上 下
11 / 11

11◆要視点

しおりを挟む
俺がダンジョン内で蒼介を尾行している時に、蒼介は謎の扉を開けて中に消えた。

チャンネルは不自然な形で切れてしまい、俺は焦って扉を開けようと走り寄る。

それは開かなくて、俺はこじ開けようと躍起になって扉に体当たりやら魔法攻撃やらとあの手この手をしていたんだ。

だが、急に扉は勝手に開いた。

まるで、入れと言われているようだった。

中に入ると、なんか打ちひしがれて蹲る守護者と困惑して立ち尽くす蒼介がいる。

「蒼介!」

「あ……要!」

「無事か!?」

「ちょっと前世思い出したけど無事だよ」

「いや、どゆこと!?」

聞いたはいいけど、実は俺もこの神殿をみてからたぶん蒼介と同じ前世思い出している。

同じといっても蒼介のいう深淵の姫じゃなくて、その恋人だった人間の勇者の前世だ。

毎日みる夢で、俺が殺す彼女が言う言葉には続きがあるのを俺は思い出した。

『貴方にならいいの。貴方だから、私はこの選択を選んだのよ。……きっと、またいつか会えるわ。その時は、どうか………』

その続きは、『また、愛し合いましょう』だ。



「………要、俺達前世恋人だったんだな」

「実は、小さい頃から蒼介が好きだった!付き合ってくれ!」

「今言う!?」

驚く蒼介。

だが、その顔は満更でもなさそうで………。

「俺も要のこと好きだよ。よろしくね」

「蒼介!」

カップルになってお互いに照れている俺達の隣りでは、未だに守護者達が打ちひしがれている。

「姫はあの忌々しい勇者を恨んでは……」

「いないよ?」

「ガーン!!」

「人間に復讐をしたいとは思っている……よね……?」

「いないよ」

「ガーン!!」

………可哀想なほどショックを受ける彼らに、もはや脅威は感じない。



それ以降、彼らはダンジョン内でテイムした魔物を預かる預かり屋さんを運営している。

もう自分達が求めていた深淵の姫は戻ってこないのだと、諦めざるを得なかったからだ。

何故預かり屋をすることになったかといえば、そういう求人があったからやってみようと思ったからだそうだ。

今は蒼介がダンジョンに来たら顔見せるだけで満足らしい。

………アイツら、毎回俺に威嚇してくるけどな。



俺は今、蒼介と一緒にダンチューバーをしている。

所謂、カップルチャンネルという形でね!







読んでくれてありがとうございました。

しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

ショタ魔王を保護した勇者

ミクリ21 (新)
BL
ショタ魔王を保護した勇者の話。

いろいろ疲れちゃった高校生の話

こじらせた処女
BL
父親が逮捕されて親が居なくなった高校生がとあるゲイカップルの養子に入るけれど、複雑な感情が渦巻いて、うまくできない話

失恋して崖から落ちたら、山の主の熊さんの嫁になった

無月陸兎
BL
ホタル祭で夜にホタルを見ながら友達に告白しようと企んでいた俺は、浮かれてムードの欠片もない山道で告白してフラれた。更には足を踏み外して崖から落ちてしまった。 そこで出会った山の主の熊さんと会い俺は熊さんの嫁になった──。 チョロくてちょっぴりおつむが弱い主人公が、ひたすら自分の旦那になった熊さん好き好きしてます。

ダンス練習中トイレを言い出せなかったアイドル

こじらせた処女
BL
 とある2人組アイドルグループの鮎(アユ)(16)には悩みがあった。それは、グループの中のリーダーである玖宮(クミヤ)(19)と2人きりになるとうまく話せないこと。 若干の尿意を抱えてレッスン室に入ってしまったアユは、開始20分で我慢が苦しくなってしまい…?

つぎはぎのよる

伊達きよ
BL
同窓会の次の日、俺が目覚めたのはラブホテルだった。なんで、まさか、誰と、どうして。焦って部屋から脱出しようと試みた俺の目の前に現れたのは、思いがけない人物だった……。 同窓会の夜と次の日の朝に起こった、アレやソレやコレなお話。

咳が苦しくておしっこが言えなかった同居人

こじらせた処女
BL
 過労が祟った菖(あやめ)は、風邪をひいてしまった。症状の中で咳が最もひどく、夜も寝苦しくて起きてしまうほど。 それなのに、元々がリモートワークだったこともあってか、休むことはせず、ベッドの上でパソコンを叩いていた。それに怒った同居人の楓(かえで)はその日一日有給を取り、菖を監視する。咳が止まらない菖にホットレモンを作ったり、背中をさすったりと献身的な世話のお陰で一度長い眠りにつくことができた。 しかし、1時間ほどで目を覚ましてしまう。それは水分をたくさんとったことによる尿意なのだが、咳のせいでなかなか言うことが出来ず、限界に近づいていき…?

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。 彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。 ……あ。 音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。 しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。 やばい、どうしよう。

平熱が低すぎて、風邪をひいても信じてもらえない男の子の話

こじらせた処女
BL
平熱が35℃前半だから、風邪を引いても37℃を超えなくていつも、サボりだと言われて心が折れてしまう話

処理中です...