幸せな勇者と残酷な現実

ミクリ21 (新)

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4◆復讐のために守る

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ラインハルトはエリオットを守るために、奴らが現れる度に奴らを燃やして消してきた。

この偽りの世界は、エリオットのための箱庭なのだ。

幸せな毎日を過ごすための幻想の優しい世界。

だから、この世界にエリオットを現実に引き摺り戻そうとする人間達や神の悪意なんてお呼びじゃない。

人間達の悪意は影みたいな黒い人型の姿をしていて、エリオットは魔物だと思っている。

神の悪意は黒い色のイレギュラーな魔物の姿をしている。

ラインハルトはそれらを総じて悪意の魔物と呼んでいた。



悪意の魔物からエリオットを守る日々。

あまりエリオットの身体を酷使したくないから魔王の力で素早く敵を倒すのだ。

周りの人形からエリオットは二重人格と言われるようにして、ラインハルトの存在をエリオットに飲み込ませた。

真実なんて必要ないのだ。

エリオットの正体も、ラインハルトの正体も、エリオットは知らなくていい。

知らないまま幸せな子でいればいいのだ。

ラインハルトの心を復讐が蝕んでも、幸せなまま夢をみていればいい。

執着とも呼べる感情に、魔王としての炎はいつだって揺らめいている。



【□□□視点】

眠りについた勇者。

貴方は彼に守られた眠り姫。

王子様の唇の代わりに復讐のナイフを胸に振り下ろされる。

けれど、それはいつだって寸前で止まってしまう。

その命を散らせたらどれだけ楽になれるだろうと彼は思う。

けれど、どうしてもできないのだ。

勇者の悲しみをみていたから……。

彼もわかってはいるのだ。

本当に復讐すべきは勇者ではないと。

けれど、大切なあの人を散らしたのは勇者だから……。

だから彼は許せないのだ。



勇者の幸せな夢を守るのは優しさではない。

味方と信じている彼に、ずっとその命を狙われているのだから。

けれど勇者にとって、彼のそれは優しさだ。

こんな命をほしいならと、勇者ならきっと差し出すだろう。

生きる意味を失った勇者は、彼の復讐に生かされているのだった。
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