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39◆白百合には毒がある【フラメル視点

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俺は暗い路地裏を歩いていた。

「おい」

物陰から俺に話しかけてきた黒いローブの男に俺は振り向いてやる。

どうやら、相手は俺の同業者のようだな。

「お前、依頼に失敗したんだって?珍しいな」

「口もきいたことない相手を嘲笑いにきたのか?お前暇なんだな」

俺は相手を見下すように吐き捨てた。

だが、相手は楽しそうに笑う。

「いやいや、嘲笑う気なんてねぇよ。ただ、俺が今回の依頼に協力してやろうと思ったんだ」

「協力?」

「あぁ、その代わり……俺にお前が抱かれるのが条件……ぐぁっ!!」

ガシッ!ガンッ!!

ふざけた言葉が聞こえてきたから、思わず相手の首を掴んで壁に押し付けてしまった俺はきっと悪くないだろう。

苦しそうな相手に、俺は凍えそうな冷たい声で囁いた。

「お前は俺の通り名を知っているか?白百合の毒って言うんだ。俺は綺麗だろう?まるで白百合のように。でもな、俺の白百合には毒がある。思わず触れたら、死んでしまっても仕方ない。だからな、俺が言いたいこと、わかるか?……お前は死ぬってことだ」

空いている方の手で毒付きナイフを取り出し、相手の胸に刺して心臓を貫く。

返り血を浴びないように結界を張ってからナイフを抜いて、浄化魔法でナイフと身体の汚れを綺麗にした。

毒は即死するタイプのものだから、相手はもう死んでいる。

俺は何事もなかったように、また歩き出したのだった。



暗殺者というのは裏の顔。

表の顔は家庭教師だ。

裏と表で口調も一人称も性格もガラッと変えている。

もはや二重人格と突っ込めるレベルだが、プロの暗殺者なんだから使い分けるのなんて当たり前だ。

穏やかな性格を演じているが、素の性格は暗殺者の時のクールな方だ。

暗殺者の時は顔隠してるけど、同業者だとふとした時なんかに顔をみられることはある。

さっきのアホもどっかで俺の顔みたんだな。

殺しを仕事にしてるんだから、怒らせたら殺されるって思わなかったのか?

あぁ、だからアホなのか……。



「フラメル先生、よろしくお願いします」

「はい。それでは、まずは歴史から……」

昨日、ラグナロクとデートを楽しんだアデルに優しく微笑み、今日の授業を始める。

まさか、俺が自分の命を狙っているなんて、夢にも思わないだろうな。

俺はアデルの笑顔に思うことはない。

俺の心は凍ってるからな。

殺しに対する罪悪感なんてものは、とうの昔に捨て去った。

だから、真面目に授業を受けるアデルを殺すことを俺は躊躇わない。

まだ依頼には期限が残っているから、必ず暗殺を成功させてやる。
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