サルヴィーニャ

にわとうこ

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 エルカノハはオノウクと子どもたちに連れられて森歩きに行くことになった。

 ワラストリ城は森を切り拓いて建てられており、城門の壁の一部は森に接していた。
 かつて千年以上前に祖先が森を切り拓き、獣除けに石造りの壁を築いたのがこのワラストリ領の始まりであったという。今では拓けた土地に住民も増え耕作地も広がったが、狩猟や採取も大きな生活の糧であった為に、住民たちは幼い頃から雪の降らない季節に山や森に入り慣れていた。森歩きは森の恵みを享受する住民たちの日課であった。

 ノイエラとカヌラが張り切って弁当や茶の支度をしてまるで野営でもするかのような大荷物になってしまった。荷物についてガルダンドに相談すると、それならと城で広く参加を募ったところ多くが同行することになり、ちょっとした人数での気軽な散歩だったはずが大掛かりな行事のようになってしまっていた。

 森歩きといっても実際には何をするのかよくわかっていないエルカノハがいつもより騒がしく賑わっている厨房を不思議に思いながら覗くと、大所帯の携行昼食を急に準備することになった料理人たちが右へ左へと奔走しているところだった。
 大きな麻袋や木箱、蔦で編まれた籠などに次々と食べ物や飲み物、布や食器などがどんどんと入れられていく。満杯になった箱から順に外へと運ばれ、荷車に積まれていた。

 厨房入り口のすぐ近くには台の上につやつやと磨かれた林檎が並べられており、木箱に入れる作業の途中であったようだ。

「林檎はこの箱へ入れるのですか」

 重ねた木箱を抱え前も見えないような状態で、急ぎ足で前を通って行った人の「うう」だか「ああ」の肯定らしきうめき声を聞き、エルカノハは台に近づいて林檎を取り上げ木箱に詰め始めた。

 箱を外に置いて戻ってきた料理人はエルカノハが林檎の箱詰めをしているのを見て驚き飛び上がり慌てて駆け寄ったが、意外にも手早くかつ整然と箱詰めしていく手際の良さと、心なしかいきいきとして手を動かしているエルカノハに、料理人たちも林檎を詰めるために戻ってきた者も他の誰も、彼女から仕事を取り上げるようなことはできなかった。しかしそれも、エルカノハが林檎で満杯になった大きな木箱を一人で持ちあげようとするまでの短い間ではあった。

 この日、城で働いていた者の多くが森歩きに同行した。馬に荷車を引かせて、まるで遠征のような森歩きであった。

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