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一章
事故と、羞恥
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そんな訳で俺はナーミアと合流して、案内の元に広めの公園へと向かった。
というのも、ちょっと魔法を試してみたかったのだ。
公園は広く、茶色い地面が見渡す限りに広がっていた。
遊具はこれといってなく、屋根のついた、木製の長椅子なんかがあるくらいだが、敷地が広いので子供はこれで満足なのかもしれない。
現に小さな子供達が、遠くで追いかけあっているのが見えた。
ナーミアが長椅子に腰を下ろしたので、俺もそれに続いて隣に座る。
「ここは広いですから、こういう魔法の実験なんかにいいんです。事故が起きたりしても、壊れる様なものもこの椅子くらいですし」
確かに、子供とは距離もある。気をつけさえすれば何かを壊したり、傷つけてしまったりすることもないだろう。
「さて、じゃあ早速試してみましょうか! 魔法を使うのに必要な感覚はもう出来ているので、あとは想像力です」
「想像力、ねえ……しかし、どんな魔法を使ってみるべきか悩むな」
「あはは、まぁ初めての何かって、少し特別な感じがしますものね」
和やかに笑うナーミア。
気持ちがわかってもらえた様で何よりだ。
そういえば、と。ふと疑問が浮かび上がった。
「あの先生とナーミアは知り合いみたいだったけど、じゃあナーミアは魔法、使えるのか?」
「あ、はい。オドの量が少ないので、ほんのちょっとだけではあるんですけど……こんな風に」
ナーミアがピッと人差し指を立て軽く振ると、その爪の先に小さな火が灯る。
凄い、なんかの手品みたいだ。
「やっぱりかなり鮮明に想像しないといけない分、大きい魔法ともなると慣れがないとかなり難しいんです。でも、これくらいならもう平気で出来ると思いますよ」
「はぁ……成る程なぁ。じゃ、折角だし俺もやってみるか。その、指の先に火を点けるやつ」
右手の人差し指を立て、目元に近づけてその先をじっと見つめる。
お膳立ては済ませてある。大事なのはイメージだ。
俺の、この指の先に、火が灯る──!
ボッ、と音を立てて炎が立ち昇る。
そう。火、などという生易しい表現では断じて表せない規模の炎が、高熱を伴って俺の眼前で立ち昇り、俺の前髪と、ローブのフードをジリジリ炙っていた。
まあ、そこは天下無敵の吸血鬼。前髪といえど、炎耐性は万全らしく、燃えたりはしなかったのだが──フードについた炎はみるみるうちに燃え広がり、瞬く間に俺の身体を覆おうとしていた。
「……だぁぁぁ!! 危ねえッ!!」
慌ててローブを脱ぎ捨てる。
吸血鬼なのでダメージを受けるかは兎も角、熱いものは熱い。
ローブを地面に投げ捨てると、あっという間に全焼し、真っ黒な炭になってぶすぶすと細い煙を上げた。
間一髪というか、すんでの所で大惨事は免れた。辺りに草が生えてなくて良かった、とほっと息をつくと、真横から熱烈な視線を感じた。
…………あっ。
「……あ、あの……その……大丈夫、ですか……?」
恐る恐るナーミアの方に向き直ると、ナーミアは顔を真っ赤にして、気まずそうにしていた。
胸、お腹、脚。どこを取っても寒そうな、俺の服装。肌色の面積が季節を弁えず広すぎるそれは、成る程、ナーミアの年齢には余りにも目の毒だった。
俺は、頭が落ち着いてくるに従って、次第に顔が熱くなっていくのを嫌という程にゆっくりと感じていた。
というのも、ちょっと魔法を試してみたかったのだ。
公園は広く、茶色い地面が見渡す限りに広がっていた。
遊具はこれといってなく、屋根のついた、木製の長椅子なんかがあるくらいだが、敷地が広いので子供はこれで満足なのかもしれない。
現に小さな子供達が、遠くで追いかけあっているのが見えた。
ナーミアが長椅子に腰を下ろしたので、俺もそれに続いて隣に座る。
「ここは広いですから、こういう魔法の実験なんかにいいんです。事故が起きたりしても、壊れる様なものもこの椅子くらいですし」
確かに、子供とは距離もある。気をつけさえすれば何かを壊したり、傷つけてしまったりすることもないだろう。
「さて、じゃあ早速試してみましょうか! 魔法を使うのに必要な感覚はもう出来ているので、あとは想像力です」
「想像力、ねえ……しかし、どんな魔法を使ってみるべきか悩むな」
「あはは、まぁ初めての何かって、少し特別な感じがしますものね」
和やかに笑うナーミア。
気持ちがわかってもらえた様で何よりだ。
そういえば、と。ふと疑問が浮かび上がった。
「あの先生とナーミアは知り合いみたいだったけど、じゃあナーミアは魔法、使えるのか?」
「あ、はい。オドの量が少ないので、ほんのちょっとだけではあるんですけど……こんな風に」
ナーミアがピッと人差し指を立て軽く振ると、その爪の先に小さな火が灯る。
凄い、なんかの手品みたいだ。
「やっぱりかなり鮮明に想像しないといけない分、大きい魔法ともなると慣れがないとかなり難しいんです。でも、これくらいならもう平気で出来ると思いますよ」
「はぁ……成る程なぁ。じゃ、折角だし俺もやってみるか。その、指の先に火を点けるやつ」
右手の人差し指を立て、目元に近づけてその先をじっと見つめる。
お膳立ては済ませてある。大事なのはイメージだ。
俺の、この指の先に、火が灯る──!
ボッ、と音を立てて炎が立ち昇る。
そう。火、などという生易しい表現では断じて表せない規模の炎が、高熱を伴って俺の眼前で立ち昇り、俺の前髪と、ローブのフードをジリジリ炙っていた。
まあ、そこは天下無敵の吸血鬼。前髪といえど、炎耐性は万全らしく、燃えたりはしなかったのだが──フードについた炎はみるみるうちに燃え広がり、瞬く間に俺の身体を覆おうとしていた。
「……だぁぁぁ!! 危ねえッ!!」
慌ててローブを脱ぎ捨てる。
吸血鬼なのでダメージを受けるかは兎も角、熱いものは熱い。
ローブを地面に投げ捨てると、あっという間に全焼し、真っ黒な炭になってぶすぶすと細い煙を上げた。
間一髪というか、すんでの所で大惨事は免れた。辺りに草が生えてなくて良かった、とほっと息をつくと、真横から熱烈な視線を感じた。
…………あっ。
「……あ、あの……その……大丈夫、ですか……?」
恐る恐るナーミアの方に向き直ると、ナーミアは顔を真っ赤にして、気まずそうにしていた。
胸、お腹、脚。どこを取っても寒そうな、俺の服装。肌色の面積が季節を弁えず広すぎるそれは、成る程、ナーミアの年齢には余りにも目の毒だった。
俺は、頭が落ち着いてくるに従って、次第に顔が熱くなっていくのを嫌という程にゆっくりと感じていた。
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