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20◆犠牲になった私の親友(カルマ視点
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私の可愛い親友は、いつだって私のことを思ってくれていた。
そんな親友に密かな恋心を抱いていたけれど、私は神として恋をすることは許されなかった。
だから、この想いを親友が知ることはなかった。
魔王が魔物を操り凶暴化させて人々を襲った時、親友は私の御使いとして神子という存在になり、聖なる力で人々を救った。
絵本にも聖書にも書かれている話だ。
けれど……。
絵本にも聖書にも書かれていないこともある。
魔王を私と親友の二人で封印した。
何故討伐ではなく封印なのかと聞かれたら、魔王が強すぎて封印がやっとだったからとしか言えない。
魔王を魔王の領域に封印しようとしたら、魔王は激しく暴れた。
封印は私の力だけではすぐに解けそうなほど、魔王は私より強かったんだ。
「ダメだ……封印が上手くいかない!どうしたら……」
「……カルマ様、簡単ですよ。僕をお使いください」
「何を言っているんだ?そんなこと」
「カルマ様、僕は貴方様にこの命を、この魂を、全てを捧げているのです。カルマ様の助けになるのなら、僕はどうなっても構いません。どうか、迷わないでください」
穏やかな微笑みの親友は、自分を人柱にしろと言う。
……できるわけないと叫びたい。
けれど、言い出したら聞かない親友は否定の言葉を受け入れない。
愛する者を犠牲にして、神として魔王を封印して、世界を救う。
なんて残酷な平和だろうか……。
神という立場か憎くて憎くて堪らない。
こんなに胸が苦しいのに、親友は命を差し出す。
「カルマ様、僕の命を封印の鍵にした後は、僕の魂を細かく砕いて世界にばら撒いてください。魔王は僕の魂を喰らうと封印が解けるのですから、一箇所にない方が良いでしょう。念には念を入れるのですよ」
「……私にお前の魂を粉々にしろと言うのか。親友の…お前を……」
「……平和のためですよ。全てはカルマ様のために」
親友は、寂しそうに笑った。
絵本にも聖書にも、神子が人柱になったことは書かれていない。
砕かれ世界にばら撒かれた神子の魂の欠片は輝きと呼ばれ、輝きが何かは人々に知られていない。
輝きの混じった魂を魔王が喰らわないように見張っていた。
しかし魔王は、なんと相手を死に導きその魂を自分の領域に引っ張り込み、そして食べていた。
しかも、食べるなら美味しい方がいいと相手を絶望させて死に追いやっている。
絶望を美味と感じるとは……悪食だと思う。
……魔王は着実に輝きを喰らっていった。
全ての輝きを喰らわれたら封印が解けてしまう。
私も魔王の妨害などしていたが、気づけば輝きは残り一人になってしまった……。
その一人が喰らわれたら……。
あぁ、すまない……私は、お前がいないとこんなに不甲斐ないよ……。
犠牲になった親友のためにも、あの子……ヒジリを守らなくてはならない。
ちなみに、エスターとマリウスは前世でヒジリの恋人だった。
二人がヒジリをみつけた時もたまたまなんかじゃない。
三人は運命に引き寄せられたのだ。
だから、きっとあの二人ならヒジリを守ってくれるだろう。
今世でも惹かれ合っている三人ならば……。
私はもしものことを考えて、二人に加護を与えるのだった。
そんな親友に密かな恋心を抱いていたけれど、私は神として恋をすることは許されなかった。
だから、この想いを親友が知ることはなかった。
魔王が魔物を操り凶暴化させて人々を襲った時、親友は私の御使いとして神子という存在になり、聖なる力で人々を救った。
絵本にも聖書にも書かれている話だ。
けれど……。
絵本にも聖書にも書かれていないこともある。
魔王を私と親友の二人で封印した。
何故討伐ではなく封印なのかと聞かれたら、魔王が強すぎて封印がやっとだったからとしか言えない。
魔王を魔王の領域に封印しようとしたら、魔王は激しく暴れた。
封印は私の力だけではすぐに解けそうなほど、魔王は私より強かったんだ。
「ダメだ……封印が上手くいかない!どうしたら……」
「……カルマ様、簡単ですよ。僕をお使いください」
「何を言っているんだ?そんなこと」
「カルマ様、僕は貴方様にこの命を、この魂を、全てを捧げているのです。カルマ様の助けになるのなら、僕はどうなっても構いません。どうか、迷わないでください」
穏やかな微笑みの親友は、自分を人柱にしろと言う。
……できるわけないと叫びたい。
けれど、言い出したら聞かない親友は否定の言葉を受け入れない。
愛する者を犠牲にして、神として魔王を封印して、世界を救う。
なんて残酷な平和だろうか……。
神という立場か憎くて憎くて堪らない。
こんなに胸が苦しいのに、親友は命を差し出す。
「カルマ様、僕の命を封印の鍵にした後は、僕の魂を細かく砕いて世界にばら撒いてください。魔王は僕の魂を喰らうと封印が解けるのですから、一箇所にない方が良いでしょう。念には念を入れるのですよ」
「……私にお前の魂を粉々にしろと言うのか。親友の…お前を……」
「……平和のためですよ。全てはカルマ様のために」
親友は、寂しそうに笑った。
絵本にも聖書にも、神子が人柱になったことは書かれていない。
砕かれ世界にばら撒かれた神子の魂の欠片は輝きと呼ばれ、輝きが何かは人々に知られていない。
輝きの混じった魂を魔王が喰らわないように見張っていた。
しかし魔王は、なんと相手を死に導きその魂を自分の領域に引っ張り込み、そして食べていた。
しかも、食べるなら美味しい方がいいと相手を絶望させて死に追いやっている。
絶望を美味と感じるとは……悪食だと思う。
……魔王は着実に輝きを喰らっていった。
全ての輝きを喰らわれたら封印が解けてしまう。
私も魔王の妨害などしていたが、気づけば輝きは残り一人になってしまった……。
その一人が喰らわれたら……。
あぁ、すまない……私は、お前がいないとこんなに不甲斐ないよ……。
犠牲になった親友のためにも、あの子……ヒジリを守らなくてはならない。
ちなみに、エスターとマリウスは前世でヒジリの恋人だった。
二人がヒジリをみつけた時もたまたまなんかじゃない。
三人は運命に引き寄せられたのだ。
だから、きっとあの二人ならヒジリを守ってくれるだろう。
今世でも惹かれ合っている三人ならば……。
私はもしものことを考えて、二人に加護を与えるのだった。
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