上 下
7 / 7

7◆みていたアーテル

しおりを挟む
僕は、知っている。

みていたから、知っている。

でも、何も言わない。

だってお父様は、狂っているから………。

僕が知っていると知ったら、きっと僕はお母様と同じになる。



好奇心のあった幼い頃の僕は、あの日屋敷に地下室があることに気づいた。

その扉に鍵はかかってなかったから、僕は扉を開いてこっそりと入ったんだ。

でも、後からお父様が地下室にやってきたんだよ。

みつかったら怒られると思った僕は、みつからないように隠れていた。

お父様が部屋から出ていくと、今度はお母様が地下室にやってきた。

お母様は地下室を調べている様子……きっと僕を探しているのだろう。

でも、怒られたくないから僕は口を抑えて息を潜めていた。

そして………。

何故か硬直するお母様と、お母様の背後に忍び寄るお父様。

いつもの優しいお父様。

………だけど、お父様はナイフを持っていた。



お父様が……微笑んだままそれをした。

お母様の口を片手で塞いで、ナイフでお母様の胸を……ザクッ…ザクッ…って………。

お母様から赤いモノが飛び散り、お父様を赤く染めていく。

そして、お母様が、まったく動かなくなってしまった。

でも、お父様はまだ何かをするようだ。

お父様が取り出したのは、木を切る時のノコギリという刃物。

それを……それを………。

ああ…ああ……お母様………。



お母様は、バラバラになってしまった。

地下室の床の板が外される。

下は土で、穴が空いているらしい。

お父様が、お母様だったモノをポイポイ入れて、地下室内にあった土で固めて、板で蓋をしていた。

掃除をしたあとは、最初はなかった敷物をしく。

そしてお父様は、何かの瓶に愛おしそうにキスをしていた。



僕はみていた。

ずっとみていた。

だから……僕は知っている。

お母様は、二度と帰ってこない。

なぜなら、お母様は生きていないのだから………。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

女性画家と秘密のモデル

矢木羽研
大衆娯楽
女性画家と女性ヌードモデルによる連作です。真面目に絵を書く話で、百合要素はありません(登場人物は全員異性愛者です)。 全3話完結。物語自体は継続の余地があるので「第一部完」としておきます。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ランダムチャット

ぷるぷぺ
ホラー
彼女いない歴=年齢の俺が(高校生2年生)出会いを求めてランダムチャットをする。 とても気が合う女の子と仲良くなりリアルで出会う事になった、その女の子はアニメに出てくるヒロインなみに可愛くすぐさま告白し付き合う事になったのだか、、、この時の俺は彼女がどれほど恐ろしいのか知る由もなかった。 恋愛×サイコホラー×エロの内容を入れた作品です!!

僕の尊敬する人へ

潮海晴
ホラー
主人公の僕が尊敬してやまない人。それは、クラスメイトの灰谷雄斗である。クラスメイト、親、教師、全ての人間から絶大な人気を誇っている人気者だった。そんな、彼を尊敬してやまない僕の周りで次々と事件が起こる。僕と彼だけの秘密を描いた物語。

ラ・プラスの島

輪島ライ
ホラー
恋愛シミュレーションゲーム「ラ・プラス」最新作の海外展開のためアメリカに向かっていたゲーム制作者は、飛行機事故により海上を漂流することになる。通りがかった漁船に救われ、漁民たちが住む島へと向かった彼が見たものとは…… ※この作品は「小説家になろう」「アルファポリス」「カクヨム」「エブリスタ」に投稿しています。

リーレット1

くま
ホラー
小説初めて書きます!よろしくお願いします❗️

ドロドロ

おの
ホラー
自分の思う狂気を、思いつくがままに書きました。

社会的適応

夢=無王吽
ホラー
ハムラ族に輪姦、拷問され、 牢穴の底に幽閉された俺は、 苦痛と絶望のなか、 闇の奥に一筋の希望を見つける。 その男は風前の灯火にも似た、 消えかけの希望の糸だった。 俺はそいつに縋り、 ハムラの戦士たちに、 抵抗することを決めた。 俺は戦士ではないが、 戦力差は《戦士の槍》が埋める。 最期の瞬間まで、 俺は絶対に諦めない。 深い牢穴の冥暗のなか、 裸身の男二人は死の嵐に対し、 捨身で、折れた牙を剥く。

処理中です...