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63 強襲
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「っつつ……」
「大丈夫、ですか。ダラス中将」
「あぁ、何とかな」
爆発トラップに巻き込まれたダラスとアスターは、わずかに崩れ落ちた扉付近に吹き飛ばされて転がっていた。
トラップに使用された魔法石には爆発魔法が込められていたようだが、生憎と全身を覆うフルプレートのアーマーを引き千切るほどの威力は無かったようだ。
先陣を切ったダラスは中将であり、配給される鎧もそれ相応のもの。
そしてダラスに追従したアスターの着用する鎧もしかり。
二人の鎧には防御力を上げる魔法が込められており、生半可な攻撃では彼らの鎧に傷の一つも付けられない。
その証拠にダラスとアスターの鎧には多少の汚れはあるものの、傷一つ付いていなかった。
しかしもし、最初に突っ込んだのが一般兵であったならそれ相応の被害が出ていたかもしれない。
「チッ……やってくれるじゃねぇかよ」
「裏手の襲撃も織り込み済みとあれば」
「あぁ。敵さんは俺達が突っ込んでくるのを今か今かと首を長くして待っているだろうさ」
そう言ってダラスはポッカリと空いた爆発跡を忌々しげに睨みつけながら言った。
そしてそれと同時に--。
「「「「おおおおお!」」」」
ダラス達が身を隠していた更に奥の方から大勢の鬨の声が聞こえ、無数の革命軍兵達が姿を現した。
その数はダラス率いる分隊の約三倍。
「てっ! 敵襲うううーーー!」
分隊の一番後ろにいた隊員が悲鳴に近い声をあげた。
そして表門の方からも無数の爆発音が聞こえてきた。
この爆発は正規軍によるものではない。
ダラスの耳と脳は己の直感により、それを見極めていた。
「--やられた! 総員陣形を組みなおせ! 対多数戦闘用意!」
「中将! 屋敷の中からも!」
「くっそ! 挟まれたのはこっちの方だったか!」
後方の鬨の声と同時に屋敷の一階部分の窓が次々と開け放たれ、中からも革命軍が我先にと飛び出してきていた。
恐らく表門の正規兵達も同じような状況に陥っているはずだとダラスは直感する。
一心不乱に剣や槍を振るう革命軍は死を覚悟した必死の形相をしていた。
彼らの装備はみなバラバラで、それなりの防具を身につけている者もいれば剣だけを握りしめている青年の姿もある。
数だけで言えば革命軍の方が圧倒的に多いとは言え、その装備の差は天と地ほどの開きがあった。
「アスター後ろだ!」
「はい!」
部隊兵達が一般人の集まりである革命軍に遅れを取る事はないが、至る所で小規模の爆発が起きており、それに巻き込まれた部隊兵達が一人、また一人と地面に倒れ伏していく。
「新しい時代の為にいいいい!」
ダラスの目と鼻の先で、部隊兵に片腕を切り落とされた革命軍の兵の一人が絶叫をあげ、その兵を中心にして小規模の爆発が発生する。
部隊兵は数メートルほど吹き飛ばされて地面に転がり、動く気配がない。
「自爆だと!」
先ほどから発生している小規模の爆発の正体に気付いたダラスは怒号を上げた。
革命軍の死を賭した特攻。
装備も練度も連携も、正規兵には遠く及ばない一般人の彼らが選択した一矢報いる方法。
部隊兵と切り結び、致命傷を受ければその場で自爆を敢行し、一人でも多くの部隊兵を巻き込んで果てる。
「くそが!」
ダラスは吐き捨てるようにそう言うと、斬りかかって来た青年を蹴りで吹き飛ばす。
青年は苦悶の表情を浮かべながら地面を転がっていき、よろよろと立ち上がって懲りずにダラスへ襲いかかる。
致命傷を与えれば自爆。
そんな命を命とも思わない特攻作戦は功をそうし、ダラスの率いる分隊はその数を着々と減らしつつあった。
自爆をさせない為には致命傷を避けるしかなく、かと言って致命傷を与えなければ血反吐を吐いてでも突っ込んでくる。
気づけばダラスの分隊の残りは三分の一ほどまでになっていた。
次々と襲いかかる革命軍を退けながらダラスは少しづつ場所を移動していた。
先ほどからこの場からの撤退も視野に入れてはいたのだが、ざっと見回してみても退路と呼べるものが見当たらない。
屋敷の中からは続々と敵が吐き出されてきており、ダラス達は既に囲まれた状況に陥っていまっていた。
アスターも四人を相手に立ち回っており、その顔に余裕の色はない。
アスターも自爆のカラクリには気付いているらしく、剣の腹で引っ叩いたり鞘で殴りつけたりして敵の無力化を狙っている。
命を捨てる覚悟で剣を振るう者を、命を奪わないように立ち回るというのはかなり難しい事だ。
魔法鎧により肉体的に受けるダメージは皆無だが、集中力とスタミナは減り続ける。
「くそ……!」
挟撃を受け始めてから数十分が経過した頃のことだった。
全身に流れる汗と、絶え間なく襲いくる革命軍に嫌気がさしてきた頃、遠くからバラバラバラバラバラ! という気なれない奇妙な音がダラスの耳に聞こえてきたのだった。
「大丈夫、ですか。ダラス中将」
「あぁ、何とかな」
爆発トラップに巻き込まれたダラスとアスターは、わずかに崩れ落ちた扉付近に吹き飛ばされて転がっていた。
トラップに使用された魔法石には爆発魔法が込められていたようだが、生憎と全身を覆うフルプレートのアーマーを引き千切るほどの威力は無かったようだ。
先陣を切ったダラスは中将であり、配給される鎧もそれ相応のもの。
そしてダラスに追従したアスターの着用する鎧もしかり。
二人の鎧には防御力を上げる魔法が込められており、生半可な攻撃では彼らの鎧に傷の一つも付けられない。
その証拠にダラスとアスターの鎧には多少の汚れはあるものの、傷一つ付いていなかった。
しかしもし、最初に突っ込んだのが一般兵であったならそれ相応の被害が出ていたかもしれない。
「チッ……やってくれるじゃねぇかよ」
「裏手の襲撃も織り込み済みとあれば」
「あぁ。敵さんは俺達が突っ込んでくるのを今か今かと首を長くして待っているだろうさ」
そう言ってダラスはポッカリと空いた爆発跡を忌々しげに睨みつけながら言った。
そしてそれと同時に--。
「「「「おおおおお!」」」」
ダラス達が身を隠していた更に奥の方から大勢の鬨の声が聞こえ、無数の革命軍兵達が姿を現した。
その数はダラス率いる分隊の約三倍。
「てっ! 敵襲うううーーー!」
分隊の一番後ろにいた隊員が悲鳴に近い声をあげた。
そして表門の方からも無数の爆発音が聞こえてきた。
この爆発は正規軍によるものではない。
ダラスの耳と脳は己の直感により、それを見極めていた。
「--やられた! 総員陣形を組みなおせ! 対多数戦闘用意!」
「中将! 屋敷の中からも!」
「くっそ! 挟まれたのはこっちの方だったか!」
後方の鬨の声と同時に屋敷の一階部分の窓が次々と開け放たれ、中からも革命軍が我先にと飛び出してきていた。
恐らく表門の正規兵達も同じような状況に陥っているはずだとダラスは直感する。
一心不乱に剣や槍を振るう革命軍は死を覚悟した必死の形相をしていた。
彼らの装備はみなバラバラで、それなりの防具を身につけている者もいれば剣だけを握りしめている青年の姿もある。
数だけで言えば革命軍の方が圧倒的に多いとは言え、その装備の差は天と地ほどの開きがあった。
「アスター後ろだ!」
「はい!」
部隊兵達が一般人の集まりである革命軍に遅れを取る事はないが、至る所で小規模の爆発が起きており、それに巻き込まれた部隊兵達が一人、また一人と地面に倒れ伏していく。
「新しい時代の為にいいいい!」
ダラスの目と鼻の先で、部隊兵に片腕を切り落とされた革命軍の兵の一人が絶叫をあげ、その兵を中心にして小規模の爆発が発生する。
部隊兵は数メートルほど吹き飛ばされて地面に転がり、動く気配がない。
「自爆だと!」
先ほどから発生している小規模の爆発の正体に気付いたダラスは怒号を上げた。
革命軍の死を賭した特攻。
装備も練度も連携も、正規兵には遠く及ばない一般人の彼らが選択した一矢報いる方法。
部隊兵と切り結び、致命傷を受ければその場で自爆を敢行し、一人でも多くの部隊兵を巻き込んで果てる。
「くそが!」
ダラスは吐き捨てるようにそう言うと、斬りかかって来た青年を蹴りで吹き飛ばす。
青年は苦悶の表情を浮かべながら地面を転がっていき、よろよろと立ち上がって懲りずにダラスへ襲いかかる。
致命傷を与えれば自爆。
そんな命を命とも思わない特攻作戦は功をそうし、ダラスの率いる分隊はその数を着々と減らしつつあった。
自爆をさせない為には致命傷を避けるしかなく、かと言って致命傷を与えなければ血反吐を吐いてでも突っ込んでくる。
気づけばダラスの分隊の残りは三分の一ほどまでになっていた。
次々と襲いかかる革命軍を退けながらダラスは少しづつ場所を移動していた。
先ほどからこの場からの撤退も視野に入れてはいたのだが、ざっと見回してみても退路と呼べるものが見当たらない。
屋敷の中からは続々と敵が吐き出されてきており、ダラス達は既に囲まれた状況に陥っていまっていた。
アスターも四人を相手に立ち回っており、その顔に余裕の色はない。
アスターも自爆のカラクリには気付いているらしく、剣の腹で引っ叩いたり鞘で殴りつけたりして敵の無力化を狙っている。
命を捨てる覚悟で剣を振るう者を、命を奪わないように立ち回るというのはかなり難しい事だ。
魔法鎧により肉体的に受けるダメージは皆無だが、集中力とスタミナは減り続ける。
「くそ……!」
挟撃を受け始めてから数十分が経過した頃のことだった。
全身に流れる汗と、絶え間なく襲いくる革命軍に嫌気がさしてきた頃、遠くからバラバラバラバラバラ! という気なれない奇妙な音がダラスの耳に聞こえてきたのだった。
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