59 / 73
59 アイテム
しおりを挟む
ゴーウストタウンのような首都を抜け、目的地である軍部の寮の上空へと移動した。
そしてダラスの部屋の窓のさんに着地したカラントイーグルは、その嘴を使ってコツコツと窓ガラスを叩く。
中にダラスがいる様子はないので、そのまま窓ガラスを割ってワイルドラットを侵入させる。
ワイルドラットはちょろちょろと部屋の中を徘徊し、テーブルの上に転がっていたダラスのペンを咥えて戻ってきた。
ワイルドラットを回収したカラントイーグルへ先に帰投せよと指示を飛ばした。
そしてもう一体のカラントイーグルの同じようにアスターの部屋に侵入、アスターの部屋は綺麗に整頓されていて生活感があまり感じられない部屋だった。
それによりワイルドラットは自分が咥えられる程度の大きさの目ぼしいアイテムが見当たらず、途方にくれつつも再度キョロキョロと部屋を見回した。
長いひげをひくひくと動かしていたワイルドラットは、何かを見つけたように尻尾を上げて玄関の方へかけていった。
数秒後に戻ってきたワイルドラットは、その口に歯ブラシを咥えていた。
無事目的を果たしたワイルドラットを回収して、カラントイーグルは俺の所へと引き返した。
そしてTホークも帰投させようと思ったが、Tホークには軍部と王城周辺を偵察してもらうことにした。
革命軍はここまで侵攻してきてはいないようで、首都の有様と比べると実に綺麗で内戦中とは思えないほどだ。
軍の人間は普通に歩いているし、残ったモンスターの姿もある。
そのままTホークをふよふよと移動させて行くが、残念ながらダラスやアスターの姿は見当たらない。
本当なら王城の内部に潜入させたいのだが、そんな事をすれば確実に見つかってしまう。
見つかった所で俺に被害はないし、一般兵の足がTホークの速度に追い付けるわけもない。
(どうするか……)
いや、やめておこう。
Tホークで音声が拾えればいいんだけど、そんな装備が付いているわけじゃないしな。
王城の周囲をぐるりと見て回るがこれといった情報を得る事は出来なかった。
丁度その時二匹のカラントイーグルが俺の部屋に帰ってきたのを感じ、そのままTホークをリリースする。
「おかえり、よくやったな」
ワイルドラットからダラスのペンとアスターの歯ブラシを受け取った俺は、ワイルドラットとカラントイーグルもリリースした。
そしてそのままの足で隣の部屋で寝ているサリアを訪ねた。
数度扉をノックすると、眠そうな目をさらに眠そうにしながらサリアが出てきた。
「ふぁ……ああふ。どうしたの?」
「あの、これを」
「あぁ、例の持ち物ね。しかし召喚術ってのは随分と便利ね。私の研究所にも数体欲しいくらいよ」
大きなあくびをしているサリアにペンと歯ブラシを渡す。
「言ってくれればいつでもお望みのモンスターを派遣しますよ」
「あぁそうね。人材派遣もクロードの仕事だったわね。じゃあ今度お願いしようかしら」
「はい、お任せください」
サリアは少しけだるげにアイテムを受け取ると、俺を室内に招き入れた。
「それじゃ始めるわね」
「よろしくお願いします」
サリアは再び大きなあくびをしつつもペンと歯ブラシを床に置き、呪文の詠唱を始めた。
サリアの言葉に導かれるように、床に魔法陣が形成されていく。
そして二つのアイテムが淡い光に包まれ始めた。
「……うん。この二人はまだ生きてるわ。よかったわね」
「はい!」
「そしたら二人の位置情報をあなたに転写するわ」
「え? うわっ!」
サリアが言い終わるか終わらないかの刹那に視界が激しく明滅し、頭の中に二つの存在が流れ込んでくる。
「この術式は解除するまで二人の位置を追い続けるわ。なんとなく分かるでしょう?」
「はい……ここから南の方角ですね」
「今は戦闘中じゃあないみたいだけど、急いだほうがいいのは変わりない」
「そうですね」
また一つ大きくあくびをしたサリアは目を擦り、寝る前に入れていたのであろう紅茶を一息に飲み干した。
「戻ったぜ」
「お待たせしたー!」
そのタイミングでダレクとカランが部屋に入ってきた。
「進捗はどうだ?」
「二人の居場所は特定しました」
「おー! やったねー、じゃサクッと行っちゃおっかー」
「はい。よろしくお願いします」
「二人は遠いのか?」
「ここから南に五十キロ、といったところですね」
「カイオワならすぐだねー」
「だな。カイオワで現地に突っ込むか? それとも近場で降りて徒歩でいくか?」
「そのまま現地に乗り込みます。戦闘中であればタロスを投入、革命軍を牽制しつつ二人の元に向かいます」
「うふふふ……何を撃とうかしら……」
「広域魔法は遠慮してくださいね」
「分かってるわよう」
そしてダラスの部屋の窓のさんに着地したカラントイーグルは、その嘴を使ってコツコツと窓ガラスを叩く。
中にダラスがいる様子はないので、そのまま窓ガラスを割ってワイルドラットを侵入させる。
ワイルドラットはちょろちょろと部屋の中を徘徊し、テーブルの上に転がっていたダラスのペンを咥えて戻ってきた。
ワイルドラットを回収したカラントイーグルへ先に帰投せよと指示を飛ばした。
そしてもう一体のカラントイーグルの同じようにアスターの部屋に侵入、アスターの部屋は綺麗に整頓されていて生活感があまり感じられない部屋だった。
それによりワイルドラットは自分が咥えられる程度の大きさの目ぼしいアイテムが見当たらず、途方にくれつつも再度キョロキョロと部屋を見回した。
長いひげをひくひくと動かしていたワイルドラットは、何かを見つけたように尻尾を上げて玄関の方へかけていった。
数秒後に戻ってきたワイルドラットは、その口に歯ブラシを咥えていた。
無事目的を果たしたワイルドラットを回収して、カラントイーグルは俺の所へと引き返した。
そしてTホークも帰投させようと思ったが、Tホークには軍部と王城周辺を偵察してもらうことにした。
革命軍はここまで侵攻してきてはいないようで、首都の有様と比べると実に綺麗で内戦中とは思えないほどだ。
軍の人間は普通に歩いているし、残ったモンスターの姿もある。
そのままTホークをふよふよと移動させて行くが、残念ながらダラスやアスターの姿は見当たらない。
本当なら王城の内部に潜入させたいのだが、そんな事をすれば確実に見つかってしまう。
見つかった所で俺に被害はないし、一般兵の足がTホークの速度に追い付けるわけもない。
(どうするか……)
いや、やめておこう。
Tホークで音声が拾えればいいんだけど、そんな装備が付いているわけじゃないしな。
王城の周囲をぐるりと見て回るがこれといった情報を得る事は出来なかった。
丁度その時二匹のカラントイーグルが俺の部屋に帰ってきたのを感じ、そのままTホークをリリースする。
「おかえり、よくやったな」
ワイルドラットからダラスのペンとアスターの歯ブラシを受け取った俺は、ワイルドラットとカラントイーグルもリリースした。
そしてそのままの足で隣の部屋で寝ているサリアを訪ねた。
数度扉をノックすると、眠そうな目をさらに眠そうにしながらサリアが出てきた。
「ふぁ……ああふ。どうしたの?」
「あの、これを」
「あぁ、例の持ち物ね。しかし召喚術ってのは随分と便利ね。私の研究所にも数体欲しいくらいよ」
大きなあくびをしているサリアにペンと歯ブラシを渡す。
「言ってくれればいつでもお望みのモンスターを派遣しますよ」
「あぁそうね。人材派遣もクロードの仕事だったわね。じゃあ今度お願いしようかしら」
「はい、お任せください」
サリアは少しけだるげにアイテムを受け取ると、俺を室内に招き入れた。
「それじゃ始めるわね」
「よろしくお願いします」
サリアは再び大きなあくびをしつつもペンと歯ブラシを床に置き、呪文の詠唱を始めた。
サリアの言葉に導かれるように、床に魔法陣が形成されていく。
そして二つのアイテムが淡い光に包まれ始めた。
「……うん。この二人はまだ生きてるわ。よかったわね」
「はい!」
「そしたら二人の位置情報をあなたに転写するわ」
「え? うわっ!」
サリアが言い終わるか終わらないかの刹那に視界が激しく明滅し、頭の中に二つの存在が流れ込んでくる。
「この術式は解除するまで二人の位置を追い続けるわ。なんとなく分かるでしょう?」
「はい……ここから南の方角ですね」
「今は戦闘中じゃあないみたいだけど、急いだほうがいいのは変わりない」
「そうですね」
また一つ大きくあくびをしたサリアは目を擦り、寝る前に入れていたのであろう紅茶を一息に飲み干した。
「戻ったぜ」
「お待たせしたー!」
そのタイミングでダレクとカランが部屋に入ってきた。
「進捗はどうだ?」
「二人の居場所は特定しました」
「おー! やったねー、じゃサクッと行っちゃおっかー」
「はい。よろしくお願いします」
「二人は遠いのか?」
「ここから南に五十キロ、といったところですね」
「カイオワならすぐだねー」
「だな。カイオワで現地に突っ込むか? それとも近場で降りて徒歩でいくか?」
「そのまま現地に乗り込みます。戦闘中であればタロスを投入、革命軍を牽制しつつ二人の元に向かいます」
「うふふふ……何を撃とうかしら……」
「広域魔法は遠慮してくださいね」
「分かってるわよう」
2
お気に入りに追加
3,534
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】聖女が性格良いと誰が決めたの?
仲村 嘉高
ファンタジー
子供の頃から、出来の良い姉と可愛い妹ばかりを優遇していた両親。
そしてそれを当たり前だと、主人公を蔑んでいた姉と妹。
「出来の悪い妹で恥ずかしい」
「姉だと知られたくないから、外では声を掛けないで」
そう言ってましたよね?
ある日、聖王国に神のお告げがあった。
この世界のどこかに聖女が誕生していたと。
「うちの娘のどちらかに違いない」
喜ぶ両親と姉妹。
しかし教会へ行くと、両親や姉妹の予想と違い、聖女だと選ばれたのは「出来損ない」の次女で……。
因果応報なお話(笑)
今回は、一人称です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
精霊のお仕事
ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
【完結】
オレは前世の記憶を思い出した。
あの世で、ダメじゃん。
でもそこにいたのは地球で慣れ親しんだ神様。神様のおかげで復活がなったが…今世の記憶が飛んでいた。
まあ、オレを拾ってくれたのはいい人達だしオレは彼等と家族になって新しい人生を生きる。
ときどき神様の依頼があったり。
わけのわからん敵が出てきたりする。
たまには人間を蹂躙したりもする。?
まあいいか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~
名無し
ファンタジー
「モンド、ここから消えろ。てめえはもうパーティーに必要ねえ!」
「……え? ゴート、理由だけでも聴かせてくれ」
「黒魔導士のくせに魔力がゴミクズだからだ!」
「確かに俺の魔力はゴミ同然だが、その分を戦闘勘の鋭さで補ってきたつもりだ。それで何度も助けてやったことを忘れたのか……?」
「うるせえ、とっとと消えろ! あと、お前について悪い噂も流しておいてやったからな。役立たずの寄生虫ってよ!」
「くっ……」
問答無用でA級パーティーを追放されてしまったモンド。
彼は極小の魔力しか持たない黒魔導士だったが、持ち前の戦闘勘によってパーティーを支えてきた。しかし、地味であるがゆえに貢献を認められることは最後までなかった。
さらに悪い噂を流されたことで、冒険者としての道を諦めかけたモンドだったが、悪評高い最下級パーティーに拾われ、彼らを成功に導くことで自分の居場所や高い名声を得るようになっていく。
「魔力は低かったが、あの動きは只者ではなかった! 寄生虫なんて呼ばれてたのが信じられん……」
「地味に見えるけど、やってることはどう考えても尋常じゃなかった。こんな達人を追放するとかありえねえだろ……」
「方向性は意外ですが、これほどまでに優れた黒魔導士がいるとは……」
拾われたパーティーでその高い能力を絶賛されるモンド。
これは、様々な事情を抱える低級パーティーを、最高の戦闘勘を持つモンドが成功に導いていく物語である……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
婚約破棄は誰が為の
瀬織董李
ファンタジー
学園の卒業パーティーで起こった婚約破棄。
宣言した王太子は気付いていなかった。
この婚約破棄を誰よりも望んでいたのが、目の前の令嬢であることを……
10話程度の予定。1話約千文字です
10/9日HOTランキング5位
10/10HOTランキング1位になりました!
ありがとうございます!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
はぁ?とりあえず寝てていい?
夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。
※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる