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3◆セトはよく誘拐される

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この国の王太子であるセトは、甘いものが大好きな攻略対象だ。

セト関連のシナリオは甘いものが深く関わる。

セトには護衛騎士グランと護衛魔術師サフランという側近がいて、二人も攻略対象だ。

プレゼントに甘いものを渡せば好感度が急激に上がって攻略しやすく、プレイヤー達からはチョロセトと密かに言われているらしい。



推しがセトのプレイヤーのセーブデータで仕事をした。

終わった後にこのゲームの主人公セインが、天使の無垢な微笑みを一瞬で真顔にしているのはいつものことだ。

セインのオンオフの切り替えはいつみてもちょっと怖い………。



セインとサフランと三人でおやつを食べていると、慌てた様子のグランがやってきた。

あぁ、この流れはきっと………。

「セトがまたお菓子で誘拐された!」

やはり、またセトがモブ達に誘拐されたようだ。

「今回の犯人は?」

「保険医だ!今日のおやつはマドレーヌなのに、フィナンシェをチラつかせられて………。早くセトを回収しないと、セトが食事を食べられくなるから一緒に迎えにいくぞ!!」

「仕方ないな」

どんなに好きでも甘いものは嗜好品。

食事が食べられないことになるわけにはいかないのだ。

だから、皆で保険室に向かうのだった。



この世界には、制作者が作ったシナリオ以外に事件は起きない。

けれど、平和だからこそ起きる事件というものも存在するものだ。

甘いものを与えれば幼子のように可愛くなるセトは、モブ達の母性的なものを刺激している。

だからこそ、こうして誘拐が起きるのだ。

放っておくとモブ達はセトに甘いものを与えたいだけ与えるので、セトがご飯を食べられなくなるという事態に陥る。

だから、早く回収しないといけない。

だが、セトは甘いものの前では満足するまで自力では離れないのだ。

無理矢理回収するには人数がいるのである。

だからグランは僕達を呼びにきた。



結局、セトはフィナンシェを腹五分目ぐらいまで食べたらしい。

マドレーヌは残念ながらお預けになったから、セトは泣いてしまった。

「マドレーヌ食べたい……ローレン、マドレーヌ食べたい………」

「……っ!………ダメ」

「ふえぇっ!!」

………夜ご飯よりもマドレーヌを食べたいとセトは言ったけれど、それは全員で却下したよ。



落ち込むセトを励ますために、僕はセトの尻を揉む。

頭を撫でるよりも、背中をさするよりも、何故か尻を揉む方が嬉しそうなのなんでなんだろうね。

そして一緒のベッドで寝たら、セトはマドレーヌへの未練を翌日に引きずることはなかった。

良きかな良きかな。
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