ヤクザの若頭、異世界で小汚い犬を拾ったらフェンリルだった

ミクリ21 (新)

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1◆若頭、小汚い犬を拾う

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男は日本生まれの日本育ちな生粋のヤクザで、関西一の組長の息子として22年生きている。

その男、瀬名組若頭瀬名拓真は………ちょっと今困っていた。

何故なら、気づいたら森だったからだ。

「………いや、どこやねんここ」

血のついた髪や顔や服は気にしないが、見知らぬ森にいきなりワープしたら流石に拓真も気になるらしい。

拷問用に愛用しているバールを肩にトントンとして、とりあえず拓真は探索することにした。

………何故拓真がバールを持ち、血まみれになっているかというと、先ほどまで瀬名組の島を荒らした輩に拷問をしていたからだ。

拓真はちょっと叩いたつもりだが、バールの攻撃力がちょっとなわけがない。

相手はギリで生きている状態なのだが、拓真は相手の自業自得だと思っているから手加減なんてする気なしだ。

そんな人を殺したのかと疑いたくなる見た目になっている拓真だが、歩いていたらなんか小汚い犬をみつけた。

「なんや小汚い犬やのぅ。ボロ雑巾の方がまだ綺麗とちゃうか?」

「キュウン………」

小汚い見た目をしているが、この犬は洗えばきっとモフモフの可愛い犬になるだろうと拓真は思う。

実は、拓真はモフモフな生き物が大好きなのだ。

「………自分のような弱そうな奴は自然の中では生きられへん。強い奴に食われて終わりか殺られて終わる。弱い奴は強い奴に守ってもらわなあかん。だから……俺が守ったろか?」

「クゥン?」

モフモフ大好き故に、懐かせようと甘い言葉で口説き始める。

でも拓真はナンパが得意ではないのだ。

なので、これでもかなり頑張って犬を口説いていた。

「俺は強い。だから、自分ぐらいなら守ったれるよ」

「わん!」

拓真の言葉を理解したらしい犬が、元気に吠えて拓真の足に擦り寄る。

よっしゃ!

内心勝利のガッツポーズを決め顔で決める拓真は、表面的には穏やかに微笑んでいた。

拓真は汚れを気にせずに犬を撫で、一緒に森を歩んだ。

「それにしても、どこなんやろなぁ………困ったわぁ」

「わん!」

「ん?おぉ、そやそや!名前つけな不便やな。んー………たこ焼きでどや?」

「ガルル!」

「嫌なんか?んー………ポチでどや?」

「ガルル!」

「ふむ。………タマならどや?」

「くぅ……わん」

「なんや、ちょっと不満そうやな。わかったわかった!真面目に考えたるから拗ねんといてぇ。………レンでどや?」

「わん!」

「決まりやな!俺はタクマや。レン、よろしゅうな!」

「わんわん!」

なんやかんやで、拾った犬の名前がレンに決まった。



ちなみに、この時まだ拓真は気づいていない。

ここが異世界ということに、自分が異世界に転移しているということに………。

そしてレンが犬じゃないことに、まったく気づいていなかった。
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