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番外編1

さよならとただいま【1】ルディガー視点※死ネタ注意

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最近バジルがよく咳をするようになって、私はバジルを気にかけていた。

けれど、いつもバジルは大丈夫だよと笑っていた。

でも、私は気付いてしまう。

………満ち足りた生活だったから、私は忘れていたんだ。

私達は……私達には、寿命というどうすることもできない壁があるということに………。

バジルは人間だから、私達の誰よりも早く歳をとってしまう。

そして、気がづけばバジルはもう老体になっていた。

まだまだ若いと思っていたけれど、私には現実が見えていなかっただけなのだ。

バジルは老化のせいで身体が弱ってしまっていて、身体の不調をいつも感じていたらしい。

けれど、それを私達家族に知られないように笑っていただけだったんだ。

バジルは、自分がもう長くないかもしれないということを亡くなる数日前に私にだけ話してくれた。

今までは、私達を悲しませたくなくて言えなかったと言っていた。

「でも、やっぱり今までのお礼をルディガーさんに言いたかったから………。悲しませてごめんなさい。ルディガーさん、愛しています」

寝たきりのバジルが、悲しそうに笑う。

別れの時が確実に迫っていることを………あの時の私は、息子達には言えなかった。



バジルの冷たくなった手を握る。

もう二度と温もりを得られない細い手に、私は縋りついて声を殺して泣いた。

「ママ……ママぁ………っ!」

「うあぁーーーんっ!」

「いやぁーーーっ!ママぁーーーっ!」

幼い息子達の悲痛な泣き声を聞いても、バジルが微笑むことはもう二度ない。

何故なら、バジルは……もう、目覚めないから………。



バジルと愛し合っていた日々は、私にとって幸せばかりの毎日だった。

バジルも幸せだっただろうか?

バジルへの愛が溢れて、よくバジルを困らせてしまったことも何度かあったな。

種族の違いなんて私にはどうでも良くて、駄犬を地で行くような感じで私は楽しかった。

バジルも楽しかっただろうか?

バジルから向けられる愛も、とても嬉しくて尻尾をブンブン振ったのも懐かしいな。

私の耳も尻尾も、バジルにいっぱい撫でてもらえたな。

………すべて、懐かしいよ。

すべて愛しい思い出だ。

バジル……愛しているよ。

愛して……いたよ………。

頬を流れる涙を止めるには、まだまだ時間が足りないようだ。

笑わないといけないのにね。

バジルが望んだ通りに、笑顔でお別れを言わないとね。

………だけど、すまない。

どうやら、その約束は守れそうにない。

私も、息子達も、クロムも、村の皆も、悲しみの涙が止まらないから………。



私は真夜中の森をフェンリル姿で走り、誰もいない森の奥でただただ叫ぶ。

「アオーーーンッ!!(ああぁぁあぁっ!!)」

森に響くのは、嘆き苦しむ悲痛な叫び。

堪えきれなかった………悲しみの叫び。





【さよならとただいま】は、6話完結を予定。
ちゃんと最後はハッピーエンドになるから、安心してください!
ヒントはタイトルです!

by作者
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