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第八章①「疑惑と逃亡編」
主と従
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午後の真ん中辺りの時間、休憩も兼ねて鍛練場に顔を出した。
「え!?前より増えてないか!?」
何だかみちみちに人がいてびっくりした。
シルクが来て困ったように笑う。
「うん。主とイヴァンがさ、南の国で武術で対応したでしょ?あれさ、下手に切りつけて怪我させなかったり、城を破損させなかったから、むこうが言いがかりをつけられなかったんだよ。確かに評価される事だと思うけど、それって主とイヴァンでしょ?なのにそれの評価が何でだか俺の評価になってて……。」
「まぁ、武術で対応できるくらいまで、全体のレベルを上げたのは事実だし、評価してもらえたんならそれでいいんじゃないか?」
「でもさ~。何か変な感じ~。そのせいで、警護にも本格的に武術を取り入れようみたいな流れになってきちゃって……。もう、ここじゃ収まらないし、俺もこれ以上の人数は無理だよ~。」
「確かにな。各警護部隊でそれぞれ対応してもらった方がいい。お前一人で王国の警護部隊全部の武術を見るなんて無理だし。そこまで行くと、完全に俺の手から離れそうだしな。」
「え!?やだよ、俺!王国には仕えない!主だけに仕えてるんだから!!」
「そこまで全否定しなくても……。まぁ、とにかく他の警護部隊には、シルクに全面的に頼られても困るって連絡するわ。」
「そうして!イヴァンも補佐に来れないし!俺、このまま増え続けたら死んじゃうよ!」
「わかったわかった。」
それまで指導者の顔をしていたのに、俺の顔を見て気が抜けたのかシルクはむくれて不平を漏らした。
ぷーたれた顔が少し可愛い。
何だか俺の知らぬ間に、評価されてシルクも頑張ってるんだな。
俺はぽんっとシルクの頭を撫でた。
「今日はギルと会うのか?」
「ん?会わないよ?」
「なら、飲みに行くか?」
「行く行くっ!!もちろん主の奢りでしょ!?」
「う~ん。まぁ、お手柔らかに頼むわ。」
「やった~!!」
シルクは嬉しそうに笑った。
ザルのシルクに酒を奢るのは少し怖い。
まぁ労ってやるのも大事だし、話したい事もあるしな。
色々頑張ってるんだし。
俺はぐりぐり頭を撫でた。
シルクは目を細め、機嫌のいい猫みたいにおとなしくし撫でられている。
そんな約束をして、俺はシルクを手伝いながら、1時間ちょっと汗を流した。
終業後、独身寮の玄関ホールで待ち合わせていると、着替えたシルクがパタパタやって来た。
「お待たせ~!って、ウィルがまだか。」
「ウィルは来ないぞ?」
妙なことを聞かれ、俺はきょとんとした。
ああ、最近行動を共にしてるから、一緒だと思ったんだな。
誘った方が良かったのだろうか?
シルクの方は、俺の言葉を聞いて一瞬の間の後、ぽんっと赤くなった。
そしてもじもじと恥ずかしそうに言う。
「え?もしかして、主とサシ飲み??」
「……え?何かまずいのか??」
シルクの態度に少し慌てる。
ふたりのつもりだったが、そうか……。
プロポーズを断ったとはいえ、形に拘らないギルとシルクは婚約同然の関係だし、いくら主従関係にあるからと言って俺とふたりで飲みに行くのはまずいのか。
「悪い。そこまで気が回らなかった。ウィルも誘うわ。」
「違う違うっ!!ふたりで大丈夫っ!!」
俺がウィルを呼ぼうと動くと、シルクは必死になってそれを止めた。
何だよ?どっちなんだよ??
「え?ギルの事があるからまずいんだろ?」
「そこは全く平気。逆に主がそう言うの駄目なんだと思ってたから、びっくりしたって言うか……。」
「なら、大丈夫なのか??」
「うん……。サシで誘ってもらえて、俺も嬉しいし……。」
「変な意味で誘った訳じゃないぞ?お前はその、俺の従者だし、いつも世話になってるし、南の軍との戦闘でも頑張ってもらったし……。」
「わかってるよ、そんなの。」
シルクが困ったように笑った。
あえて言葉にしたのはあまり良くなかったかな?
少し反省する。
シルクはいつもまっすぐ、一生懸命俺に仕えてくれてるもんな。
何だかんだで蔑ろにしがちだけど、それでもちゃんとついてきてくれる。
俺なんかにはもったいない従者だと思う。
もう少し大事にしないとな、なんて思った。
そんな俺にシルクがニマッと笑う。
「ただ~、下着変えてきていい?すぐ済むから!!」
「は!?何で下着を変えるんだよ!!」
「もしもの時の為に!!」
「もしもなんてない!!」
相変わらずの突拍子もない発言に俺は慌てた。
何を考えているんだ!?シルクは!?
まあ、シルクなりの冗談なのだろうが、若干、たまに本気な気がして怖い。
シルクが調子に乗って、俺に絡み付く。
「またまた~!わかんないじゃん~!主、最近、性欲強いってウィルから聞いたし~!ちょっとその場の勢いでってあり得るでしょ~!?」
「ないから!!俺はウィル以外には性欲起こらないから!!」
「わかんないよ~?お酒が入るんだし~?ちなみに先に言っとくと、俺はウェルカムだから!!いつでもOKだよっ!!」
「ないから!絶対、ないから!!」
「またまた~。すっごく気持ち良くさせてあげるよ?俺、上手いし?」
「上手かろうが、俺は勃たないから。くだらないこと言ってると行くのやめるぞ!?」
「やだやだ!嘘!冗談だって!ほら!行こう?」
シルクは物凄く上機嫌で、俺の腕に腕を絡めて歩き出した。
う~ん、良いのだろうか……。
俺にぴったりくっついて甘えるシルクは、従者と言うより恋人だ。
俺たちが主従関係なのは皆知っているけれど、この距離感は主従関係で行き過ぎてないだろうか……?
通りすぎる隊員達の羨むような視線が痛い。
不可抗力だから!!
でもま、ほったらかしにすることが多いのに、南の軍との戦闘も黙ってついてきてくれたし、たまには存分にシルクの主になってもいいのかもしれない。
「主~?」
「何だよ?」
「大好きっ!!」
「……お前、さすがにそれは駄目な?」
前言撤回。
やはり少し、従者としての距離を考えた方が良さそうだ。
どうしたもんだろう??
困ったものだ。
無邪気に甘えるシルクを無下にもできず、俺は頭を悩ませた。
「え!?前より増えてないか!?」
何だかみちみちに人がいてびっくりした。
シルクが来て困ったように笑う。
「うん。主とイヴァンがさ、南の国で武術で対応したでしょ?あれさ、下手に切りつけて怪我させなかったり、城を破損させなかったから、むこうが言いがかりをつけられなかったんだよ。確かに評価される事だと思うけど、それって主とイヴァンでしょ?なのにそれの評価が何でだか俺の評価になってて……。」
「まぁ、武術で対応できるくらいまで、全体のレベルを上げたのは事実だし、評価してもらえたんならそれでいいんじゃないか?」
「でもさ~。何か変な感じ~。そのせいで、警護にも本格的に武術を取り入れようみたいな流れになってきちゃって……。もう、ここじゃ収まらないし、俺もこれ以上の人数は無理だよ~。」
「確かにな。各警護部隊でそれぞれ対応してもらった方がいい。お前一人で王国の警護部隊全部の武術を見るなんて無理だし。そこまで行くと、完全に俺の手から離れそうだしな。」
「え!?やだよ、俺!王国には仕えない!主だけに仕えてるんだから!!」
「そこまで全否定しなくても……。まぁ、とにかく他の警護部隊には、シルクに全面的に頼られても困るって連絡するわ。」
「そうして!イヴァンも補佐に来れないし!俺、このまま増え続けたら死んじゃうよ!」
「わかったわかった。」
それまで指導者の顔をしていたのに、俺の顔を見て気が抜けたのかシルクはむくれて不平を漏らした。
ぷーたれた顔が少し可愛い。
何だか俺の知らぬ間に、評価されてシルクも頑張ってるんだな。
俺はぽんっとシルクの頭を撫でた。
「今日はギルと会うのか?」
「ん?会わないよ?」
「なら、飲みに行くか?」
「行く行くっ!!もちろん主の奢りでしょ!?」
「う~ん。まぁ、お手柔らかに頼むわ。」
「やった~!!」
シルクは嬉しそうに笑った。
ザルのシルクに酒を奢るのは少し怖い。
まぁ労ってやるのも大事だし、話したい事もあるしな。
色々頑張ってるんだし。
俺はぐりぐり頭を撫でた。
シルクは目を細め、機嫌のいい猫みたいにおとなしくし撫でられている。
そんな約束をして、俺はシルクを手伝いながら、1時間ちょっと汗を流した。
終業後、独身寮の玄関ホールで待ち合わせていると、着替えたシルクがパタパタやって来た。
「お待たせ~!って、ウィルがまだか。」
「ウィルは来ないぞ?」
妙なことを聞かれ、俺はきょとんとした。
ああ、最近行動を共にしてるから、一緒だと思ったんだな。
誘った方が良かったのだろうか?
シルクの方は、俺の言葉を聞いて一瞬の間の後、ぽんっと赤くなった。
そしてもじもじと恥ずかしそうに言う。
「え?もしかして、主とサシ飲み??」
「……え?何かまずいのか??」
シルクの態度に少し慌てる。
ふたりのつもりだったが、そうか……。
プロポーズを断ったとはいえ、形に拘らないギルとシルクは婚約同然の関係だし、いくら主従関係にあるからと言って俺とふたりで飲みに行くのはまずいのか。
「悪い。そこまで気が回らなかった。ウィルも誘うわ。」
「違う違うっ!!ふたりで大丈夫っ!!」
俺がウィルを呼ぼうと動くと、シルクは必死になってそれを止めた。
何だよ?どっちなんだよ??
「え?ギルの事があるからまずいんだろ?」
「そこは全く平気。逆に主がそう言うの駄目なんだと思ってたから、びっくりしたって言うか……。」
「なら、大丈夫なのか??」
「うん……。サシで誘ってもらえて、俺も嬉しいし……。」
「変な意味で誘った訳じゃないぞ?お前はその、俺の従者だし、いつも世話になってるし、南の軍との戦闘でも頑張ってもらったし……。」
「わかってるよ、そんなの。」
シルクが困ったように笑った。
あえて言葉にしたのはあまり良くなかったかな?
少し反省する。
シルクはいつもまっすぐ、一生懸命俺に仕えてくれてるもんな。
何だかんだで蔑ろにしがちだけど、それでもちゃんとついてきてくれる。
俺なんかにはもったいない従者だと思う。
もう少し大事にしないとな、なんて思った。
そんな俺にシルクがニマッと笑う。
「ただ~、下着変えてきていい?すぐ済むから!!」
「は!?何で下着を変えるんだよ!!」
「もしもの時の為に!!」
「もしもなんてない!!」
相変わらずの突拍子もない発言に俺は慌てた。
何を考えているんだ!?シルクは!?
まあ、シルクなりの冗談なのだろうが、若干、たまに本気な気がして怖い。
シルクが調子に乗って、俺に絡み付く。
「またまた~!わかんないじゃん~!主、最近、性欲強いってウィルから聞いたし~!ちょっとその場の勢いでってあり得るでしょ~!?」
「ないから!!俺はウィル以外には性欲起こらないから!!」
「わかんないよ~?お酒が入るんだし~?ちなみに先に言っとくと、俺はウェルカムだから!!いつでもOKだよっ!!」
「ないから!絶対、ないから!!」
「またまた~。すっごく気持ち良くさせてあげるよ?俺、上手いし?」
「上手かろうが、俺は勃たないから。くだらないこと言ってると行くのやめるぞ!?」
「やだやだ!嘘!冗談だって!ほら!行こう?」
シルクは物凄く上機嫌で、俺の腕に腕を絡めて歩き出した。
う~ん、良いのだろうか……。
俺にぴったりくっついて甘えるシルクは、従者と言うより恋人だ。
俺たちが主従関係なのは皆知っているけれど、この距離感は主従関係で行き過ぎてないだろうか……?
通りすぎる隊員達の羨むような視線が痛い。
不可抗力だから!!
でもま、ほったらかしにすることが多いのに、南の軍との戦闘も黙ってついてきてくれたし、たまには存分にシルクの主になってもいいのかもしれない。
「主~?」
「何だよ?」
「大好きっ!!」
「……お前、さすがにそれは駄目な?」
前言撤回。
やはり少し、従者としての距離を考えた方が良さそうだ。
どうしたもんだろう??
困ったものだ。
無邪気に甘えるシルクを無下にもできず、俺は頭を悩ませた。
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