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13◆失敗が視せたもの

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俺とリューレンが番になって、俺の部屋はリューレンの部屋の真隣になった。

そこは番になった人のための部屋だったらしい。

番になったのだからと、眠る時はリューレンの部屋のベッドで一緒に寝るそうだ。

これは拒否権なしだとか………だって番だもの。

リューレンはいろいろ強引だけど、彼が俺を好きなことにはもう気づけている。

俺は別に鈍感ではないので。

俺も、リューレンのことが好きになっている。

愛されて、大切にされたら、愛してしまうものだよね。

もしも、リューレンにアマギという保護者側近がいなかったら、俺はリューレンの好きという気持ちには残念ながら気づけなかったかもしれない。

何故なら、リューレンは高確率で変態行為か暴走列車のようなアプローチをしてくるからだ。

………アマギがいなかったら、俺はリューレンのこと……俺を誘拐して監禁してくる変態野郎と思っていたと思う。

アマギ、ありがとう。



ある日、薬品開発部で新作のポーション作りに励んでいた真っ昼間に事件は起きた。

試作したポーションがどうやら失敗していたみたいで、俺の手元で爆発してしまったのだ。

「うわっ!」

想像では上手くいきそうだったのに、何がいけなかったのだろうか?

そう思っていると、何かが視えた。

それは玉座だった。

リューレンが座る玉座。

リューレンが……首を切られて死んでいる玉座………。

どう……して………?

「いやぁーーーっ!!」

「ジゼル君!?ジゼル君どうしたの!ジゼル君!!」

モリノが俺に呼びかけるけれど、返事をする余裕はない。

今視えたものは幻だったのだろうか?

幻にしてはあまりにも不吉なそれを、ただの幻に思うことはできそうになかった。

だから、俺は走り出したんだ。

不吉で、不安で、失うのが怖くて………。

そして、ふとマスターの言葉を思い出す。

『新しいポーションを作る時に、失敗してしまうことはよくある。けれど、極稀にとんでもないことが起きたりするんだよ』

『とんでもないこと?』

『僕は前に失敗して、大量スライムを召喚してしまって大変だったな。ポーション作りしてただけなのに、本当に不思議だよね』

『た、大変でしたね』

『いつかジゼルも失敗した時にとんでもないことが起きるかもね』

『マスター、不吉なことを言わないでください』

『ふふ、失敗を楽しむことも大事だよ!』

極稀にとんでもないことが起きる。

マスターが言っていたことだ。

まさか、まさか俺のせいでリューレンが死ぬ!?

そんな可能性を否定できなくて、俺は走る足を速めた。



俺は急いで玉座の間に向かうと、そこにはちゃんと生きているリューレンがいて、俺は安心から座り込んでしまった。

「ジゼル!?」

俺を心配して玉座から素早く俺に駆け寄るリューレン。

………その背後に、突然知らない男が現れたのだった。
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