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54 スカウト
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「ダレクさんはいらっしゃいますか!」
俺が飛び込んだのは魔王城の一角にある修練場。
そこでは大勢の魔族が剣を振り下ろしていた。
魔族達の視線が一斉に俺に注がれるなか、一度軽くお辞儀をして修練場へと入った。
練習の邪魔にならないように隅に移動してダレクの姿を探す。
「よぉ。クロードじゃないか。どうした?」
すると修練場の奥から当の本人が手を振ってあらわれた。
「あ、ダレクさん。今日はちょっと折り入ってお話がありまして」
「話?」
「はい」
「まぁ立ち話もなんだ。付いてきてくれ」
そう言って案内されたのは修練場の奥にある小さな個室だった。
応接室とも違う、ちょっとした休憩スペースなんだろう。
俺はそこの一角にある小さなソファに座らされた。
「それで、話ってのは?」
ダレクは二つの湯気立つマグカップを手に対面に座り、一つを俺に渡してきた。
中にはコーヒーが入れてあり、いい香りが鼻に抜ける。
「はい。実はダレクさんのお力をお借りしたいのです」
「俺の力……?」
「はい。実は今、俺の故郷であるテイル王国で革命が起きて内戦が続いています。そこでどうしても助けたい人がいるんです」
「ほぉ……? 女か?」
「い、いえ、違います……どっちかっていうとおっさんです。俺が幼い頃から世話になった人でして、その人の力がこれから必要になりそうなのでどうしても」
「ふむ……そいつはクロードの召喚に何らかの関わりがあるって事か?」
「え、な、何で分かるんですか」
「普通に考えりゃ分かる事だろ。それで?」
「あ、はい。それでですね、俺は人材派遣という部署も担当していまして。よければ俺と一緒にテイル王国に来て欲しいんです」
「んー……なるほど。だが俺はこれでも軍属なんだが、部署が変わるって事か?」
「いえ、そうではありません。この一時雇用変更届にサインしてくれれば俺の要件が終わり次第元の軍属に戻ります」
そう言って俺は懐から一枚の用紙を取り出した。
そこには数行の説明と承認のサイン欄があるシンプルなもの。
俺の配属が決まった際、カルディオールから送られてきた書類の一つだった。
この一時雇用変更届があれば、どの部署にいる人材でも一時的に俺の元に、派遣する人員の一人として付いてもらう事が可能になる。
もちろん本人の承諾が必須ではあるけれど。
元々人材派遣は人手の足りない部署に、俺が召喚したモンスターを送るという事をやっていた。
そのおかげで、魔王城の中でもだいぶ認知度が上がっていると自分では思っている。
「ふむふむ……クロードの言ってる事は嘘じゃないみたいだな……ま、いいぜ。今はデカイ争いもないし、ぶっちゃけ暇してたんだ」
「本当ですか! ありがとうございます!」
「おう! おっさんだろうがお姫様だろうが助けてやろうぜ!」
そう言ってダレクは用紙にペンを走らせてくれた。
これでまずは一人。
何もダレクと俺の二人で内戦真っ只中のテイル王国に突っ込むわけじゃない。
誘う人員は後二人、賢者カレンと大魔導サリアだ。
魔王城の中で俺とパイプのある人間はその三人しかいない。
じゃあその四人だけで行くのかと聞かれたら俺はノーと答える。
俺には秘策があるのだ。
その秘策は既に実証済み、これがあればクレアもきっと首を縦に振ってくれるだろう。
俺が飛び込んだのは魔王城の一角にある修練場。
そこでは大勢の魔族が剣を振り下ろしていた。
魔族達の視線が一斉に俺に注がれるなか、一度軽くお辞儀をして修練場へと入った。
練習の邪魔にならないように隅に移動してダレクの姿を探す。
「よぉ。クロードじゃないか。どうした?」
すると修練場の奥から当の本人が手を振ってあらわれた。
「あ、ダレクさん。今日はちょっと折り入ってお話がありまして」
「話?」
「はい」
「まぁ立ち話もなんだ。付いてきてくれ」
そう言って案内されたのは修練場の奥にある小さな個室だった。
応接室とも違う、ちょっとした休憩スペースなんだろう。
俺はそこの一角にある小さなソファに座らされた。
「それで、話ってのは?」
ダレクは二つの湯気立つマグカップを手に対面に座り、一つを俺に渡してきた。
中にはコーヒーが入れてあり、いい香りが鼻に抜ける。
「はい。実はダレクさんのお力をお借りしたいのです」
「俺の力……?」
「はい。実は今、俺の故郷であるテイル王国で革命が起きて内戦が続いています。そこでどうしても助けたい人がいるんです」
「ほぉ……? 女か?」
「い、いえ、違います……どっちかっていうとおっさんです。俺が幼い頃から世話になった人でして、その人の力がこれから必要になりそうなのでどうしても」
「ふむ……そいつはクロードの召喚に何らかの関わりがあるって事か?」
「え、な、何で分かるんですか」
「普通に考えりゃ分かる事だろ。それで?」
「あ、はい。それでですね、俺は人材派遣という部署も担当していまして。よければ俺と一緒にテイル王国に来て欲しいんです」
「んー……なるほど。だが俺はこれでも軍属なんだが、部署が変わるって事か?」
「いえ、そうではありません。この一時雇用変更届にサインしてくれれば俺の要件が終わり次第元の軍属に戻ります」
そう言って俺は懐から一枚の用紙を取り出した。
そこには数行の説明と承認のサイン欄があるシンプルなもの。
俺の配属が決まった際、カルディオールから送られてきた書類の一つだった。
この一時雇用変更届があれば、どの部署にいる人材でも一時的に俺の元に、派遣する人員の一人として付いてもらう事が可能になる。
もちろん本人の承諾が必須ではあるけれど。
元々人材派遣は人手の足りない部署に、俺が召喚したモンスターを送るという事をやっていた。
そのおかげで、魔王城の中でもだいぶ認知度が上がっていると自分では思っている。
「ふむふむ……クロードの言ってる事は嘘じゃないみたいだな……ま、いいぜ。今はデカイ争いもないし、ぶっちゃけ暇してたんだ」
「本当ですか! ありがとうございます!」
「おう! おっさんだろうがお姫様だろうが助けてやろうぜ!」
そう言ってダレクは用紙にペンを走らせてくれた。
これでまずは一人。
何もダレクと俺の二人で内戦真っ只中のテイル王国に突っ込むわけじゃない。
誘う人員は後二人、賢者カレンと大魔導サリアだ。
魔王城の中で俺とパイプのある人間はその三人しかいない。
じゃあその四人だけで行くのかと聞かれたら俺はノーと答える。
俺には秘策があるのだ。
その秘策は既に実証済み、これがあればクレアもきっと首を縦に振ってくれるだろう。
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