ブラック王国軍から脱退した召喚士、前世の記憶が蘇り現代兵器も召喚出来るようになりました

登龍乃月

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65 タロス、ダレク無双

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「とりあえず! 今はこの現状をなんとかしましょう!」
「お前、現状を把握してるのか?」

 ヘルメットを外したダラスが、周囲を一瞥して言った。
 ダラスさん少し痩せたな、と俺は場違いな感想を抱きつつ、

「はい、モンスターの視界から大体は分かっているつもりです」

 と胸を張って答えた。

「となると、あの甲冑の奴らもクロードの仲間か」
「話せば長くなりますが、そう思っていて構いません」
「そうか、なら敵対勢力を傷付けずに無力化する。できるか?」
「お茶の子さいさいですよ」
「それでクロード、この婦人達は?」

 話が切れたと判断したアスターが、俺の後ろに佇む二人の女性を顎でしゃくるように指した。

「このお二人は」
「カレンでーす! アスターさん? 彼女いますかー?」
「ちょっとカレン何言ってるの? 私はサリア、魔導士よ」
 アスターの腕に抱き付くように飛び込んだカレンと、それを呆れた顔で見つめるサリア。
 
「カレンさんにサリアさんですか、お二方もご助力に?」

 腕に抱き付かれているというのに、アスターは平然とした態度で淡々と質問を投げかける。
 正直アスターはかなりの美男だ。
 この反応を見るに、俺の知らない所では女にモテモテ、腕を絡め取られるなんて日常茶飯事だったのだろう。
 クソ。
 羨ましい。

「そうだよー、クロードが二人を助けたい~って言うから付いてきたの!」

 カレンはいつもより一段高い声で答え、サリアも同調するように頷いた。
 ダレクも「俺もな!」としっかり付け足してくれた。
 
「(サリアさん、カレンさんキャラ変わってませんか)」

 さりげなくサリアのそばに移動して、こっそりと耳打ちをする。

「(変わってないわ。彼女、顔の良い男には弱いのよ。酒の席で散々あの子の過去の色恋を聞かされたわ。賢者である前に一人の女、口癖のように言ってたわね)」
「(そうですか)」

 なるほど、俺と初めて会った時にはあんな態度にはならなかった。
 いわゆるそういう事だろう。
 泣いてもいいですか。
 軽く頭を振って気持ちを切り替え、ダラスの目を見る。

「表門の方にも三百体ほどのタロスを――そこの甲冑の方々ですが――配置してあります。今は表も膠着状態になってます」
「そうか。だが助けるとは?」

 説明を聞いたダラスがカレンの言葉を拾って首を傾げるが、

「その説明は後です、今はここを制圧することを」
「そうだな。ふん、言うようになったなクロード。頼りにしている」
「ありがとうございます!」

 ヘルメットを被り直したダラスは、動けないでいる革命軍を見回した。
 そして――。

「我はテイル王国正規軍ダラスである! 革命派の者どもよ! 大人しく武器を捨てて投降せよ! 我らが目的はこの屋敷の主人である! もう一度言う! 投降せよ!」

 大きな声を張り上げ、革命軍に呼びかけるものの。

「ふざけるな! 俺達はお前達王国軍を許さない! あの事件以来、お前達は街を壊し俺達の生活を奪った!」
「そうだそうだ!」
「王国に死を!」
「愚王ガイアに鉄槌を!」
「怯むな! かかれ!」
「「「おおおお!」」」

 ダラスの呼びかけも虚しく、革命軍はそれぞれの武器を振り上げて鬨の声を上げた。

「やはり無駄か」
「当たり前ですよ中将」
「しかしな、無駄な犠牲は出したくないのだ」
「心中お察しします」

 革命軍はタロスにも攻撃をしかけて始めていたので、命を奪う事なく制圧せよ、とよ指示を出した。

「クロード、奴らは自爆するすべを持っているんだが、恐らく爆破系の魔法石を所持していると思われる。気をつけろ」
「分かりました」

 ダラスから言われた事をそのままタロス達に伝えると、タロス達は素早く動き、襲い来る革命軍を次々と昏倒させていった。
 そして懐を漁り、赤く輝く拳大の魔法石を抜き取った。
 タロスは流石進化系パワードスーツと言うべきか、甲冑の姿からは到底想像できないスピードで戦場を走り回り、正規兵のサポートまで回っていた。
 そしてダレクも水を得た魚のように生き生きと大剣を振るっており、一振りで数人の敵が吹き飛んでいる。

「な、何だコイツら! 人間の動きじゃないぞ! うぐぁっ!」
「ビリー! てめぇ! よくもビリーをっがはっ!」

 タロスは一言も言葉を発さずに、ダレクは猛獣のような雄叫びを上げながら暴れ回り、戦闘開始から約十分で決着が付いてしまった。

「私は表を見て来るわ。後で合流しましょ」
「あ……あ、はい」

 サリアは散歩にでも行くような気軽さで、革命軍ひしめく屋敷の中に足を踏み入れた。
 勿論革命軍の皆様もサリアを放っておくわけもなく襲いかかるが、

「ぐあっ!」
「ひいいいっ!」
「うわああ!」

 屋敷の中に悲しい犠牲者の声が次々と木霊していったのだった。
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