19 / 33
19◆告白と魔王の殺る気
しおりを挟む
突然ですが、告白されました。
そんな…ヤラせてだなんてハレンチな口説き文句があることを初めて私は知りました。
世界は広いのですね。
そして私は、その告白が嫌ではありませんでした。
ラグナー様には一度も求められなかった私の身体を、ラグは求めてくれるのですね。
……もしも、今ラグナー様に求められたとしたらと少し想像すると、嫌悪感で吐きそうになりました。
ラグナー様と義実家が、汚い花火になって爆発四散したらいいなとすら思ってしまいました。
私がこんなことを考えてしまうだなんて、あの義実家で奴隷のような生活をしていた頃は想像もできませんでした。
私、少しだけ強くなれたのでしょうか……。
それはともかく。
私もラグが好きです。
こんなに私を気にかけてくれて、忙しいでしょうにダンジョンで暮らす私に会いに来てくれる。
傷ついていた私の心は、確かにラグに癒されていました。
……でも。
私は、ラグの告白が嬉しくても断らなくてはいけません。
だって、私は……離縁していないのですから。
うっすらと微笑む私は、ラグのフードでみえない顔をみつめました。
「ラグ、ありがとうございます。でも、ごめんなさい」
「アデル!?ち、違うんだ!身体だけが目当てとかそんなんじゃないんだ!」
「ヤラせて……だなんて、初めて言われました。嬉しかったですよ」
「えっ!嬉しかったのか!?」
慌てるラグも可愛いですね。
ラグの告白を受け入れられたら、きっともっと可愛いのでしょうね。
なのに……ごめんなさい。
今から、私はラグを傷つけるとわかっていても、言わなくてはいけません。
「ラグ、私も……ラグを好きです」
「好き!?あの、あの、じゃあ、俺様と結婚してくれ!愛してるんだ!」
「……ごめんなさい。それは、できないんです」
「……なんで、だ?」
きっと、今日がラグと会える最後の日になるのでしょう。
失恋相手の私に、もう会いたくはないでしょうから。
……大丈夫です。
私は、傷つくことには慣れていますから、また一人ぼっちになっても大丈夫です。
あぁ、ジュールがいるから一人ぼっちというのは少し違いますね。
だから、私は大丈夫です。
……私は私に、そう言い聞かせました。
「ラグ、前に話しましたね。私は逃げだしたのだと」
「あぁ、聞いた」
「私は、夫から、義実家から逃げだしたのです」
「……え」
「既婚者だから、受け入れることができないんです。……夫と離縁はしたいのですが、離縁すれば実家の家族を心配させてしまいます」
ラグにもっと詳しく聞かれて、聞かれた全てを私は答えました。
そして……。
「許せねぇな……」
「……ごめんなさい」
「許せねぇよ……そのクソ共がよぉ……!俺様の初恋相手に何してくれてんだ!アデル、ちょっと俺様害虫駆除してくるから待ってろよ」
「害虫駆除……?え、あの、ど…どちらに……?」
「アデルの元夫のところ」
「まだ離縁してないので元では……。え、ラグその角は!?」
フードをバサリと脱ぐと、ラグの頭に角がありました。
「俺様、実は魔族の魔王なんだ。アデル、元夫と義家族共の首持ってくるからな。魔王の恐ろしさを人間共にわからせてやるぜ!」
「魔族!?魔王!?首!?」
「じゃ、行ってくる」
「待ってください!不穏過ぎます!!」
走り去るラグ。
しかし、このままでは大変なことになる予感しかしません。
なので私は追いかけることにしました。
ダンジョンから出るのは、正直不安しかありません。
けれど、ラグが手を汚すのを黙ってみていることなどできないのです。
ジュールが当たり前のような顔でついてきましたが、友達でも魔物なので冒険者に攻撃されるかもしれません。
なので、お留守番をさせるために一旦止まって説得してから、私は再び走り出すのでした。
そんな…ヤラせてだなんてハレンチな口説き文句があることを初めて私は知りました。
世界は広いのですね。
そして私は、その告白が嫌ではありませんでした。
ラグナー様には一度も求められなかった私の身体を、ラグは求めてくれるのですね。
……もしも、今ラグナー様に求められたとしたらと少し想像すると、嫌悪感で吐きそうになりました。
ラグナー様と義実家が、汚い花火になって爆発四散したらいいなとすら思ってしまいました。
私がこんなことを考えてしまうだなんて、あの義実家で奴隷のような生活をしていた頃は想像もできませんでした。
私、少しだけ強くなれたのでしょうか……。
それはともかく。
私もラグが好きです。
こんなに私を気にかけてくれて、忙しいでしょうにダンジョンで暮らす私に会いに来てくれる。
傷ついていた私の心は、確かにラグに癒されていました。
……でも。
私は、ラグの告白が嬉しくても断らなくてはいけません。
だって、私は……離縁していないのですから。
うっすらと微笑む私は、ラグのフードでみえない顔をみつめました。
「ラグ、ありがとうございます。でも、ごめんなさい」
「アデル!?ち、違うんだ!身体だけが目当てとかそんなんじゃないんだ!」
「ヤラせて……だなんて、初めて言われました。嬉しかったですよ」
「えっ!嬉しかったのか!?」
慌てるラグも可愛いですね。
ラグの告白を受け入れられたら、きっともっと可愛いのでしょうね。
なのに……ごめんなさい。
今から、私はラグを傷つけるとわかっていても、言わなくてはいけません。
「ラグ、私も……ラグを好きです」
「好き!?あの、あの、じゃあ、俺様と結婚してくれ!愛してるんだ!」
「……ごめんなさい。それは、できないんです」
「……なんで、だ?」
きっと、今日がラグと会える最後の日になるのでしょう。
失恋相手の私に、もう会いたくはないでしょうから。
……大丈夫です。
私は、傷つくことには慣れていますから、また一人ぼっちになっても大丈夫です。
あぁ、ジュールがいるから一人ぼっちというのは少し違いますね。
だから、私は大丈夫です。
……私は私に、そう言い聞かせました。
「ラグ、前に話しましたね。私は逃げだしたのだと」
「あぁ、聞いた」
「私は、夫から、義実家から逃げだしたのです」
「……え」
「既婚者だから、受け入れることができないんです。……夫と離縁はしたいのですが、離縁すれば実家の家族を心配させてしまいます」
ラグにもっと詳しく聞かれて、聞かれた全てを私は答えました。
そして……。
「許せねぇな……」
「……ごめんなさい」
「許せねぇよ……そのクソ共がよぉ……!俺様の初恋相手に何してくれてんだ!アデル、ちょっと俺様害虫駆除してくるから待ってろよ」
「害虫駆除……?え、あの、ど…どちらに……?」
「アデルの元夫のところ」
「まだ離縁してないので元では……。え、ラグその角は!?」
フードをバサリと脱ぐと、ラグの頭に角がありました。
「俺様、実は魔族の魔王なんだ。アデル、元夫と義家族共の首持ってくるからな。魔王の恐ろしさを人間共にわからせてやるぜ!」
「魔族!?魔王!?首!?」
「じゃ、行ってくる」
「待ってください!不穏過ぎます!!」
走り去るラグ。
しかし、このままでは大変なことになる予感しかしません。
なので私は追いかけることにしました。
ダンジョンから出るのは、正直不安しかありません。
けれど、ラグが手を汚すのを黙ってみていることなどできないのです。
ジュールが当たり前のような顔でついてきましたが、友達でも魔物なので冒険者に攻撃されるかもしれません。
なので、お留守番をさせるために一旦止まって説得してから、私は再び走り出すのでした。
132
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
陛下の前で婚約破棄!………でも実は……(笑)
ミクリ21
BL
陛下を祝う誕生パーティーにて。
僕の婚約者のセレンが、僕に婚約破棄だと言い出した。
隣には、婚約者の僕ではなく元平民少女のアイルがいる。
僕を断罪するセレンに、僕は涙を流す。
でも、実はこれには訳がある。
知らないのは、アイルだけ………。
さぁ、楽しい楽しい劇の始まりさ〜♪
超絶美形な俺がBLゲームに転生した件
抹茶ごはん
BL
同性婚が当たり前に認められている世界観のBLゲーム、『白い薔薇は愛の象徴となり得るか』略して白薔薇の攻略対象キャラである第二王子、その婚約者でありゲームでは名前も出てこないモブキャラだったミレクシア・サンダルフォンに生まれ変わった美麗は憤怒した。
何故なら第二王子は婚約者がいながらゲームの主人公にひとめぼれし、第二王子ルートだろうが他のルートだろうが勝手に婚約破棄、ゲームの主人公にアピールしまくる恋愛モンスターになるのだ。…俺はこんなに美形なのに!!
別に第二王子のことなんて好きでもなんでもないけれど、美形ゆえにプライドが高く婚約破棄を受け入れられない本作主人公が奮闘する話。
この作品はフィクションです。実際のあらゆるものと関係ありません。
炊き出しをしていただけなのに、大公閣下に溺愛されています
ぽんちゃん
BL
男爵家出身のレーヴェは、婚約者と共に魔物討伐に駆り出されていた。
婚約者のディルクは小隊長となり、同年代の者たちを統率。
元子爵令嬢で幼馴染のエリンは、『医療班の女神』と呼ばれるようになる。
だが、一方のレーヴェは、荒くれ者の集まる炊事班で、いつまでも下っ端の炊事兵のままだった。
先輩たちにしごかれる毎日だが、それでも魔物と戦う騎士たちのために、懸命に鍋を振っていた。
だがその間に、ディルクとエリンは深い関係になっていた――。
ディルクとエリンだけでなく、友人だと思っていたディルクの隊の者たちの裏切りに傷ついたレーヴェは、炊事兵の仕事を放棄し、逃げ出していた。
(……僕ひとりいなくなったところで、誰も困らないよね)
家族に迷惑をかけないためにも、国を出ようとしたレーヴェ。
だが、魔物の被害に遭い、家と仕事を失った人々を放ってはおけず、レーヴェは炊き出しをすることにした。
そこへ、レーヴェを追いかけてきた者がいた。
『な、なんでわざわざ総大将がっ!?』
同性婚が可能な世界です。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
勘違いの婚約破棄ってあるんだな・・・
相沢京
BL
男性しかいない異世界で、伯爵令息のロイドは婚約者がいながら真実の愛を見つける。そして間もなく婚約破棄を宣言するが・・・
「婚約破棄…ですか?というか、あなた誰ですか?」
「…は?」
ありがちな話ですが、興味があればよろしくお願いします。
俺のこと、冷遇してるんだから離婚してくれますよね?〜王妃は国王の隠れた溺愛に気付いてない〜
明太子
BL
伯爵令息のエスメラルダは幼い頃から恋心を抱いていたレオンスタリア王国の国王であるキースと結婚し、王妃となった。
しかし、当のキースからは冷遇され、1人寂しく別居生活を送っている。
それでもキースへの想いを捨てきれないエスメラルダ。
だが、その思いも虚しく、エスメラルダはキースが別の令嬢を新しい妃を迎えようとしている場面に遭遇してしまう。
流石に心が折れてしまったエスメラルダは離婚を決意するが…?
エスメラルダの一途な初恋はキースに届くのか?
そして、キースの本当の気持ちは?
分かりづらい伏線とそこそこのどんでん返しありな喜怒哀楽激しめ王妃のシリアス?コメディ?こじらせ初恋BLです!
※R指定は保険です。
俺の婚約者は、頭の中がお花畑
ぽんちゃん
BL
完璧を目指すエレンには、のほほんとした子犬のような婚約者のオリバーがいた。十三年間オリバーの尻拭いをしてきたエレンだったが、オリバーは平民の子に恋をする。婚約破棄をして欲しいとお願いされて、快諾したエレンだったが……
「頼む、一緒に父上を説得してくれないか?」
頭の中がお花畑の婚約者と、浮気相手である平民の少年との結婚を認めてもらう為に、なぜかエレンがオリバーの父親を説得することになる。
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる