ブラック王国軍から脱退した召喚士、前世の記憶が蘇り現代兵器も召喚出来るようになりました

登龍乃月

文字の大きさ
上 下
54 / 73

54 スカウト

しおりを挟む
「ダレクさんはいらっしゃいますか!」

 俺が飛び込んだのは魔王城の一角にある修練場。
 そこでは大勢の魔族が剣を振り下ろしていた。
 魔族達の視線が一斉に俺に注がれるなか、一度軽くお辞儀をして修練場へと入った。
 練習の邪魔にならないように隅に移動してダレクの姿を探す。

「よぉ。クロードじゃないか。どうした?」

 すると修練場の奥から当の本人が手を振ってあらわれた。

「あ、ダレクさん。今日はちょっと折り入ってお話がありまして」
「話?」
「はい」
「まぁ立ち話もなんだ。付いてきてくれ」

 そう言って案内されたのは修練場の奥にある小さな個室だった。
 応接室とも違う、ちょっとした休憩スペースなんだろう。
 俺はそこの一角にある小さなソファに座らされた。

「それで、話ってのは?」

 ダレクは二つの湯気立つマグカップを手に対面に座り、一つを俺に渡してきた。
 中にはコーヒーが入れてあり、いい香りが鼻に抜ける。
 
「はい。実はダレクさんのお力をお借りしたいのです」
「俺の力……?」
「はい。実は今、俺の故郷であるテイル王国で革命が起きて内戦が続いています。そこでどうしても助けたい人がいるんです」
「ほぉ……? 女か?」
「い、いえ、違います……どっちかっていうとおっさんです。俺が幼い頃から世話になった人でして、その人の力がこれから必要になりそうなのでどうしても」
「ふむ……そいつはクロードの召喚に何らかの関わりがあるって事か?」
「え、な、何で分かるんですか」
「普通に考えりゃ分かる事だろ。それで?」
「あ、はい。それでですね、俺は人材派遣という部署も担当していまして。よければ俺と一緒にテイル王国に来て欲しいんです」
「んー……なるほど。だが俺はこれでも軍属なんだが、部署が変わるって事か?」
「いえ、そうではありません。この一時雇用変更届にサインしてくれれば俺の要件が終わり次第元の軍属に戻ります」
 
 そう言って俺は懐から一枚の用紙を取り出した。
 そこには数行の説明と承認のサイン欄があるシンプルなもの。
 俺の配属が決まった際、カルディオールから送られてきた書類の一つだった。
 この一時雇用変更届があれば、どの部署にいる人材でも一時的に俺の元に、派遣する人員の一人として付いてもらう事が可能になる。
 もちろん本人の承諾が必須ではあるけれど。
 元々人材派遣は人手の足りない部署に、俺が召喚したモンスターを送るという事をやっていた。
 そのおかげで、魔王城の中でもだいぶ認知度が上がっていると自分では思っている。
 
「ふむふむ……クロードの言ってる事は嘘じゃないみたいだな……ま、いいぜ。今はデカイ争いもないし、ぶっちゃけ暇してたんだ」
「本当ですか! ありがとうございます!」
「おう! おっさんだろうがお姫様だろうが助けてやろうぜ!」

 そう言ってダレクは用紙にペンを走らせてくれた。
 これでまずは一人。
 何もダレクと俺の二人で内戦真っ只中のテイル王国に突っ込むわけじゃない。
 誘う人員は後二人、賢者カレンと大魔導サリアだ。
 魔王城の中で俺とパイプのある人間はその三人しかいない。
 じゃあその四人だけで行くのかと聞かれたら俺はノーと答える。
 俺には秘策があるのだ。
 その秘策は既に実証済み、これがあればクレアもきっと首を縦に振ってくれるだろう。
しおりを挟む
感想 123

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】聖女が性格良いと誰が決めたの?

仲村 嘉高
ファンタジー
子供の頃から、出来の良い姉と可愛い妹ばかりを優遇していた両親。 そしてそれを当たり前だと、主人公を蔑んでいた姉と妹。 「出来の悪い妹で恥ずかしい」 「姉だと知られたくないから、外では声を掛けないで」 そう言ってましたよね? ある日、聖王国に神のお告げがあった。 この世界のどこかに聖女が誕生していたと。 「うちの娘のどちらかに違いない」 喜ぶ両親と姉妹。 しかし教会へ行くと、両親や姉妹の予想と違い、聖女だと選ばれたのは「出来損ない」の次女で……。 因果応報なお話(笑) 今回は、一人称です。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

前世の幸福ポイントを使用してチート冒険者やってます。

サツキ コウ
ファンタジー
俗に言う異世界転生物。 人生の幸福ポイントを人一倍残した状態で不慮の死を遂げた主人公が、 前世のポイントを使ってチート化! 新たな人生では柵に囚われない為に一流の冒険者を目指す。

精霊のお仕事

ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
【完結】 オレは前世の記憶を思い出した。 あの世で、ダメじゃん。 でもそこにいたのは地球で慣れ親しんだ神様。神様のおかげで復活がなったが…今世の記憶が飛んでいた。 まあ、オレを拾ってくれたのはいい人達だしオレは彼等と家族になって新しい人生を生きる。 ときどき神様の依頼があったり。 わけのわからん敵が出てきたりする。 たまには人間を蹂躙したりもする。? まあいいか。

結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」 「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」 「ま、まってくださ……!」 「誰が待つかよバーーーーーカ!」 「そっちは危な……っあ」

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

処理中です...