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4◆神夫婦、実はお怒り【神視点

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この世界にはいろいろな神がいるけれど、原初の神というのは二人である。

魔を司る女神メリダレッド、武を司る神ジェノドール、二人は仲睦まじい夫婦神だ。

その二人以外の神は皆二人の部下で、子ではない。

何故こんな説明を急にするかというと、二人には愛しい子がいるからだ。

だが、二人は忙しいし部下も忙しい……つまり、生まれても育てる者がいなかった。

そこで、二人は可愛い我が子を人間に預けることにした。

愛情深い人間ならば、きっとこの子を愛してくれると二人は信じたのだ。



とある夫婦に、子供が生まれようとしていた。

それは酷い難産で、医師からは絶望的な現実を突き付けられる。

「死産の可能性になるかもしれません」

「そんなっ!!」

医師の言葉に父親はショックを受ける。

子供の二人の兄は、必死に必死に神に願った。

僕達の兄弟と母上を助けてくださいと………。

オギャ……オギャ……。

「「!!」」

願いは神に通じたのか、医師すら諦めていたその産声が、弱々しくもしっかりと部屋から聞こえる。

そして……。

「おめでとうございます!男の子でございます!」

「あぁ!神様!」

「「やったー!弟だー!」」

「旦那様、おめでとうございます!」

皆が祝福する中で子は【アデル】と名付けられたのだった。



これは神のみが知ることだが、人間のアデルは残念ながら生まれる前に鼓動が止まってしまっていた。

しかし、たまたま我が子の預け先を探していた二人の神は、彼ら家族なら愛情深く子を育てるだろうと我が子の魂をアデルの亡骸に宿らせた。

そして、誰も知らぬまま神子が誕生したのだ。

力の安定のために、人間の年齢で20歳になるまで我が子はただの無力な人間アデルになる。

その身に宿る力は、人間の身には大きすぎるのだ。

だから、力が身体に馴染むまで……それが20年。



二人は思う。

そろそろ神託を出す頃合いだ。

アデルが神子であるという神託だ。

あの家族は確かに我が子を深く愛してくれた。

だからあの家族には深い感謝を捧げよう。

だが……アデルと結婚した者とその家族達には神罰が必要だ。

神子と知らなかったからなんて言い訳は許さない。

人の心のない者達には、悔い改めることが必要だ。



二人は怒る。

それは神の怒りだ。

その日、神殿に神託と共に激しい雷が落ちたのだった。
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