夫婦喧嘩したのでダンジョンで生活してみたら思いの外快適だった

5◆いなくなった妻という名の奴隷【ラグナー視点

アデルに逃げられた。

ただ大人しく言う事をきくサンドバッグが、まさかの反撃をしてきたのだ。

アデルのような無能を嫁にしてやったのに、奴隷として躾がもっと必要だったな。

しかし、無能のくせに何故あのような怪力だったり、魔力がないはずなのに魔法を使ったのだろうか？

まぁ、そんなことはアデルを捕まえて拷問でもすればわかるだろう。

俺は優しいから両親のように暴力はしなかったのに、それがきっとアデルには良くなかったんだ。

日々の暴言？あんなのただの愛情表現さ。

ちゃんと立場をわからせるためには、暴力だって必要だ。

両親の暴力こそが嫁の躾には正しかったのだ。

あんな世間知らずの無能は、きっとすぐにみつかる。

……俺は、この時はそう思っていた。

夜間に我が家の騎士団に探させたが、アデルはみつからなかったらしい。



翌朝になっても空が暗い。

時刻ではもう朝なのにおかしい。

それに、雷の音が近くからずっとする。

今日はそんなに天気が悪いのか？

窓から外をみた俺は、みえたものに絶句する。

我がリーレン侯爵家の屋敷の辺りだけが真っ黒な雲に覆われ、ずっと雷がゴロゴロしているが、屋敷の向こう側は青空が広がっていたからだ。

な、なんなんだこのおかしな雷雲は！？

少し不安になる中、神殿から今日お訪ねしますという書簡がきた。

何故神殿から？

これは何か不吉なことの始まりだろうか。

不吉な目にあう心当たりがないから、両親と共に大司祭様を今か今かと待ちわびた。

早く安心したかった。



………大司祭様は、クリア伯爵家の義両親と二人の義兄と一緒にやってきた。

あ、やば、アデルの脱走を上手く誤魔化さないといけない。

実は、クリア伯爵家からはアデルに使ってやってほしいと毎月お金を貰っていたのだ。

だが、嫁の物は旦那様の物だからいつも父上と一緒に違法博打で遊んだり、娼館でいい女を買ったりと楽しくしていたんだ。

あ、子供が出来たら面倒だったからちゃんと避妊はしている。

ちなみに、母上は宝石を買っていた。

義家族からアデルに会いたいと言われたら、いつも「今日は都合が悪い」とか「今日は体調が優れなくて」とか誤魔化して決して会わせなかったが、どうしても誤魔化せない時は、アデルに大人しくしていろと言って少しだけ会わせていた。

……アデルが脱走したなんて知ったら、お金が貰えなくなってしまう！



まったく、アデルを捕まえたら迷惑をかけた償いをしてもらわないとな。

あんな無能でも身体は華奢だから、客を身体でもてなすことぐらいならできるだろう。

なんなら俺と身体の関係はないから、初物として高く売れるかもしれない。

……さて、その時はいくらで客に提供しようかな？