92 / 94
第八章①「疑惑と逃亡編」
マングースとアナコンダ
しおりを挟む
納得できたようなできないような複雑な思いのまま、俺が自分の気持ちを整理しようとしていたその時、バーンッと乱暴に入り口のドアが開いた。
何事かと皆が目を向けるよりも早く、その怒声は響いた。
「ババアァァ~っ!!てめぇ!何やってんだっ!?所在地政府離脱とか!正気かぁっ?!」
あまりの声量と乱暴な口調、聞きなれないその声に、酒場はしんっと静まり返った。
だが俺はその声を知っていた。
もちろんマダムも知っていて、全く動じる事なく、面倒そうにその人物を冷視した。
マダムがそんな態度なので、怒鳴った相手は顔を真っ赤にしてズカズカ歩いてくる。
あまりの気迫に、列に並んでいた数人は思わず道を開けた。
「何とか言えっ!!ババアっ!!」
「うっさいね~。久しぶりにあった挨拶がそれかい?全く礼儀がなってない小人だね?」
「俺は小人じゃねぇっ!!」
ガツガツと重そうな足音で入ってきたその人は、テーブルの後ろで椅子に座るマダムの前に仁王立ちした。
仁王立ちしたのだが……。
「……ちっさ…。」
誰かが思わず小声で呟いた。
数人がプッと吹き出す。
「笑うんじゃねぇっ!!ひよっこどもっ!!」
ドスの効いた声でそう怒鳴るのだが、う~ん。
やっぱり可愛いな~と感じてしまうのは俺だけではないようだ。
収集がつかなそうだったので、俺は立ち上がって2人に近づく。
「こんばんわ、ボーンさん。いきなり大きな声を出さないでくださいよ。皆がびっくりしてます。」
そう、そこにいきなり現れて大声を出したのは、ドワーフのボーンさんだった。
俺がちょっと笑いながら声をかけると、少しだけバツの悪い顔をする。
もしかしてと思って入り口を見ると、あわあわしたサーニャさんともう一人、半獣人の子供が立っていた。
ドワーフと半獣人2人とは、ギルドであっても少し目立つ。
俺の顔を見たサーニャさんがホッと表情を緩めたので、手招きする。
子供の方は、警戒したようにサーニャさんに隠れたままだった。
「サークさん~!助かりました~!!」
「いえいえ。それよりどうしたんですか?!トート遺跡はどうしたんです?!」
トート遺跡と言う言葉と受付をやっているサーニャさんの顔を見て、多くの人がこの3人がどこから来た人物かわかったのだろう。
正体がわかった事から気にするのをやめ、また宴会を再開し始めた。
「オイ、ババア!俺の質問に答えやがれっ!!」
「そう言うあんたは、サークの質問に答えたらどうだい?!」
そして何故か、マダムとボーンさんは睨み合いを続けている。
ボーンさん、あんなにマダムを怖がってたのに、どうしちゃったんだろう??
絶対、勝ち目がない事ぐらい、わかってるだろうに……。
そう思ったがひとまず困ってるサーニャさんたちをとうにかしようと、俺は酒場の方に案内してシルクを呼んだ。
トムさん達がいる席に椅子を持ってきて2人を座らせ、何が食べるものと飲むものをシルクに頼んだ。
「あっ?!でも?!その……先生が……っ!!」
サーニャさんはあわあわしてるが、多分あれは誰かがいたってどうにもできるもんじゃない。
何となく冒険者の皆はそれがわかるらしく、署名待ちをしていた人も酒場の方に来て、とりあえず飲み始めてる。
「受付のお嬢ちゃん!あんま気にしなさんな!あれは多分、いつもの挨拶だ!!」
トムさんが豪快に笑った。
俺があの2人は旧知の仲だと伝えると納得したのかしないのかわからないが、とりあえず落ち着いてくれた。
シルクが食べ物と飲み物を持ってきて、2人の前に置いた。
「猫のお姉さん、お酒大丈夫??」
「え?!えぇっ?!あ、駄目です!先生に禁止されてます!」
急に声をかけられ、サーニャさんはまた慌てた。
さっきからあわあわしっぱなしだ。
その可愛い様子に皆はにこにこ微笑む。
……いや、1人ヤバイのがいた。
「にゃ……にゃんこちゃん……っ!!」
感極まった様に呟いたヒースさんを、全員が冷ややかな目で見た。
そうだ、この人。
動物好きなのか何なのか、すぐに人を動物に例えて夢中になる変な癖の持ち主だ。
例えるまでもなく動物っぽい半獣人の女の子が目の前にいるんだ、ヤバイ予感しかしない。
どうしようと思った瞬間、いきなりバタリとヒースが机に突っ伏した。
「ヒース?!」
突然の事に、隣にいたレダが慌てて肩を揺すったが、どうやらぐっすり眠っている。
皆が呆気に取られていると、サーニャさんが見た事のない怖い顔をして声をあげた。
「アレ~ック~っ!!」
そして隣に座っている半獣人の子を睨みつけた。
アレックと呼ばれたその子は涼しい顔をしてシルクの持ってきたミルクを、礼も言わずに飲み始めた。
何だか小生意気そうなガキだな。
それが俺のアレックに対する第一印象だった。
アレックは半分ほどミルクを飲むと、サーニャさんとは異なるキツそうな猫目でサーニャさんを見上げた。
「何だよ?!こいつが姉ちゃんに変な事しそうだったから眠らせただけじゃんかっ!!」
ツンツンそんな事を言う。
そう言えばサーニャさん、弟がいるって言ってたな??
随分、毛色の違う姉弟なんだな?ちょっと驚いた。
「何言ってるんですか~っ!!初対面の方に!失礼でしょうっ!!おまけに魔法なんてかけてっ!!」
「う~ん?どうかしら……?確かにヒースは変人だしね~。」
「そらみろ。姉ちゃんは平和ボケし過ぎなんだよ。先生がいつも守ってくれてるけど、いつか痛い目見るぞ。」
「レダさん……この状況でヒースさんをディスるのは良くないです。例え変人だったとしても……。」
「サーク、お前もな。」
何ともボケボケな会話が進む。
シルクは改めて持ってきたアイスティーをサーニャさんに渡した。
サーニャさんはお礼を言ってそれを飲む。
「サークさんをはじめ、皆さんご親切にありがとうございます。私はトート遺跡で受付を担当してます、アレキサンドラです。こっちの優秀ですが困った子が、弟のアレクセイです。どうぞ、サーニャとアレックとお呼び下さい。」
サーニャさんはそう言って頭を下げた。
その拍子に頭をゴツンとテーブルにぶつけ、皆、思わず吹き出した。
弟君は慣れているのか呆れ顔だ。
まぁ、何とかこっちは微笑ましく片がついた。
俺はそう思いながら後ろを振り向いた。
後ろでは相変わらず、アナコンダとマングースが睨み合っている。
だから勝てないって。
いくらマングースでも、アナコンダが相手だぞ?
締め上げられた上、丸呑みにされるっての。
もう一方も片をつけないとなと思って、俺は席をシルクに譲って立ち上がったのだった。
何事かと皆が目を向けるよりも早く、その怒声は響いた。
「ババアァァ~っ!!てめぇ!何やってんだっ!?所在地政府離脱とか!正気かぁっ?!」
あまりの声量と乱暴な口調、聞きなれないその声に、酒場はしんっと静まり返った。
だが俺はその声を知っていた。
もちろんマダムも知っていて、全く動じる事なく、面倒そうにその人物を冷視した。
マダムがそんな態度なので、怒鳴った相手は顔を真っ赤にしてズカズカ歩いてくる。
あまりの気迫に、列に並んでいた数人は思わず道を開けた。
「何とか言えっ!!ババアっ!!」
「うっさいね~。久しぶりにあった挨拶がそれかい?全く礼儀がなってない小人だね?」
「俺は小人じゃねぇっ!!」
ガツガツと重そうな足音で入ってきたその人は、テーブルの後ろで椅子に座るマダムの前に仁王立ちした。
仁王立ちしたのだが……。
「……ちっさ…。」
誰かが思わず小声で呟いた。
数人がプッと吹き出す。
「笑うんじゃねぇっ!!ひよっこどもっ!!」
ドスの効いた声でそう怒鳴るのだが、う~ん。
やっぱり可愛いな~と感じてしまうのは俺だけではないようだ。
収集がつかなそうだったので、俺は立ち上がって2人に近づく。
「こんばんわ、ボーンさん。いきなり大きな声を出さないでくださいよ。皆がびっくりしてます。」
そう、そこにいきなり現れて大声を出したのは、ドワーフのボーンさんだった。
俺がちょっと笑いながら声をかけると、少しだけバツの悪い顔をする。
もしかしてと思って入り口を見ると、あわあわしたサーニャさんともう一人、半獣人の子供が立っていた。
ドワーフと半獣人2人とは、ギルドであっても少し目立つ。
俺の顔を見たサーニャさんがホッと表情を緩めたので、手招きする。
子供の方は、警戒したようにサーニャさんに隠れたままだった。
「サークさん~!助かりました~!!」
「いえいえ。それよりどうしたんですか?!トート遺跡はどうしたんです?!」
トート遺跡と言う言葉と受付をやっているサーニャさんの顔を見て、多くの人がこの3人がどこから来た人物かわかったのだろう。
正体がわかった事から気にするのをやめ、また宴会を再開し始めた。
「オイ、ババア!俺の質問に答えやがれっ!!」
「そう言うあんたは、サークの質問に答えたらどうだい?!」
そして何故か、マダムとボーンさんは睨み合いを続けている。
ボーンさん、あんなにマダムを怖がってたのに、どうしちゃったんだろう??
絶対、勝ち目がない事ぐらい、わかってるだろうに……。
そう思ったがひとまず困ってるサーニャさんたちをとうにかしようと、俺は酒場の方に案内してシルクを呼んだ。
トムさん達がいる席に椅子を持ってきて2人を座らせ、何が食べるものと飲むものをシルクに頼んだ。
「あっ?!でも?!その……先生が……っ!!」
サーニャさんはあわあわしてるが、多分あれは誰かがいたってどうにもできるもんじゃない。
何となく冒険者の皆はそれがわかるらしく、署名待ちをしていた人も酒場の方に来て、とりあえず飲み始めてる。
「受付のお嬢ちゃん!あんま気にしなさんな!あれは多分、いつもの挨拶だ!!」
トムさんが豪快に笑った。
俺があの2人は旧知の仲だと伝えると納得したのかしないのかわからないが、とりあえず落ち着いてくれた。
シルクが食べ物と飲み物を持ってきて、2人の前に置いた。
「猫のお姉さん、お酒大丈夫??」
「え?!えぇっ?!あ、駄目です!先生に禁止されてます!」
急に声をかけられ、サーニャさんはまた慌てた。
さっきからあわあわしっぱなしだ。
その可愛い様子に皆はにこにこ微笑む。
……いや、1人ヤバイのがいた。
「にゃ……にゃんこちゃん……っ!!」
感極まった様に呟いたヒースさんを、全員が冷ややかな目で見た。
そうだ、この人。
動物好きなのか何なのか、すぐに人を動物に例えて夢中になる変な癖の持ち主だ。
例えるまでもなく動物っぽい半獣人の女の子が目の前にいるんだ、ヤバイ予感しかしない。
どうしようと思った瞬間、いきなりバタリとヒースが机に突っ伏した。
「ヒース?!」
突然の事に、隣にいたレダが慌てて肩を揺すったが、どうやらぐっすり眠っている。
皆が呆気に取られていると、サーニャさんが見た事のない怖い顔をして声をあげた。
「アレ~ック~っ!!」
そして隣に座っている半獣人の子を睨みつけた。
アレックと呼ばれたその子は涼しい顔をしてシルクの持ってきたミルクを、礼も言わずに飲み始めた。
何だか小生意気そうなガキだな。
それが俺のアレックに対する第一印象だった。
アレックは半分ほどミルクを飲むと、サーニャさんとは異なるキツそうな猫目でサーニャさんを見上げた。
「何だよ?!こいつが姉ちゃんに変な事しそうだったから眠らせただけじゃんかっ!!」
ツンツンそんな事を言う。
そう言えばサーニャさん、弟がいるって言ってたな??
随分、毛色の違う姉弟なんだな?ちょっと驚いた。
「何言ってるんですか~っ!!初対面の方に!失礼でしょうっ!!おまけに魔法なんてかけてっ!!」
「う~ん?どうかしら……?確かにヒースは変人だしね~。」
「そらみろ。姉ちゃんは平和ボケし過ぎなんだよ。先生がいつも守ってくれてるけど、いつか痛い目見るぞ。」
「レダさん……この状況でヒースさんをディスるのは良くないです。例え変人だったとしても……。」
「サーク、お前もな。」
何ともボケボケな会話が進む。
シルクは改めて持ってきたアイスティーをサーニャさんに渡した。
サーニャさんはお礼を言ってそれを飲む。
「サークさんをはじめ、皆さんご親切にありがとうございます。私はトート遺跡で受付を担当してます、アレキサンドラです。こっちの優秀ですが困った子が、弟のアレクセイです。どうぞ、サーニャとアレックとお呼び下さい。」
サーニャさんはそう言って頭を下げた。
その拍子に頭をゴツンとテーブルにぶつけ、皆、思わず吹き出した。
弟君は慣れているのか呆れ顔だ。
まぁ、何とかこっちは微笑ましく片がついた。
俺はそう思いながら後ろを振り向いた。
後ろでは相変わらず、アナコンダとマングースが睨み合っている。
だから勝てないって。
いくらマングースでも、アナコンダが相手だぞ?
締め上げられた上、丸呑みにされるっての。
もう一方も片をつけないとなと思って、俺は席をシルクに譲って立ち上がったのだった。
30
あなたにおすすめの小説
ふたなり治験棟 企画12月31公開
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる