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第三章「砂漠の国編」
二日目
しおりを挟む大学の先輩とは言っても世話になった覚えはなく、正直、今日初めて会った人だった。
「つまり、先輩の御実家のある商店街を盛り上げるためのヒーロースーツをタダで作れと」
「すまん。ムシがいいのは分かってる。だが、うちの商店街、爺さん婆さんばかりで、そんなに予算がないんだ、最初は、商店街のマスコットキャラクターの着ぐるみでも作ろうかとも考えたんだが、それでも、人が入る着ぐるみ一着、数十万はくだらない、ちゃんとしたデザイナーに頼めば、もっとかかる。で、思い出したんだ、うちの大学に趣味でヒーロースーツを作ってるやつがいるって。で、それを着た動画をたくさんあげて、再生数を稼いで、開発費に回してるやつがいるって」「いえ、ヒーロースーツではなく、どちらかというと運動補助のパワードスーツです。近未来の戦争を想定した、核の放射能、細菌兵器などによる空気汚染下の劣悪な環境下でも活動できる完全防護戦闘服の研究です。動画を撮影してネットで公開しているのは、そのスーツの性能をアピールして世界中から開発資金を集めるためです」
「つまり、ヒーロースーツではなく、兵器だと」
「ええ、そうです、趣味ではなく、現実的な兵器開発です。ま。見てもらった方が早いでしょう」
俺は、先輩を、俺の工房の奥に案内した。
「まず、この一番下に着る、全身タイツみたいな黒いアンダーウェアですが、人工筋肉が織り込まれています」
「人工筋肉?」
「通常の人間の動きを補佐する収縮素材の総称です。例えば、相手を殴るとき、その腕の動きに合わせて、これが収縮して、その腕の動きを加速させます」
「??」
「ま、皮膚の上にもう一枚筋肉の層ができる感じです。あくまで動作の補佐ですから超人的な怪力になるわけではありません。で、これには防弾や耐熱衝撃吸収等の機能もありますから、これ一枚だけでも、結構な戦闘服だとは思います」
「ほぉ」
分かったのか分からないのかはっきりしない、曖昧な相槌を先輩はした。
「で、この上にさらにこっちのアーマーを装着することで、強度を高めた簡易パワードスーツになるというわけです。本当は兵器オプション付きの様々なアーマーを開発したいのですが、重武装の兵装開発となると、資金面や国内の法律等で、現状は、このアンダーウェアとこのアメフトのプロテクターに毛が生えたようなものしか作れてません」
「このアメフトもどきのプロテクターも十分かっこいいじゃないか」
「かっこいいだけじゃなくて、実用性がないと」
「とりあえず、このままでいいから、こいつを俺にヒーロースーツとして貸し出してくれないか」
「そんなに、こいつをヒーロースーツとして使ってみたいですか?」
「ああ、気に入った。ちょっと商店街のマークとか入れさせてもらうけど、基本は、このままで十分だ。貸してくれ」
「先輩が着ますか」
「いや、俺なんか来ても人気なんか出ない。俺の現役女子高生の妹にヒロインをやらせるつもりだ。現役女子高生ヒロイン、うけると思うだろ?」
「さ、こちらとしては、貸し出す条件として、アクションシーンでのデータをいただきたいですね。今まで、俺が着たデータだけなんで、他の人が着た場合のデータがないので」
「おい、現役女子高生が着ると聞いて、変なデータを取るつもりじゃないだろうな」
「そんなことはしませんよ、俺は純粋に技術バカなんで、十代の女子が身に付けたとき、どの程度の筋力アップ効果が出るか知りたいだけです」
そうして、俺のパワードスーツ開発は、地方の商店街活性化プロジェクトの一部に組み込まれたが、現役女子高生がスタントマンなしで、派手なアクションをこなすご当地ヒーローが誕生し、そんな俺のスーツの噂を聞きつけたハリウッドの連中が、スタントマンの怪我を減らせるとして俺のスーツを億単位で求めるようになり、近未来戦争を想定して作ったそれは、各国警察の特殊部隊に採用されたり、特殊災害救助隊の装備に採用されたりと、俺の予想とは外れて意外に軍事以外に多く使われるようになった。
「つまり、先輩の御実家のある商店街を盛り上げるためのヒーロースーツをタダで作れと」
「すまん。ムシがいいのは分かってる。だが、うちの商店街、爺さん婆さんばかりで、そんなに予算がないんだ、最初は、商店街のマスコットキャラクターの着ぐるみでも作ろうかとも考えたんだが、それでも、人が入る着ぐるみ一着、数十万はくだらない、ちゃんとしたデザイナーに頼めば、もっとかかる。で、思い出したんだ、うちの大学に趣味でヒーロースーツを作ってるやつがいるって。で、それを着た動画をたくさんあげて、再生数を稼いで、開発費に回してるやつがいるって」「いえ、ヒーロースーツではなく、どちらかというと運動補助のパワードスーツです。近未来の戦争を想定した、核の放射能、細菌兵器などによる空気汚染下の劣悪な環境下でも活動できる完全防護戦闘服の研究です。動画を撮影してネットで公開しているのは、そのスーツの性能をアピールして世界中から開発資金を集めるためです」
「つまり、ヒーロースーツではなく、兵器だと」
「ええ、そうです、趣味ではなく、現実的な兵器開発です。ま。見てもらった方が早いでしょう」
俺は、先輩を、俺の工房の奥に案内した。
「まず、この一番下に着る、全身タイツみたいな黒いアンダーウェアですが、人工筋肉が織り込まれています」
「人工筋肉?」
「通常の人間の動きを補佐する収縮素材の総称です。例えば、相手を殴るとき、その腕の動きに合わせて、これが収縮して、その腕の動きを加速させます」
「??」
「ま、皮膚の上にもう一枚筋肉の層ができる感じです。あくまで動作の補佐ですから超人的な怪力になるわけではありません。で、これには防弾や耐熱衝撃吸収等の機能もありますから、これ一枚だけでも、結構な戦闘服だとは思います」
「ほぉ」
分かったのか分からないのかはっきりしない、曖昧な相槌を先輩はした。
「で、この上にさらにこっちのアーマーを装着することで、強度を高めた簡易パワードスーツになるというわけです。本当は兵器オプション付きの様々なアーマーを開発したいのですが、重武装の兵装開発となると、資金面や国内の法律等で、現状は、このアンダーウェアとこのアメフトのプロテクターに毛が生えたようなものしか作れてません」
「このアメフトもどきのプロテクターも十分かっこいいじゃないか」
「かっこいいだけじゃなくて、実用性がないと」
「とりあえず、このままでいいから、こいつを俺にヒーロースーツとして貸し出してくれないか」
「そんなに、こいつをヒーロースーツとして使ってみたいですか?」
「ああ、気に入った。ちょっと商店街のマークとか入れさせてもらうけど、基本は、このままで十分だ。貸してくれ」
「先輩が着ますか」
「いや、俺なんか来ても人気なんか出ない。俺の現役女子高生の妹にヒロインをやらせるつもりだ。現役女子高生ヒロイン、うけると思うだろ?」
「さ、こちらとしては、貸し出す条件として、アクションシーンでのデータをいただきたいですね。今まで、俺が着たデータだけなんで、他の人が着た場合のデータがないので」
「おい、現役女子高生が着ると聞いて、変なデータを取るつもりじゃないだろうな」
「そんなことはしませんよ、俺は純粋に技術バカなんで、十代の女子が身に付けたとき、どの程度の筋力アップ効果が出るか知りたいだけです」
そうして、俺のパワードスーツ開発は、地方の商店街活性化プロジェクトの一部に組み込まれたが、現役女子高生がスタントマンなしで、派手なアクションをこなすご当地ヒーローが誕生し、そんな俺のスーツの噂を聞きつけたハリウッドの連中が、スタントマンの怪我を減らせるとして俺のスーツを億単位で求めるようになり、近未来戦争を想定して作ったそれは、各国警察の特殊部隊に採用されたり、特殊災害救助隊の装備に採用されたりと、俺の予想とは外れて意外に軍事以外に多く使われるようになった。
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