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1◆たぶん異世界転移

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僕の名前は秋田あきたひじり、17歳の高校生だ。

……僕に生きる価値はない。

父さんからの酷い暴力や暴言の痛みに、僕の心は慣れてしまった。

もう涙すら枯れてしまった。

『生んだことが過ちだった』

僕が10歳の時に父さんと母さんが離婚する際、母さんは僕にそう言って家を出て行ってしまったんだ。

それから、父さんは僕を責めるのは当たり前の毎日を過ごすようになった。

外では笑顔の人望溢れる人だけど、家では僕に全てのストレスをぶつける。

だけど、それはあんまり人にみえない衣類の下とかで、顔とかは狙わない。

僕は黙って、全て僕が悪いのだと思って何をされても抵抗しない。

母さんの代わりに僕は、料理をして、掃除をして、洗濯をして……。

だけど、罵られて、殴られて、蹴られて……。

学校でいい成績をとるとベルトで背中を叩かれ、悪い成績をとると熱湯をかけられて……。

父さんからしたら、僕が何をしても怒りに変わり、何もしなくても怒りに変わるんだ。

「ゲホッゲホッ!」

あぁ、内蔵でもやられたのかな?

たくさん血を吐いて吐いて……その血溜まりをみて思ったんだ。

なんで僕、生きてるんだろうって……。

こんなに恨まれているのに、生きてる理由なんてないのに……。

僕は、死ぬべきだよね?

きっとそれが正しい行いだと、僕は本当に思ったんだ。



僕を心配する人なんていなかった。

助けてくれる人はいなかった。

皆、厄介事は御免だと知らんぷりして無視をする。

……だから、僕の考えを否定する人もいなかったんだ。

そして僕は、お風呂の浴槽に水を入れて、手首を深く切って、衣類を着たまま水に浸かった。

冷たい水の中で僕は頭まで水に入り、死ぬために意識を手放す。



深い深い眠りの底へ……。

水は赤く赤く愛に染まる。

おいでおいで、私の下に……。

沈め沈め闇の底へ……。

水は冷たい通り道。

おいでおいで、私の愛しい者よ。



誰かが唄う。

それは、何語かわからない唄だった。

あぁ、なんて綺麗な声だろう。

きっと、死ぬ間際の夢だったのかもしれない。



目を覚ますと、何故生きているのかわからなかった。

自殺に失敗したのかと思ったけれど、すぐに周りをみて違うと思った。

だって、そこは知らないテントの中だったからだ。……何故テント?

僕は暖かな毛布で包まれている。

テントの外からは、人の声が聞こえるんだけど……えっと、何語を喋っているのかわからない。

日本語ではないのは間違いないね。

まさか、これは最近流行りの異世界転生だったりして……。

そう思ったけど、腕をみて違うかもと思う。

だって、包帯巻かれていたから。

そこは僕が切ったところだから、もしここが異世界なら転生じゃなくて転移かもしれない。

とりあえず、眠いのでもう少し眠ろう。
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