今、行く!」
シルクの治療と平行して、俺は演舞を習い始めている。
ここでは騒がしくしてしまうから、いつも鍛練している広場にシルクと移動した。
「あの子は本当に面白い事を考えるね。」
「まさか演舞の気の使い方を魔力の気の鍛練にしようなんて、誰も考えんよ。」
「サークちゃんはじっと瞑想とかしてられないんですよ……。だからってこんな方法、ビックリです。」
「あの子の魔術の使い方にもあってるしね、私は好きよ?」
「あの子のお陰で、魔術師の戦闘スタイルが劇的に変わりそうだね?」
「いいえ!あんなことができるのは、サークちゃんだけです!!あの子は特殊過ぎるんです!!」
「そうなんだよね~。ただでさえ心配なのに、カイナの民の主になって帰って来るしね~。」
「わしらだけじゃ、守りきれんなぁ。」
「なに、大丈夫さ。あの子らは、わしらに守られるほど弱くはない。」
「そうそう。年寄りがしてやれることは、あまりないさ。」
「これが時の流れなら、一番、自然な事なのさ。」
「我らはただ、見守ろう。可愛い子供たちが、時の先を切り開いていくのを……。」
森の町に、皆の笑い声が響く。
ガーデンパーティーのように、日当たりのいい場所に品の良いテーブルセットを出してお茶をしている。
「本当ですよ!いきなり強引に引き寄せられて、頭、押さえてぐいっと顔を寄せてきて!!キスされるのかと目を閉じたら!!ズボッですよ!?鼻の穴にビン突っ込んで!!鬼の形相で「いいから吸えっ!!」てっ!!」
「ひ、酷い!酷すぎる!おかしい~!!」
「サークちゃん……鬼ね……。もう!シルクちゃんてば純情を弄ばれて可哀想~っ!!」
ゲラゲラ笑う皆に、俺は酷い男として批難される。
何でだ!?
あんなに頑張ったのに!何でだ!?
俺は不貞腐れて、マドレーヌを口に放り込んだ。
一対多数。
何か言うと5倍のいい返しが来るので、俺の口は言葉を出さずに食べることに専念する。
西の国を離れた後、本格的に王国に戻る前に森の町に報告にいくと、無理矢理戻した状態も心配だから、シルクを連れてきてもいいと言われ連れてきた。
「それにしても本当、サークちゃんてむちゃくちゃ!!呪われたままの核をそのまま突っ込んじゃうなんて!!呪いが壊せたから良かったけど!下手したら、シルクちゃん自身も呪われたのよ!?わかってる!?」
「は~い、師匠~。今後は気を付けま~す。」
「なにその生返事っ!!」
師匠はさっきから上半身裸になっているシルクの背中に手をかざし、欠片の調整をしてくれている。
やはりあのやり方は、かなり無謀だったようだ。
シルクの体にもあの核のようなものにも、だいぶ負担がかかってしまった。
そんな訳で、シルクはしばらくの間、ここで治療を受ける事になった。
とはいえシルクは魔術師ではないので、魔術本部に来てもハウスパートナーはつかなかった。
なので今回限りのお客さん扱いだ。
「それにしても呪いか……。確かに言われてみれば、呪いなら可能かもな。」
「人を呪い殺す術の応用かもね?調べてみなくちゃ。」
穏やかな時間。
けれどそこで交わされる言葉は、とてものどかなお茶会の会話とは思えない。
そんな中、隣に座っていたロイさんが俺に目配せした。
「……何人だい?」
「多分、10人は……。」
「そうか。西の国は怖いことをする……。」
ロイさんは静かにお茶を口にした。
人数は呪いの元にされた人の数だ。
残忍な方法で痛め付けて殺して、憎悪等を集める。
あの呪いは、シルクの欠片をきっちり包んで綻びすらなかった。
それはシルクの欠片に存在が近いものでできていた証だ。
あの呪いは、カイナの民の命を使って作られたものなのだろう。
それを考えると、術の正体を明かさずシルクに戻せたのはかえって良かったと俺は思う。
皆と笑っているシルクを見る。
辛いことが多かっただろう。
これからも、背負い続けなければならない苦しみもある。
それはずっとシルク苦しめ続けるだろう。
だからせめて、これからシルクが出会うものが、こうして笑っていられるものであって欲しいと思う。
「……サーク。」
「はい。」
「あの子が今後どうなるかは、主となった君の心次第だ。カイナの民とその主ともなれば、君やシルクを利用しようとするものがたくさん現れるだろう。気をつけなさい。」
「はい。」
「いい仲間をたくさん持ちなさい。君は面白い巡りを持っているから、手を伸ばせばきっと届くよ?……私たちのようにね。」
「ありがとうございます。」
古の秘武術、演舞。
かつて西の国の王がそれを恐れ、受け継がれていた隠れ里を探し出して滅ぼした。
その失われたはずの武術の完全継承者に、俺は主に選ばれてしまった。
カイナの民の事はよくわからない。
けれどあの誓いを口にしたシルクの覚悟は理解しているつもりだ。
正直、自分には荷が重いとも思う。
でも出会ってしまったのだ。
あの砂漠の国で俺たちは。
俺が旅に出るなんて突拍子もないことをしなければ出会わなかった。
シルクがあそこで、行き倒れていなければ、出会わなかった。
巡りというのは、そういうものなのだろうか?
「主~!今日の治療、終わりました~!」
「わかった!今、行く!」
シルクの治療と平行して、俺は演舞を習い始めている。
ここでは騒がしくしてしまうから、いつも鍛練している広場にシルクと移動した。
「あの子は本当に面白い事を考えるね。」
「まさか演舞の気の使い方を魔力の気の鍛練にしようなんて、誰も考えんよ。」
「サークちゃんはじっと瞑想とかしてられないんですよ……。だからってこんな方法、ビックリです。」
「あの子の魔術の使い方にもあってるしね、私は好きよ?」
「あの子のお陰で、魔術師の戦闘スタイルが劇的に変わりそうだね?」
「いいえ!あんなことができるのは、サークちゃんだけです!!あの子は特殊過ぎるんです!!」
「そうなんだよね~。ただでさえ心配なのに、カイナの民の主になって帰って来るしね~。」
「わしらだけじゃ、守りきれんなぁ。」
「なに、大丈夫さ。あの子らは、わしらに守られるほど弱くはない。」
「そうそう。年寄りがしてやれることは、あまりないさ。」
「これが時の流れなら、一番、自然な事なのさ。」
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