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15◆シトリン視点
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ユリウス様をずっと愛していた。
片思いだったけれど、好きで好きで仕方なかった。
なのに、運命の番が現れて……ユリウス様はソイツのモノになってしまったんだ。
あぁ、恨めしい恨めしい!!
許せなかったからつい部屋で暴れてしまった。
溢れでる殺意をアイツに見立てたぬいぐるみで発散しようと、僕は何度もナイフを突き立てる。
そうしていたら、いつの間にいたのかジルに話かけられた。
「シトリン様の気持ちわかるわ。失恋は辛いわよね。でも、レヴィを害してはダメよ。お兄様の怒りを買うわ」
「…………気持ちが、わかる……だと?」
僕はゆらりと立ち上がり、ナイフを持ったまま歩いて彼女の目の前で立ち止まる。
「お前に僕の気持ちの何がわかる!?恋もしたことのない頭のおかしいことしか言わないお前に!!」
怒りに任せて僕は、ジルを怒鳴りつけてしまった。
その言葉が、ジルを傷つけるとも気づかずに……。
「っ!!」
「…………あ」
はっ!
あ、やばい……言い過ぎた。
そう思った頃には遅かった。
激情していたからとはいえ、ジルは悪くないのに……。
ジルは、目を見開いて瞳から涙をポロポロと溢れさせていた。
……僕は、ジルを泣かせてしまったのだ。
その涙が僕を冷静にさせてくれた。
「……私だって、恋をしているわ。ずっとずっと好きだったのよ。だけど、私だって辛かった。だって、その人はずっと違う人を好きだったから。私の目の前で、その人だけを愛していたから。私はその人にとって、いつだって妹分でしかなかったのよ。たくさん好きだとアピールしていたけれど、私をそういう対象には見てもらえなかった。……いえ、気づいてすらなかったのね。私は、こんなに好きなのに、好きだったのに」
ジルの声は、少し震えている。
「え、ジル」
「…………シトリン様は、鈍感よ。そんなのだから、お兄様に自分の想いを伝えられないヘタレなんだわ。バカ……」
切なげにそう呟いたジルは走り去ってしまう。
「ジル!待って!!」
僕はジルを追いかけたけれど追いつけなかった。
割と自分のスペックは高い自信があるけれど、ジルは流石王族なだけあって僕とは基礎の体力とか脚力とかが違うらしい。
ジル……。
彼女の涙を思い出す。
ジルの言っている内容をよく考えてみて、もしかしたらジルは僕のことが好きだったんじゃないだろうかと思った。
確かに僕は、ジルの兄であるユリウス様の事が好きだった。
それに、ジルの事は妹分としか思っていなかった。
ジルが好き好きアピールをしていたことは分かっていたけれど、懐いているだけだと思っていた。
……。
彼女の恋心に気づいた今、本当に自分は鈍かったのだと気づいたよ。
ジルの悲痛な表情が、脳裏に焼き付いて僕の胸を締め付ける。
そして僕は、ジルに謝りたくてジルを探しに走り出したのだった。
片思いだったけれど、好きで好きで仕方なかった。
なのに、運命の番が現れて……ユリウス様はソイツのモノになってしまったんだ。
あぁ、恨めしい恨めしい!!
許せなかったからつい部屋で暴れてしまった。
溢れでる殺意をアイツに見立てたぬいぐるみで発散しようと、僕は何度もナイフを突き立てる。
そうしていたら、いつの間にいたのかジルに話かけられた。
「シトリン様の気持ちわかるわ。失恋は辛いわよね。でも、レヴィを害してはダメよ。お兄様の怒りを買うわ」
「…………気持ちが、わかる……だと?」
僕はゆらりと立ち上がり、ナイフを持ったまま歩いて彼女の目の前で立ち止まる。
「お前に僕の気持ちの何がわかる!?恋もしたことのない頭のおかしいことしか言わないお前に!!」
怒りに任せて僕は、ジルを怒鳴りつけてしまった。
その言葉が、ジルを傷つけるとも気づかずに……。
「っ!!」
「…………あ」
はっ!
あ、やばい……言い過ぎた。
そう思った頃には遅かった。
激情していたからとはいえ、ジルは悪くないのに……。
ジルは、目を見開いて瞳から涙をポロポロと溢れさせていた。
……僕は、ジルを泣かせてしまったのだ。
その涙が僕を冷静にさせてくれた。
「……私だって、恋をしているわ。ずっとずっと好きだったのよ。だけど、私だって辛かった。だって、その人はずっと違う人を好きだったから。私の目の前で、その人だけを愛していたから。私はその人にとって、いつだって妹分でしかなかったのよ。たくさん好きだとアピールしていたけれど、私をそういう対象には見てもらえなかった。……いえ、気づいてすらなかったのね。私は、こんなに好きなのに、好きだったのに」
ジルの声は、少し震えている。
「え、ジル」
「…………シトリン様は、鈍感よ。そんなのだから、お兄様に自分の想いを伝えられないヘタレなんだわ。バカ……」
切なげにそう呟いたジルは走り去ってしまう。
「ジル!待って!!」
僕はジルを追いかけたけれど追いつけなかった。
割と自分のスペックは高い自信があるけれど、ジルは流石王族なだけあって僕とは基礎の体力とか脚力とかが違うらしい。
ジル……。
彼女の涙を思い出す。
ジルの言っている内容をよく考えてみて、もしかしたらジルは僕のことが好きだったんじゃないだろうかと思った。
確かに僕は、ジルの兄であるユリウス様の事が好きだった。
それに、ジルの事は妹分としか思っていなかった。
ジルが好き好きアピールをしていたことは分かっていたけれど、懐いているだけだと思っていた。
……。
彼女の恋心に気づいた今、本当に自分は鈍かったのだと気づいたよ。
ジルの悲痛な表情が、脳裏に焼き付いて僕の胸を締め付ける。
そして僕は、ジルに謝りたくてジルを探しに走り出したのだった。
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