転生したら美少女吸血鬼になっていた俺ののんべんだらり旅行奇譚

一☆一

文字の大きさ
上 下
17 / 28
一章

事故と、羞恥

しおりを挟む
 そんな訳で俺はナーミアと合流して、案内の元に広めの公園へと向かった。
 というのも、ちょっと魔法を試してみたかったのだ。
 公園は広く、茶色い地面が見渡す限りに広がっていた。
 遊具はこれといってなく、屋根のついた、木製の長椅子なんかがあるくらいだが、敷地が広いので子供はこれで満足なのかもしれない。
 現に小さな子供達が、遠くで追いかけあっているのが見えた。
 ナーミアが長椅子に腰を下ろしたので、俺もそれに続いて隣に座る。

「ここは広いですから、こういう魔法の実験なんかにいいんです。事故が起きたりしても、壊れる様なものもこの椅子くらいですし」

 確かに、子供とは距離もある。気をつけさえすれば何かを壊したり、傷つけてしまったりすることもないだろう。

「さて、じゃあ早速試してみましょうか! 魔法を使うのに必要な感覚はもう出来ているので、あとは想像力です」
「想像力、ねえ……しかし、どんな魔法を使ってみるべきか悩むな」
「あはは、まぁ初めての何かって、少し特別な感じがしますものね」

 和やかに笑うナーミア。
 気持ちがわかってもらえた様で何よりだ。
 そういえば、と。ふと疑問が浮かび上がった。

「あの先生とナーミアは知り合いみたいだったけど、じゃあナーミアは魔法、使えるのか?」
「あ、はい。オドの量が少ないので、ほんのちょっとだけではあるんですけど……こんな風に」

 ナーミアがピッと人差し指を立て軽く振ると、その爪の先に小さな火が灯る。
 凄い、なんかの手品みたいだ。

「やっぱりかなり鮮明に想像しないといけない分、大きい魔法ともなると慣れがないとかなり難しいんです。でも、これくらいならもう平気で出来ると思いますよ」
「はぁ……成る程なぁ。じゃ、折角だし俺もやってみるか。その、指の先に火を点けるやつ」

 右手の人差し指を立て、目元に近づけてその先をじっと見つめる。
 お膳立ては済ませてある。大事なのはイメージだ。
 俺の、この指の先に、火が灯る──!

 ボッ、と音を立てて
 そう。火、などという生易しい表現ものでは断じて表せない規模の炎が、高熱を伴って俺の眼前で立ち昇り、俺の前髪と、ローブのフードをジリジリ炙っていた。
 まあ、そこは天下無敵の吸血鬼。前髪といえど、炎耐性は万全らしく、燃えたりはしなかったのだが──フードについた炎はみるみるうちに燃え広がり、瞬く間に俺の身体を覆おうとしていた。

「……だぁぁぁ!! 危ねえッ!!」

 慌ててローブを脱ぎ捨てる。
 吸血鬼なのでダメージを受けるかは兎も角、熱いものは熱い。
 ローブを地面に投げ捨てると、あっという間に全焼し、真っ黒な炭になってぶすぶすと細い煙を上げた。
 間一髪というか、すんでの所で大惨事は免れた。辺りに草が生えてなくて良かった、とほっと息をつくと、真横から熱烈な視線を感じた。
 …………あっ。

「……あ、あの……その……大丈夫、ですか……?」

 恐る恐るナーミアの方に向き直ると、ナーミアは顔を真っ赤にして、気まずそうにしていた。
 胸、お腹、脚。どこを取っても寒そうな、俺の服装。肌色の面積が季節を弁えず広すぎるそれは、成る程、ナーミアの年齢には余りにも目の毒だった。
 俺は、頭が落ち着いてくるに従って、次第に顔が熱くなっていくのを嫌という程にゆっくりと感じていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけ2つスキルを持っていたので異端認定されました

七鳳
ファンタジー
いいね&お気に入り登録&感想頂けると励みになります。 世界には生まれた瞬間に 「1人1つのオリジナルスキル」 が与えられる。 それが、この世界の 絶対のルール だった。 そんな中で主人公だけがスキルを2つ持ってしまっていた。 異端認定された主人公は様々な苦難を乗り越えながら、世界に復讐を決意する。 ※1話毎の文字数少なめで、不定期で更新の予定です。

子爵家三男だけど王位継承権持ってます

極楽とんぼ
ファンタジー
側室から生まれた第一王子。 王位継承権は低いけど、『王子』としては目立つ。 そんな王子が頑張りすぎて・・・排除された後の話。 カクヨムで先行投降しています。

異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。

みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

4/4ー俺の親が自重しなかった結果チートな身体を得た。

ギン
ファンタジー
病気がちで子供時代の殆どを病院で過ごした黒鉄 倭人《クロガネ ワヒト》は人生の最後をそのまま病院にて終わらせる。 何故か先に異世界転生していた、自重しない親のおかげ?でチートな身体を得た主人公。 今度は多分、丈夫な身体でこの世界を楽しむ予定だ、異世界を異世界らしく生きて行きたい所だが、何せ親が先に来ているから。大体のことはもうお膳立てされている。そんな異世界を、自分のやりたい様に行動して行く。親父もハーレム作ったから。自分も作ろうかなとか思ってるとか、思ってないとか。 学園編、冒険者編、各種族編までは構想があるのでサクサク進める事を目標にしています。 そんなお話です。 2章のエピローグまでは1日1話程度の更新で進もうと思っています。 1日分で3000文字↑の量になります。 小説家になろうでも同じ小説で執筆中です。見やすい方でどうぞ。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...