サルヴィーニャ

にわとうこ

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 その朝エルカノハは目を覚ますと、ここがどこであるのか混乱しながら見慣れぬ寝台で起き上がった。広々とした寝台から足を下ろすと、柔らかな毛足の敷物の上に室内履きが用意されていた。立ち上がり見回すとそこは部屋の中二階で、眼下には暖炉を囲む応接間が、窓の掛け布の隙間から入る光で薄っすらと見えていた。

 そういえば午後にワラストリの城へ到着したのであったとぼんやりと思い出しながら階段を降りると、寝室の真下にある衣装部屋からノイエラが出てきたところだった。

「ああ、姫さま、おはようございます。よくお休みでしたね。お体はいかがですか」

  声をかけるノイエラを見て、エルカノハははっと我に返った。

「私、昨日はあのまま眠ってしまったのね。ご領主に挨拶もしないまま、晩餐の約束も反故にしてしまったわ。まあ、来たばかりでなんということでしょう」

 山羊の乳で入れたお茶に蜂蜜を垂らしたものがたいそう気に入ったエルカノハは二杯目も飲み干した後、晩餐の時間まで少しだけと寝台に上がったまま朝まで寝入ってしまっていた。そのことに気づき慌てるエルカノハに、ノイエラは笑いかけながら寝椅子から肩掛けを取りエルカノハにまとわせた。

「姫さま、一週間もの馬車旅でしたもの、お疲れになられていたことは皆がわかっております。むしろあの素朴な焼き菓子と、蜂蜜入りの乳茶をおいしい、おいしいとお召し上がりになられたと聞いた厨房の係が飛び上がって喜んでいたそうですわ」

「まあ、せっかく作ったお料理を無駄にしたとお怒りになるのでなく、そのようなところで喜ばれるなんて。
 でもそれより、まずは挨拶に伺わなくてはね。昨夜、ご領主はお戻りになられたの」

「ええ、領主は晩餐の前に帰城されてすぐ挨拶にいらしたのですが、姫さまがお休みでしたので、晩餐時にも無理には起こさず寝かせて差し上げるようにと仰せでした。
 姫さまのおかげんさえよろしければ、領主には後ほど挨拶に伺うと知らせを入れておきましょう」

「そうね。昨日のあのお茶はまるで魔法のように眠りを誘うのね。夢も見ないでぐっすりと眠ってしまったわ。でもおかげさまで今朝はとても良い気分よ」
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