夫婦喧嘩したのでダンジョンで生活してみたら思いの外快適だった

ミクリ21 (新)

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34◆幽霊ではないそうです

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「誠に申し訳ありませんでした!」

目の前で土下座で頭を下げるミステリアスな雰囲気のイケメンは、闇の精霊さんらしいです。

良かった……幽霊ではなかったのですね……でもあれは怖かったですよ。

ノアールさんという名前らしいですが、私の神子としての両親…つまり原初の神様達に私の見守りを命じられたみたいです。

でも私を見守り初日に気絶させてしまったので、謝罪をして正体を明かしたようですね。

「そうでしたか……。気絶してしまってごめんなさい」

「いえ、僕達闇の精霊は闇に潜むので、よく幽霊とかストーカーとか変質者とかに勘違いされるから気絶されるのも慣れてます」

「あらまぁ……」

土下座をやめても正座のままなノアールさんにあわせて私も床に正座して、とりあえずノアールさんに机の上にあったお茶とお菓子を振る舞いました。

黒い星型のクッキーみたいなお菓子なんですが、食べると香ばしい香りに品の良い甘みが堪らなく紅茶にも相性がいいみたいですね。

でも食べたことない味だから、何味かと聞かれたら困ってしまいますが、なんとなくさつまいもっぽい気はしますね。

「これ、何味なのかしら……」

「これはグルコ味ですよ」

「グルコ?とはなんでしょう?聞いたことがないのですが……」

「黒いさつまいもみたいな野菜です。生でも香ばし香りが一番の特徴ですね」

さつまいもって紫のイメージがありましたが、世界が変わると色も名前も変わるのですね。



一通りノアールさんとお茶を楽しんだ後は、ノアールさんは部屋の闇に潜むために消えました。

ラグには何故か黙っていてほしいと言われたのですが、何故なのでしょう。

ノアールさんはちょっと震えながら小声で「僕絶対抹殺されてしまう」と言っていたのですが、ラグはそんなことしませんのに……。

まぁ、黙っていてほしいのなら私も口が滑らないように気をつけますよ。

しかし……。

夕食の時間にヘロヘロになったラグが食堂に誘いにきたのですが、部屋に入るなり鼻をクンクンさせて……。

「知らない男の匂いがする!?さては俺様がいない隙にアデルを拐かそうとした野郎がいるのか!」

鼻をクンクンクンクンとしまくり、1分もしない内にノアールさんはみつかり闇から引っ張り出されてしまいました。

そしてノアールさんは、本日二度目になる土下座を命乞い込みでするという展開になってしまったのです。

ラグの誤解が解けるまで、ノアールさんはいつ殺されるかと冷や汗が止まらなかったみたいです。

ノアールさんには背中に精霊の羽があるのですが……それが恐怖で萎々になってました。



ちなみに、誤解はちゃんと解けたのでノアールさんは無事に闇に潜むことを許されたのでした。
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