夫婦喧嘩したのでダンジョンで生活してみたら思いの外快適だった

33◆見守り……？【神と精霊視点

魔を司る女神メリダレッドと武を司る神ジェノドール、二人は仲睦まじい夫婦神でアデルのもう一組の両親である。

そんな二人はアデルが今度こそ幸せになるように、アデルを見守るよう闇の精霊ノアールに命じた。

アデルの元夫達は未だに雷雲に困っているようだが、反省の色なしなので仕方ない。

「メリダ、アデルは今度こそ幸せになるだろうか？」

「ジェノ、ノアールには随時報告してもらいましょう」

「ノアールがストーカーだと思われないといいが……」

「それは……。たぶん、大丈夫よ。きっと、おそらく……」

闇の精霊は闇に潜むのが得意なのだが、そのせいかよく人間に驚かれて幽霊とかストーカーとか変質者とかに勘違いをされてしまう。

だから、ノアールがアデルに勘違いされない保証は残念ながらないのだ。

だが仮に勘違いされても、ノアールはアデルの味方なので危害は加えない。

自称味方で闇に潜んで見守る知らない人……ストーカーの条件が揃ってしまっている気がするが、メリダレッドとジェノドールはそっと目を逸らすことにした。



ノアールはアデルの部屋の闇に潜み、アデルを見守っている。

その存在にアデルは気づいていないが、アデルの友達ジュールはノアールをじっとみつめていた。

(まさか、奴は僕に気づいているのか！？)

ノアールはちょっと焦るが、自分の力を信じて闇の中で身を硬くしていた。

「ジュール、どうしたんですか？」

「にゃー」

「あそこに何かあるんですか？」

(！？)

アデルが不思議そうにノアールに近寄り、そしてノアールが潜む闇の真正面からそこを覗いて……目と目が合ってしまった。

ちなみに、本棚の隙間にあった闇に潜んでいたのだが、そんなところで目が合うなんてホラー体験をしてしまったアデルは……。

「っ！？……ふぅ」

パタリ。

「にゃうっ！！」

ズシリ！！

ホラー耐性がなかったアデルは、驚きすぎて倒れてしまう。

床に激突する寸前にジュールが滑り込んでクッション代わりになったので、アデルはたぶん無傷である。

ナイスだジュール！



そしてノアールは……。

ちょっと上司に呼び出しを受けてしこたま怒られた。

だから次からは、前もって正体を明かしておこうとノアールは思うのだった。