「欠片の軌跡」②〜砂漠の踊り子

ねぎ(塩ダレ)

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第三章「砂漠の国編」

悪夢から目覚めるとき ☆

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シルクが目を覚ました時、彼はまだ夢を見ているのだと思った。
そう思いたかったのかもしれない。

悪夢で魘される時に見る覚えのある天井。
石積の寂れた牢獄。

そこには寒さも感じなくなるほどの狂喜がいつもあって……。

手を動かそうとしたが、ガチャリと重い音を立てただけだった。
大きめのテーブルに四肢がくくりつけられている。
頭だけ動かすと、幸いなのかなんなのか、かろうじて全裸ではない。

ズボンは身に付けている。
上はサークが最終防衛ラインと呼んだ、胸回りだけ隠すタンクトップを着ている。
落ち着いて見るとこの格好って卑猥だな、と思う。

頭がぐらぐらする。

これが現実だと認めたくない自分と、現実だと認識して発狂しそうな自分がひしめき合っている。
叫びたいけれど、声は出ず、掠れた息が漏れるだけた。

何故、あの時、外にでてしまったのだろう?


「綺麗になったね、シルク。」


ねっとりとした声が響いた。

反射的に体が動いて、鎖を鳴らす。
息が止まりそうだった。

無意識に、奥歯が震える。


「一目見て、お前だとわかったよ?こんなに愛しい子は、お前だけだシルク…。」


石の床に、コツコツと足音が響いた。

揺れる炎にその顔が浮かび上がる。
シルクは声にならない悲鳴を上げた。

その顔がにっこりと重く笑う。


「よるなっ!!」

「どうしたんだい?帰って来てくれたのに?」

「……帰って来たんじゃない!!」

「これが欲しかったのかな?」


そう言って、胸元のポケットから小瓶を出す。

探していた小瓶。
自分の欠片。


「返せ!!」

「ああ、シルク。お前が逃げ出してからは、寂しくて肌身離さず持っていたよ?これはお前の一部だからね。」


男はその細長い指を伸ばし、露になっているシルクの腹に触れた。

「ひっ……っ!!」

「ああ!お前に触れている!!」

「さ、触るな……。」

「思い出す!ここでお前の初めてを奪ったあの日を!!」

「やめろ!!」

「幼いお前も美しく、私は我を忘れてしまい、準備もそこそこに猛る想いをお前に挿入してしまったね?」

男はそう言って、シルクの腹を上から下へと両手で撫でた。

「~~~っ!!」

「お前は血を流し、処女を奪ったのだと酷く興奮したよ。ああ!私のシルク!!私が奪ったのだ!!お前の全てを!!」

「やめろっ!!」

男が身動きの出来ないシルクの太股を撫で、開かされた股間に己の股間を押し立てた。

「~~っ!!」

悲鳴を上げたいが、声が出ない。

お互い服を着ているとはいえ、リズミカルに擦り付けられれば、何度も男に成された行為を思いだし、シルクは吐き気を催した。
けれど何も食べていないので吐くことも出来ない。

男はだんだん、興奮していった。


「やめろ!!俺はもう!幼児じゃない!!」

「ええ、ええ!そうですとも!!こんなに大きくなって!!なのにシルク、昨日、あなたを見た瞬間、私は言い様のない興奮を覚えました!こんな事は初めてです!ああ!あの幼かったシルクの中が!今はどれほど熟れているのか!想像して私は眠れませんでした!!」

「やめろ!!やめてくれ!!」

追い上げるように腰は激しく揺り動かされ、男の体が覆い被さってくる。

「体もこんなにいやらしくなって……!!」

骨ばった指がシルクの体を撫で回す。
悔しさと嫌悪で、シルクの目からは涙が溢れた。

「やっやめろ、やめてくれ……っ!!」

「ああ!そうです!私の可愛いシルク!!あなたはそうやったいつも泣いていました!!なんて素晴らしい!!」

男はそれを喜んでいる。
指先が、布越しにシルクの乳首に触れた。

「ああ!なんと可愛いらしい!!」

男の手がそれを弄ぶ。

ビクリ、と体が震える。
男はシルクの反応を見逃さなかった。

ニヤリとした口が裂け、濡れた赤い舌が顔を出す。

「やだ……やだ!やめろ!!」

タンクトップがじわりと濡れた。
生暖かいもので突起を潰される。

「や、やああぁぁ……っ!!」

シルクは激しく暴れたが、ガタガタと机が揺れるだけ。
服の上から強く吸われる。
思うように吸い付けず、男は顔を上げた。

「この服はとても似合っていたので脱がしませんでしたが、そろそろ隠された部分を楽しませてもらいますよ?」

男の指が、タンクトップの下に潜り込む。

「ひっっ!!」

肌を直接撫で回され、突起が強く摘ままれた。

「~~っ!!」

ガタンと体が跳ねる。

ぐいっとタンクトップが捲られ、肌を晒す。
男の目が、それを舐めるように見つめた。

そして体を離すと、シルクのズボンを触った。

「ではこちらも、あなたの成長を楽しませて下さいね、可愛いシルク……。」

嫌だ、と思った。
だがどうする事も出来ない。

このまま、あの悪夢と同じように、同じようにされてしまうのか?

悔しくて歯を食い縛る。
耐えるしか自分には出来ない。

だが、そんなのは嫌だ。

「……助けて……助けてよ、オーナー……。」

小さな、小さな悲鳴。
届く筈がない。

どうして彼の側を離れてしまったのだろう?

一緒なら怖くない。
あなたが横にいてくれたら、何も怖くないのに。
一人は嫌だ。
どうしてほんの僅かな時間でも、自分はあなたから離れてしまったのだろう?

悔しさと後悔と絶望がシルクの中を駆け巡った。

その時。

男の手がシルクのズボンの前を開こうとした時、ドーンという物凄い音と共に、建物が揺れた。
衝撃でパラパラと埃が落ちる。
男がハッとして、慌てた様子であたりを警戒した。

「おい!何事だ!?砲撃か!?」

「わかりません!!」

牢の外にいた警備兵もまだ状況を掴んでいないのか、慌てふためいている。
慌ただしく足音が行き交う中、またドーンという音と衝撃が走る。

シルクの口元に、笑みが浮かんた。

ああ、そうだ。
あの時と同じじゃない。

自分には、信じていい人がいる……。

そして大きく息を吸い込んで叫んだ。



「オーナーっ!!俺はここにいるっ!!」



もう、一人じゃない……。

そう、素直に信じる事ができた。
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