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9◆親切な人に心配されました
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私は、ドラゴンのお肉でステーキを作りたいと思います。
お肉料理二連続ですが、野菜などがないので仕方ないでしょう。
残飯だった頃はむしろお肉なんて食べられなかったので嬉しいですね。
……嬉しいけれど、野菜がいつかみつかることは願ってます。
さて、まずはお肉を切りましょうとまな板にお肉を乗せます。
このまな板はとても大きいので、大きいドラゴンのお肉がしっかり乗るんですよ。
お肉を包丁で切ってみると、スパンッ!と有り得ない切れ味でお肉が綺麗に切れました。
まぁ……まるで、ゼリーでも切ったみたい……。
私のような料理素人が失敗なく切れるとは、私はもしかしたらとんでもないものを手に入れたのかもしれません。
それはともかく、切れたお肉にスパイシーな実を刷り込みましょう。
この実には、塩コショウの代わりになってくれると期待しています。
そして私は、実を袋から取り出したのです。
「そこのお前、ちょっと待てーーーっ!!」
「!?」
こちらに猛スピードで走り寄る人物は、おそらく私に向かって叫んでいるのでしょう。
まさか、追手でしょうか?
私は、連れ戻されるかもしれない恐怖に震えて、思わず身構えてしまいました。
しかし、そんな私に声からして男性だろうその人は叫びます。
「その実を食うな!麻痺するぞ!」
「……麻痺?」
スパイシーな匂いの可愛らしい実をじっとみて、動けなくなってしまったら抵抗できなくなると思い、私は大人しく食べずに彼がこちらに来るのを待ちました。
すぐに目の前にやってきた彼は、全身黒いローブ姿でフードを目深に被っていてちょっと怪しい……いえ、親切に麻痺する実だと教えてくれたのなら、そんな親切な方を怪しいなどと言ってはいけませんよね。……本当に麻痺する実なのだとしたら、ですが。
「食ってないな!?早まるなよ!まだ若いのに死に急ぐな!悩んでるなら俺様が悩み聞いてやるから!」
「……」
ものすごく必死に心配されてます。
たぶん私と面識ないと思うのに、嘘を言っているとは思えないレベルで心配されています。
少しでも疑った私の心がシュンと罪悪感を感じてしまうほど、その声には優しさがありました。
……いつぶりでしょう。
最後に人の優しさに触れたのは……。
切なくて、思わず流れた涙に彼は慌てふためいてしまいました。
「んなーっ!?どっか怪我したのか?ん、料理中ってことは空腹なのか。そもそも、なんでこの実を食おうとしたんだ?」
彼は、私の涙をハンカチで優しく拭いて、理由を聞いたので私は塩コショウ代わりに刷り込みをしようとしたと語りました。
「……もしかして、調味料持ってないのか?」
「私、身一つでダンジョンに入ったので、現地調達するしかなくて……」
「身一つ!?死ぬ気か!!ってか、なんでそんなことを」
「……とある理由で、逃げているのです。生きるか死ぬかは、運まかせでしたね」
「……訳ありか。流石に調味料は今持ってない。と、とりあえず今はこれ食べて待ってろ。俺様はお菓子なら普段から持ち歩いてるからな。いいか、俺様が戻るまでここで大人しく待ってろよ!」
「ま、まさか、私を連れ戻すのですか!?」
「いや、事情は知らねぇが、よっぽどのことがあったんだろ。俺様をそんなことする鬼畜野郎だと思うな。……ちょっと調味料持ってくるだけだ」
そう言って彼は、素早く私にマフィンを2個渡して走り去りました。
遠慮の言葉もお礼の言葉も言えないぐらいの早足でしたね。
お肉料理二連続ですが、野菜などがないので仕方ないでしょう。
残飯だった頃はむしろお肉なんて食べられなかったので嬉しいですね。
……嬉しいけれど、野菜がいつかみつかることは願ってます。
さて、まずはお肉を切りましょうとまな板にお肉を乗せます。
このまな板はとても大きいので、大きいドラゴンのお肉がしっかり乗るんですよ。
お肉を包丁で切ってみると、スパンッ!と有り得ない切れ味でお肉が綺麗に切れました。
まぁ……まるで、ゼリーでも切ったみたい……。
私のような料理素人が失敗なく切れるとは、私はもしかしたらとんでもないものを手に入れたのかもしれません。
それはともかく、切れたお肉にスパイシーな実を刷り込みましょう。
この実には、塩コショウの代わりになってくれると期待しています。
そして私は、実を袋から取り出したのです。
「そこのお前、ちょっと待てーーーっ!!」
「!?」
こちらに猛スピードで走り寄る人物は、おそらく私に向かって叫んでいるのでしょう。
まさか、追手でしょうか?
私は、連れ戻されるかもしれない恐怖に震えて、思わず身構えてしまいました。
しかし、そんな私に声からして男性だろうその人は叫びます。
「その実を食うな!麻痺するぞ!」
「……麻痺?」
スパイシーな匂いの可愛らしい実をじっとみて、動けなくなってしまったら抵抗できなくなると思い、私は大人しく食べずに彼がこちらに来るのを待ちました。
すぐに目の前にやってきた彼は、全身黒いローブ姿でフードを目深に被っていてちょっと怪しい……いえ、親切に麻痺する実だと教えてくれたのなら、そんな親切な方を怪しいなどと言ってはいけませんよね。……本当に麻痺する実なのだとしたら、ですが。
「食ってないな!?早まるなよ!まだ若いのに死に急ぐな!悩んでるなら俺様が悩み聞いてやるから!」
「……」
ものすごく必死に心配されてます。
たぶん私と面識ないと思うのに、嘘を言っているとは思えないレベルで心配されています。
少しでも疑った私の心がシュンと罪悪感を感じてしまうほど、その声には優しさがありました。
……いつぶりでしょう。
最後に人の優しさに触れたのは……。
切なくて、思わず流れた涙に彼は慌てふためいてしまいました。
「んなーっ!?どっか怪我したのか?ん、料理中ってことは空腹なのか。そもそも、なんでこの実を食おうとしたんだ?」
彼は、私の涙をハンカチで優しく拭いて、理由を聞いたので私は塩コショウ代わりに刷り込みをしようとしたと語りました。
「……もしかして、調味料持ってないのか?」
「私、身一つでダンジョンに入ったので、現地調達するしかなくて……」
「身一つ!?死ぬ気か!!ってか、なんでそんなことを」
「……とある理由で、逃げているのです。生きるか死ぬかは、運まかせでしたね」
「……訳ありか。流石に調味料は今持ってない。と、とりあえず今はこれ食べて待ってろ。俺様はお菓子なら普段から持ち歩いてるからな。いいか、俺様が戻るまでここで大人しく待ってろよ!」
「ま、まさか、私を連れ戻すのですか!?」
「いや、事情は知らねぇが、よっぽどのことがあったんだろ。俺様をそんなことする鬼畜野郎だと思うな。……ちょっと調味料持ってくるだけだ」
そう言って彼は、素早く私にマフィンを2個渡して走り去りました。
遠慮の言葉もお礼の言葉も言えないぐらいの早足でしたね。
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