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71 革命の闇
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「確かにお前にも至らない部分はあった。だがこうなっちまったのは国の、俺達の責任だ。お前が一人で抱え込む事じゃあない。それに……」
「…………、」
「お前一人が国を背負った気になってんじゃねぇよって話だ」
「そんな事は……」
「思ってないって言えんのか? 今のお前の顔はそんな顔してんぞ」
「……そう、ですか」
ダラスはそこまで言うと、一度ハッ! と鼻で笑い、先を続けた。
その声色には今までの怒気はカケラも感じなかった。
「国ってのはな、全てが微妙なバランスで成り立ってんだ。どっかで何かが欠けたらそれが大きなうねりになって国が滅びる事もある。ま、普通はそうなる前に手を打って修正するんだがな」
「でも……」
「それにな、それを差し置いても、今回の革命はかなりきな臭い部分が多い」
「へ?」
ダラスが放った言葉に、我ながらびっくりするくらい間抜けな声が出た。
きな臭いって、どういう事だ。
「ウチの諜報部から上がってきた情報もそうだし、革命が広がる速度も速すぎる。革命派が持っていた武器を見たか?」
「え? あ、はい」
「どう思った?」
「どうって……みんなバラバラで剣やら槍やら斧やら……まとまりが無いように見えましたけど」
「そう、バラバラだ。だがよく考えてみろ。革命に参加していた者達はつい先日まで戦闘とも無縁な一般市民だ。そして生き残った一般市民の半分以上が革命に参加していると見られているが、その全ての者達が武器を持っている。だがどうして、どうやってそれだけの武器を用意出来たんだ? 首都は壊滅しているにも関わらず、だ」
「それは……武器屋がみんなに提供したとか」
「ならあの自爆する時に使用した魔法石は何だ? 出所はどこだ?」
「……分かりません」
ダラスの質問の意図が分からず、思わず下を向いてしまうが、その時天啓のような考えが頭の中に降りてきた。
「! まさか革命派をサポートしている存在がいる、とか?」
「そりゃお前当たり前だろ……サポートしてるのは地方領主だったり、豪商だったり富裕層だったり色んな奴らがサポートしてるよ。だから俺達はこんな遠方まで地方貴族を捕らえに来たんだろ」
「あ、そうか……」
我ながら閃いたと思ったのだけど、ダラスが言いたい事は違ったらしい。
「だが惜しい」
「勿体ぶらずに教えて下さいよ」
「そうだな。歳とると話が長くなって良くねぇなぁ。ホント歳はとりたくねぇよ」
がはは! と笑ったダラスは膝を数回叩いたと思えば、真面目な表情に切り替わり、その先を言った。
「今回のこの革命にゃ他の国が絡んでると、国の上層部は睨んでいるのさ」
「……え?」
「テイル王国と言えば大陸随一の軍事国家であり絶対強者だ。国の占有領地もダントツの広さを持ってるだろ? それもこれもお前やお前の父親、祖父が力を貸して築き上げたものだ。その礎たるモンスター部隊を誇る軍が一夜にして崩壊し、国を支える首都すら壊滅した。お前が他の国の人間だと仮定した時、お前はこの状況をどう捉える」
「え、ヤバいな、って……」
「はぁ……やっぱお前にゃ軍師の才能はないな」
「う……結局のところ何が言いたいんですか……」
「つまりだな、これは他国からの侵略行為なんじゃないかって話さ」
「……それ、本当ですか……?」
「まだ確定じゃあないが、な。テイル王国が引き起こした未曾有の大災をダシに革命という大義名分を付け、テイル王国の民を焚き付けている存在がいそうなんだよなぁ」
「目星は付いているのですか?」
「いいや、全くと言っていい。軍上層部も国の大臣連中もその線が濃厚だと考えている。ま、かく言う俺もそう思ってる」
随分ととんでもない話が飛び出してきたものだ、と俺は思った。
だがしかし、改めてそう考えてみると、確かに不自然な点は多く見られた。
自爆に使われた魔法石は、野山に自然に出来て採掘などで手に入る物ではない。
それなりの性質の魔晶石に魔術師が術式を使用して魔法を込めて完成する代物なのだ。
それを一般人が、攻め入る兵の全員が所持しているなどおかしな話だ。
仮に領主や貴族が、有事の際の為に溜め込んでいたとしても数が多すぎる。
あの場にいた兵達は少なくとも数百人はいたはず。
「なるほど……確かに言われてみたらそうですね」
「言われなくても分かる様に精進する事だな」
「はい……」
「っと、だいぶ話が逸れちまったな。んでどうすんだ? 俺達を引き抜こうって腹構えなんだ。それなりの話を持って行ってきてるんだろうな? 自慢じゃないが、こちとら軍一筋の堅物二人だぜ?」
「それはもう、勿論です」
「そうかそうか。なら細かい話は後で聞くとするさ。このまま城へ一直線、なんだろ?」
「うう、はい。そうします」
絶対にめちゃくちゃ怒られるんだろうな……元の世界で言えば、職務放棄して会社に倒産レベルの大損害を与えた人間が社長の前にひょっこり現れるようなものだしな……。
うう、胃が痛くなってきた……。
「…………、」
「お前一人が国を背負った気になってんじゃねぇよって話だ」
「そんな事は……」
「思ってないって言えんのか? 今のお前の顔はそんな顔してんぞ」
「……そう、ですか」
ダラスはそこまで言うと、一度ハッ! と鼻で笑い、先を続けた。
その声色には今までの怒気はカケラも感じなかった。
「国ってのはな、全てが微妙なバランスで成り立ってんだ。どっかで何かが欠けたらそれが大きなうねりになって国が滅びる事もある。ま、普通はそうなる前に手を打って修正するんだがな」
「でも……」
「それにな、それを差し置いても、今回の革命はかなりきな臭い部分が多い」
「へ?」
ダラスが放った言葉に、我ながらびっくりするくらい間抜けな声が出た。
きな臭いって、どういう事だ。
「ウチの諜報部から上がってきた情報もそうだし、革命が広がる速度も速すぎる。革命派が持っていた武器を見たか?」
「え? あ、はい」
「どう思った?」
「どうって……みんなバラバラで剣やら槍やら斧やら……まとまりが無いように見えましたけど」
「そう、バラバラだ。だがよく考えてみろ。革命に参加していた者達はつい先日まで戦闘とも無縁な一般市民だ。そして生き残った一般市民の半分以上が革命に参加していると見られているが、その全ての者達が武器を持っている。だがどうして、どうやってそれだけの武器を用意出来たんだ? 首都は壊滅しているにも関わらず、だ」
「それは……武器屋がみんなに提供したとか」
「ならあの自爆する時に使用した魔法石は何だ? 出所はどこだ?」
「……分かりません」
ダラスの質問の意図が分からず、思わず下を向いてしまうが、その時天啓のような考えが頭の中に降りてきた。
「! まさか革命派をサポートしている存在がいる、とか?」
「そりゃお前当たり前だろ……サポートしてるのは地方領主だったり、豪商だったり富裕層だったり色んな奴らがサポートしてるよ。だから俺達はこんな遠方まで地方貴族を捕らえに来たんだろ」
「あ、そうか……」
我ながら閃いたと思ったのだけど、ダラスが言いたい事は違ったらしい。
「だが惜しい」
「勿体ぶらずに教えて下さいよ」
「そうだな。歳とると話が長くなって良くねぇなぁ。ホント歳はとりたくねぇよ」
がはは! と笑ったダラスは膝を数回叩いたと思えば、真面目な表情に切り替わり、その先を言った。
「今回のこの革命にゃ他の国が絡んでると、国の上層部は睨んでいるのさ」
「……え?」
「テイル王国と言えば大陸随一の軍事国家であり絶対強者だ。国の占有領地もダントツの広さを持ってるだろ? それもこれもお前やお前の父親、祖父が力を貸して築き上げたものだ。その礎たるモンスター部隊を誇る軍が一夜にして崩壊し、国を支える首都すら壊滅した。お前が他の国の人間だと仮定した時、お前はこの状況をどう捉える」
「え、ヤバいな、って……」
「はぁ……やっぱお前にゃ軍師の才能はないな」
「う……結局のところ何が言いたいんですか……」
「つまりだな、これは他国からの侵略行為なんじゃないかって話さ」
「……それ、本当ですか……?」
「まだ確定じゃあないが、な。テイル王国が引き起こした未曾有の大災をダシに革命という大義名分を付け、テイル王国の民を焚き付けている存在がいそうなんだよなぁ」
「目星は付いているのですか?」
「いいや、全くと言っていい。軍上層部も国の大臣連中もその線が濃厚だと考えている。ま、かく言う俺もそう思ってる」
随分ととんでもない話が飛び出してきたものだ、と俺は思った。
だがしかし、改めてそう考えてみると、確かに不自然な点は多く見られた。
自爆に使われた魔法石は、野山に自然に出来て採掘などで手に入る物ではない。
それなりの性質の魔晶石に魔術師が術式を使用して魔法を込めて完成する代物なのだ。
それを一般人が、攻め入る兵の全員が所持しているなどおかしな話だ。
仮に領主や貴族が、有事の際の為に溜め込んでいたとしても数が多すぎる。
あの場にいた兵達は少なくとも数百人はいたはず。
「なるほど……確かに言われてみたらそうですね」
「言われなくても分かる様に精進する事だな」
「はい……」
「っと、だいぶ話が逸れちまったな。んでどうすんだ? 俺達を引き抜こうって腹構えなんだ。それなりの話を持って行ってきてるんだろうな? 自慢じゃないが、こちとら軍一筋の堅物二人だぜ?」
「それはもう、勿論です」
「そうかそうか。なら細かい話は後で聞くとするさ。このまま城へ一直線、なんだろ?」
「うう、はい。そうします」
絶対にめちゃくちゃ怒られるんだろうな……元の世界で言えば、職務放棄して会社に倒産レベルの大損害を与えた人間が社長の前にひょっこり現れるようなものだしな……。
うう、胃が痛くなってきた……。
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