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第三王子編
鍵を握る者
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呑気にスコーンを食べていたら、とんでもない話になってきた。
のどかな森の町、いや魔術本部は、大地の王の中にある異空間と言われた。
この緑豊かな町が異空間とか、どう信じたら良いのだろう?
そうなるとここにある太陽や月等は偽物なのだろうか?
よくわからない。
「だからここに住むためには、ハウスパートナーを持たなければならないだろう?」
「王にハウスパートナーを与えられると言うことは、大地の王からここに出入りすることが認められたと言う事なんだよ。」
確かにそこにいるために、専属の精霊を持つと言うのは、おかしな事だった。
あまりに身近で何の違和感もなく一緒に過ごしてきたハウスパートナー達には、そんな役割があったようだ。
「……いつから魔術本部がここにあるかは知らない。だが王の加護を受けてここに存在してきた。王の種が盗まれてからは、古き王を守り、ここに住むことで王の中に魔力を与え支えてきた。だが、それにも限界がある。」
何とも規模の違う話だ。
ここに強い魔術師が集まっているのは、俗世間から隠れていた訳じゃない。
ここにいると言う事で、大地の王の中の魔力の一部として機能していたのだ。
そして今、もうどうにもならないと言うのもその通りなのだろう。
消えようとする古き王に外部から魔力を与えて支えても、それは応急処置に過ぎない。
「もし、王が消えたらどうなるんですか?」
「それは誰にもわからない。」
「そんな事は起こった事がないから、私たちにも精霊達にもわからないんだ。」
「もしかすれば世界が崩壊するかもしれないし、何も起こらないかもしれない。」
確かにそうだ。
だが、そんな大きな存在がなくなれば、全体のバランスが崩れて、大きな影響が出ると考えた方が自然だ。
だが、打つ手はない。
もしもそれをどうにか出来るものがあるとしたら、それは盗まれた王の種だけだ。
「……王の種はどこに行ったんですか?」
「わからないよ。我々は精霊達の話を聞いてそれがあること、そして盗まれたことを知ったんだ。」
「どんなものかも知らない。だから探すことも儘ならないんだ、私たちは。」
だからと言って、このまま古き王が滅びるのを延命し続ける事しか出来ないのだろうか?
「……何か方法はないのですか?」
俺は諦め悪く、そう聞いた。
円卓の面々が顔を見合せ、にっこりと笑った。
「あるとしたら、君だ。サーク。」
皆が温かく俺を見つめる。
俺はただ、目を瞬ばたかせるしかない。
「……はい??」
「私たちは、君がその鍵だと考えているんだ。」
どういう事だろう??
俺が鍵??
思い当たるとすれば、俺が森の主と呼ばれる事があった件だ。
黙ったまま俺は表情を固くした。
「サークはこれまでに、何度か自分が森の王もしくは森の主と言われたと言っていたね?」
「そしてここに初めて来たとき、君は古き王と対話した。そして君にだけ、ハウスパートナーがふたりついた。こんなことは今までなかった事だった。」
「サークの普通では考えられない巡りの強さも、それなら仮説が立てられる。」
「血の魔術が使える事も、恐らくその辺りからきているんじゃないかと思うよ。」
「それからね、サーク。ちょうどあなたが拾われた頃なのよ、王の種が盗まれたと言うのが……。」
「恐らく君は、森の王、もしくは大地の王と関わりがある。そして王の種とも。」
何を言って良いのかわからなかった。
全ては偶然だとも言えるし、そうでないとも言える。
確かに俺は拾われた身だし、森の主とも呼ばれたし、普通だと思っていた事が特殊だったりもした。
それでも俺は、今まで普通に、普通の人達と同じように生きてきたんだ。
なのに自分が何者なのかわからなくされたようで、気持ち悪かった。
「……俺がその種だと考えているんですか?」
硬い表現でそう聞くと、皆はきょとんとした後、朗らかに笑った。
何でこの人達はいつも緊張感がないんだろう?
若干、気が抜ける。
「う~ん?それはどうだろう?わからないな?」
「ただ、君が新しき王そのものではないことは確かだと思うよ。恐らく王の種でもない。」
「だって、もし君が新しき王であり、王の種なら、ここに来た時点で問題は解決したはずだからね。何しろ君は古き王と対話している。」
対話……あれを対話と言うのだろうか?
ただ光に包まれて眠くなっただけだ。
その後、どうなったか俺は知らないのだから。
だが確かに自分が本当にそうなら、あの時に取り込まれて問題は解決したはずだ。
けれどそうではない。
俺はあの後、俺として目覚め、それまでと変わらずに今を過ごしている。
そうでなかったと言う事は、新しい王でも王の種でもないのだろう。
水神や風の主が何故、俺を森の主と呼んだのかは謎が残るが……。
急に肩の力が抜け、俺はくたっと突っ伏した。
何だよ…何か嫌な汗かいたわ……。
「そう言われればそうですね……。」
自分が自分のままで何か安心した。
へたった俺の頭を、ロイさんが撫でてくれた。
「だがサーク。可愛そうだか、君は無関係ではないはずだ。これだけ君にだけ特別な現象が現れているんだ。」
「だから、わしらはこう考えている。サークは全てを元に戻す鍵の役割を持っているのだと。」
「鍵、ですか……。」
そう言われてもピンとこない。
世界を元に戻すって、規模が大きすぎる。
そんな事にちっぽけな自分が関わるなんて、全く想像できなかった。
頭が混乱したせいか、甘いものが欲しくなる。
俺は手を伸ばして、残っていたスコーンをトングで掴んだ。
「具体的に、俺に何が出来ると考えているんですか?皆さんは?」
あまり抽象的な事を言われてもわからない。
具体的な話があるなら、そっちを聞きたかった。
彼らは笑った。
「そうさのう……。あれか?やはり?」
「そうですね、我々にはわかりませんが、サークならわかるかもしれません。」
「何です?」
「うん。我々は王の種が何かわからないから、探せない。でもサークになら、王の種を見つけられるんじゃないかな?」
「何しろ、竜の谷を見つけて行ってきた強者だからな、サークは。」
「いや、どうなんでしょう?俺も知らないものは探せないと思いますよ??」
俺は苦笑した。
そんな見たことも聞いたこともないものを、どうやって探せと言うのだろう?
多少の手がかりもないまま、この広い全世界を探し回るなんて無茶な話だ。
だが、何だかよくわからないが、わからなかった事が少しずつ繋がって来ている気はする。
これが全て繋がった時、俺は何を見るのだろう?
少しだけそんな事を考えて、スコーンを2つに割る。
そしてアホみたいにクリームとジャムを乗せて口に放り込んだ。
のどかな森の町、いや魔術本部は、大地の王の中にある異空間と言われた。
この緑豊かな町が異空間とか、どう信じたら良いのだろう?
そうなるとここにある太陽や月等は偽物なのだろうか?
よくわからない。
「だからここに住むためには、ハウスパートナーを持たなければならないだろう?」
「王にハウスパートナーを与えられると言うことは、大地の王からここに出入りすることが認められたと言う事なんだよ。」
確かにそこにいるために、専属の精霊を持つと言うのは、おかしな事だった。
あまりに身近で何の違和感もなく一緒に過ごしてきたハウスパートナー達には、そんな役割があったようだ。
「……いつから魔術本部がここにあるかは知らない。だが王の加護を受けてここに存在してきた。王の種が盗まれてからは、古き王を守り、ここに住むことで王の中に魔力を与え支えてきた。だが、それにも限界がある。」
何とも規模の違う話だ。
ここに強い魔術師が集まっているのは、俗世間から隠れていた訳じゃない。
ここにいると言う事で、大地の王の中の魔力の一部として機能していたのだ。
そして今、もうどうにもならないと言うのもその通りなのだろう。
消えようとする古き王に外部から魔力を与えて支えても、それは応急処置に過ぎない。
「もし、王が消えたらどうなるんですか?」
「それは誰にもわからない。」
「そんな事は起こった事がないから、私たちにも精霊達にもわからないんだ。」
「もしかすれば世界が崩壊するかもしれないし、何も起こらないかもしれない。」
確かにそうだ。
だが、そんな大きな存在がなくなれば、全体のバランスが崩れて、大きな影響が出ると考えた方が自然だ。
だが、打つ手はない。
もしもそれをどうにか出来るものがあるとしたら、それは盗まれた王の種だけだ。
「……王の種はどこに行ったんですか?」
「わからないよ。我々は精霊達の話を聞いてそれがあること、そして盗まれたことを知ったんだ。」
「どんなものかも知らない。だから探すことも儘ならないんだ、私たちは。」
だからと言って、このまま古き王が滅びるのを延命し続ける事しか出来ないのだろうか?
「……何か方法はないのですか?」
俺は諦め悪く、そう聞いた。
円卓の面々が顔を見合せ、にっこりと笑った。
「あるとしたら、君だ。サーク。」
皆が温かく俺を見つめる。
俺はただ、目を瞬ばたかせるしかない。
「……はい??」
「私たちは、君がその鍵だと考えているんだ。」
どういう事だろう??
俺が鍵??
思い当たるとすれば、俺が森の主と呼ばれる事があった件だ。
黙ったまま俺は表情を固くした。
「サークはこれまでに、何度か自分が森の王もしくは森の主と言われたと言っていたね?」
「そしてここに初めて来たとき、君は古き王と対話した。そして君にだけ、ハウスパートナーがふたりついた。こんなことは今までなかった事だった。」
「サークの普通では考えられない巡りの強さも、それなら仮説が立てられる。」
「血の魔術が使える事も、恐らくその辺りからきているんじゃないかと思うよ。」
「それからね、サーク。ちょうどあなたが拾われた頃なのよ、王の種が盗まれたと言うのが……。」
「恐らく君は、森の王、もしくは大地の王と関わりがある。そして王の種とも。」
何を言って良いのかわからなかった。
全ては偶然だとも言えるし、そうでないとも言える。
確かに俺は拾われた身だし、森の主とも呼ばれたし、普通だと思っていた事が特殊だったりもした。
それでも俺は、今まで普通に、普通の人達と同じように生きてきたんだ。
なのに自分が何者なのかわからなくされたようで、気持ち悪かった。
「……俺がその種だと考えているんですか?」
硬い表現でそう聞くと、皆はきょとんとした後、朗らかに笑った。
何でこの人達はいつも緊張感がないんだろう?
若干、気が抜ける。
「う~ん?それはどうだろう?わからないな?」
「ただ、君が新しき王そのものではないことは確かだと思うよ。恐らく王の種でもない。」
「だって、もし君が新しき王であり、王の種なら、ここに来た時点で問題は解決したはずだからね。何しろ君は古き王と対話している。」
対話……あれを対話と言うのだろうか?
ただ光に包まれて眠くなっただけだ。
その後、どうなったか俺は知らないのだから。
だが確かに自分が本当にそうなら、あの時に取り込まれて問題は解決したはずだ。
けれどそうではない。
俺はあの後、俺として目覚め、それまでと変わらずに今を過ごしている。
そうでなかったと言う事は、新しい王でも王の種でもないのだろう。
水神や風の主が何故、俺を森の主と呼んだのかは謎が残るが……。
急に肩の力が抜け、俺はくたっと突っ伏した。
何だよ…何か嫌な汗かいたわ……。
「そう言われればそうですね……。」
自分が自分のままで何か安心した。
へたった俺の頭を、ロイさんが撫でてくれた。
「だがサーク。可愛そうだか、君は無関係ではないはずだ。これだけ君にだけ特別な現象が現れているんだ。」
「だから、わしらはこう考えている。サークは全てを元に戻す鍵の役割を持っているのだと。」
「鍵、ですか……。」
そう言われてもピンとこない。
世界を元に戻すって、規模が大きすぎる。
そんな事にちっぽけな自分が関わるなんて、全く想像できなかった。
頭が混乱したせいか、甘いものが欲しくなる。
俺は手を伸ばして、残っていたスコーンをトングで掴んだ。
「具体的に、俺に何が出来ると考えているんですか?皆さんは?」
あまり抽象的な事を言われてもわからない。
具体的な話があるなら、そっちを聞きたかった。
彼らは笑った。
「そうさのう……。あれか?やはり?」
「そうですね、我々にはわかりませんが、サークならわかるかもしれません。」
「何です?」
「うん。我々は王の種が何かわからないから、探せない。でもサークになら、王の種を見つけられるんじゃないかな?」
「何しろ、竜の谷を見つけて行ってきた強者だからな、サークは。」
「いや、どうなんでしょう?俺も知らないものは探せないと思いますよ??」
俺は苦笑した。
そんな見たことも聞いたこともないものを、どうやって探せと言うのだろう?
多少の手がかりもないまま、この広い全世界を探し回るなんて無茶な話だ。
だが、何だかよくわからないが、わからなかった事が少しずつ繋がって来ている気はする。
これが全て繋がった時、俺は何を見るのだろう?
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