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19◆告白と魔王の殺る気

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突然ですが、告白されました。

そんな…ヤラせてだなんてハレンチな口説き文句があることを初めて私は知りました。

世界は広いのですね。

そして私は、その告白が嫌ではありませんでした。

ラグナー様には一度も求められなかった私の身体を、ラグは求めてくれるのですね。

……もしも、今ラグナー様に求められたとしたらと少し想像すると、嫌悪感で吐きそうになりました。

ラグナー様と義実家が、汚い花火になって爆発四散したらいいなとすら思ってしまいました。

私がこんなことを考えてしまうだなんて、あの義実家で奴隷のような生活をしていた頃は想像もできませんでした。

私、少しだけ強くなれたのでしょうか……。



それはともかく。

私もラグが好きです。

こんなに私を気にかけてくれて、忙しいでしょうにダンジョンで暮らす私に会いに来てくれる。

傷ついていた私の心は、確かにラグに癒されていました。

……でも。

私は、ラグの告白が嬉しくても断らなくてはいけません。

だって、私は……離縁していないのですから。

うっすらと微笑む私は、ラグのフードでみえない顔をみつめました。

「ラグ、ありがとうございます。でも、ごめんなさい」

「アデル!?ち、違うんだ!身体だけが目当てとかそんなんじゃないんだ!」

「ヤラせて……だなんて、初めて言われました。嬉しかったですよ」

「えっ!嬉しかったのか!?」

慌てるラグも可愛いですね。

ラグの告白を受け入れられたら、きっともっと可愛いのでしょうね。

なのに……ごめんなさい。

今から、私はラグを傷つけるとわかっていても、言わなくてはいけません。

「ラグ、私も……ラグを好きです」

「好き!?あの、あの、じゃあ、俺様と結婚してくれ!愛してるんだ!」

「……ごめんなさい。それは、できないんです」

「……なんで、だ?」



きっと、今日がラグと会える最後の日になるのでしょう。

失恋相手の私に、もう会いたくはないでしょうから。

……大丈夫です。

私は、傷つくことには慣れていますから、また一人ぼっちになっても大丈夫です。

あぁ、ジュールがいるから一人ぼっちというのは少し違いますね。

だから、私は大丈夫です。

……私は私に、そう言い聞かせました。



「ラグ、前に話しましたね。私は逃げだしたのだと」

「あぁ、聞いた」

「私は、夫から、義実家から逃げだしたのです」

「……え」

「既婚者だから、受け入れることができないんです。……夫と離縁はしたいのですが、離縁すれば実家の家族を心配させてしまいます」

ラグにもっと詳しく聞かれて、聞かれた全てを私は答えました。



そして……。



「許せねぇな……」

「……ごめんなさい」

「許せねぇよ……そのクソ共がよぉ……!俺様の初恋相手に何してくれてんだ!アデル、ちょっと俺様害虫駆除してくるから待ってろよ」

「害虫駆除……?え、あの、ど…どちらに……?」

「アデルの元夫のところ」

「まだ離縁してないので元では……。え、ラグその角は!?」

フードをバサリと脱ぐと、ラグの頭に角がありました。

「俺様、実は魔族の魔王なんだ。アデル、元夫と義家族共の首持ってくるからな。魔王の恐ろしさを人間共にわからせてやるぜ!」

「魔族!?魔王!?首!?」

「じゃ、行ってくる」

「待ってください!不穏過ぎます!!」

走り去るラグ。

しかし、このままでは大変なことになる予感しかしません。

なので私は追いかけることにしました。

ダンジョンから出るのは、正直不安しかありません。

けれど、ラグが手を汚すのを黙ってみていることなどできないのです。



ジュールが当たり前のような顔でついてきましたが、友達でも魔物なので冒険者に攻撃されるかもしれません。

なので、お留守番をさせるために一旦止まって説得してから、私は再び走り出すのでした。
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