ブラック王国軍から脱退した召喚士、前世の記憶が蘇り現代兵器も召喚出来るようになりました

登龍乃月

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 ゴーウストタウンのような首都を抜け、目的地である軍部の寮の上空へと移動した。
 そしてダラスの部屋の窓のさんに着地したカラントイーグルは、その嘴を使ってコツコツと窓ガラスを叩く。
 中にダラスがいる様子はないので、そのまま窓ガラスを割ってワイルドラットを侵入させる。
 ワイルドラットはちょろちょろと部屋の中を徘徊し、テーブルの上に転がっていたダラスのペンを咥えて戻ってきた。
 ワイルドラットを回収したカラントイーグルへ先に帰投せよと指示を飛ばした。
 そしてもう一体のカラントイーグルの同じようにアスターの部屋に侵入、アスターの部屋は綺麗に整頓されていて生活感があまり感じられない部屋だった。
 それによりワイルドラットは自分が咥えられる程度の大きさの目ぼしいアイテムが見当たらず、途方にくれつつも再度キョロキョロと部屋を見回した。
 長いひげをひくひくと動かしていたワイルドラットは、何かを見つけたように尻尾を上げて玄関の方へかけていった。
 数秒後に戻ってきたワイルドラットは、その口に歯ブラシを咥えていた。
 無事目的を果たしたワイルドラットを回収して、カラントイーグルは俺の所へと引き返した。
 そしてTホークも帰投させようと思ったが、Tホークには軍部と王城周辺を偵察してもらうことにした。
 革命軍はここまで侵攻してきてはいないようで、首都の有様と比べると実に綺麗で内戦中とは思えないほどだ。
 軍の人間は普通に歩いているし、残ったモンスターの姿もある。
 そのままTホークをふよふよと移動させて行くが、残念ながらダラスやアスターの姿は見当たらない。
 本当なら王城の内部に潜入させたいのだが、そんな事をすれば確実に見つかってしまう。
 見つかった所で俺に被害はないし、一般兵の足がTホークの速度に追い付けるわけもない。

(どうするか……)

 いや、やめておこう。
 Tホークで音声が拾えればいいんだけど、そんな装備が付いているわけじゃないしな。
 王城の周囲をぐるりと見て回るがこれといった情報を得る事は出来なかった。
 丁度その時二匹のカラントイーグルが俺の部屋に帰ってきたのを感じ、そのままTホークをリリースする。

「おかえり、よくやったな」

 ワイルドラットからダラスのペンとアスターの歯ブラシを受け取った俺は、ワイルドラットとカラントイーグルもリリースした。
 そしてそのままの足で隣の部屋で寝ているサリアを訪ねた。
 数度扉をノックすると、眠そうな目をさらに眠そうにしながらサリアが出てきた。

「ふぁ……ああふ。どうしたの?」
「あの、これを」
「あぁ、例の持ち物ね。しかし召喚術ってのは随分と便利ね。私の研究所にも数体欲しいくらいよ」

 大きなあくびをしているサリアにペンと歯ブラシを渡す。
 
「言ってくれればいつでもお望みのモンスターを派遣しますよ」
「あぁそうね。人材派遣もクロードの仕事だったわね。じゃあ今度お願いしようかしら」
「はい、お任せください」
 
 サリアは少しけだるげにアイテムを受け取ると、俺を室内に招き入れた。
 
「それじゃ始めるわね」
「よろしくお願いします」

 サリアは再び大きなあくびをしつつもペンと歯ブラシを床に置き、呪文の詠唱を始めた。
 サリアの言葉に導かれるように、床に魔法陣が形成されていく。
 そして二つのアイテムが淡い光に包まれ始めた。
 
「……うん。この二人はまだ生きてるわ。よかったわね」
「はい!」
「そしたら二人の位置情報をあなたに転写するわ」
「え? うわっ!」

 サリアが言い終わるか終わらないかの刹那に視界が激しく明滅し、頭の中に二つの存在が流れ込んでくる。

「この術式は解除するまで二人の位置を追い続けるわ。なんとなく分かるでしょう?」
「はい……ここから南の方角ですね」
「今は戦闘中じゃあないみたいだけど、急いだほうがいいのは変わりない」
「そうですね」

 また一つ大きくあくびをしたサリアは目を擦り、寝る前に入れていたのであろう紅茶を一息に飲み干した。

「戻ったぜ」
「お待たせしたー!」

 そのタイミングでダレクとカランが部屋に入ってきた。
 
「進捗はどうだ?」
「二人の居場所は特定しました」
「おー! やったねー、じゃサクッと行っちゃおっかー」
「はい。よろしくお願いします」
「二人は遠いのか?」
「ここから南に五十キロ、といったところですね」
「カイオワならすぐだねー」
「だな。カイオワで現地に突っ込むか? それとも近場で降りて徒歩でいくか?」
「そのまま現地に乗り込みます。戦闘中であればタロスを投入、革命軍を牽制しつつ二人の元に向かいます」
「うふふふ……何を撃とうかしら……」
「広域魔法は遠慮してくださいね」
「分かってるわよう」
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