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1◆メリーさんじゃないよ、メリー君だよ

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メリーさんの怪談は有名だ。

『もしもし、私メリーさん、今○○にいるの』

それは電話をかけてきた少女が、そのセリフと共に近づいてきて、最後は後ろに現れるやつである。

俺こと田丸 栗栖たまる くりす(26)もその怪談は知っていた。

俺はコンビニバイトをしていて、身長体重共に男性としては平均ぐらい。

髪も目も黒で、髪型はショートヘアだ。

俺は地味な男なので、彼女いない歴=年齢だったりする。

そんな平凡な俺の日常は、ある日突然変わってしまう。



話は数十分前に遡る。

ピロピロピロ。

電話の着信が鳴って、それは非通知だったけれど俺は電話に出た。

……それが始まりだったんだ。

「もしもし」

「もしもし、僕メリー君、今マンションの一階にいるよ」

電話は一方的に切られてしまったが、またかかってきた。

「もしもし、僕メリー君、今マンションの二階にいるよ」

そして、相手はまた電話を切る。

電話がかかると、「三階にいるよ」「四階にいるよ」「五階にいるよ」と上がっていた。

俺のいる階は六階だ。

「もしもし、僕メリー君、今マンションの六階にいるよ」

ついに相手は六階に来た。

相手はまた電話をかけてきてこう言う。

「もしもし、僕メリー君、今君の自宅の玄関にいるよ」

俺はゾッとしながら布団を被る。

電話が鳴ると無視するのが怖くて、俺は出てしまった。

「もしもし、僕メリー君」

ゾクッ!!

声は……俺の背後からする………。

少しひんやりとした何かを感じる中、電話と背後からこう聞こえた。

「……今、貴方のベッドの中なの」

ひぃっ!!

背中に何かがくっついた!?

はぁはぁ言う何かが、俺のうなじをペロペロと舐めている。

めっちゃ怖くて怖くて、俺の乳首が恐怖という寒気に立ってしまっている。

そんな乳首を背後の何かが……いや、何者かが腕を回してきゅっと摘んだ。

「ひぁんっ!?」

「はぁはぁ……興奮しているの?可愛いなぁ…ふふふ♡」

興奮しているよ!違う意味だけどね!!

両手が俺の両乳首をきゅっきゅっと捏ねて、ちょっと気持ちよくなってきて地味に恥ずかしい。

マジで逃げたい………。

しかし、背後の何者かが俺(の乳首)を離す気配がないのだ。

これ、何の地獄かな……?

何者かが飽きるまで捏ねられた乳首は、真っ赤に腫れて軽く痛みを感じている。

………俺はそっと軟膏を乳首に塗って手当てするのだった。



「それで、君誰?」

「メリー君だよ」

害意はなさそうという理由で、俺は彼とココアを飲みながら話をすることにした。

ココアを用意した理由は、俺がココア大好きだからだぞ。

「メリー君って、あの有名な怪談のメリーさん?」

「メリーさんじゃないよ、メリー君だよ」

「違いが微妙だな」

「拘りあるから間違えないでね?」

どうやら彼は新種のメリー君らしく、ヤンデレ気質のストーカータイプなんだとか……。

「栗栖君に惚れたから取り憑こうと思ったの。栗栖君、好きだよ♡今日から僕達恋人だね♡」

「おっふ」

「もちろん、栗栖君の拒否権は断固認めない。僕を受け入れることは絶対的に決まったことだよ。ふふふ……」

「なんてこった………」

うっとり微笑む押しかけ女房ならぬ押しかけ幽霊。

とんでもない自称恋人ができてしまった俺だった………。
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