42 / 73
42 ホーク
しおりを挟む
「そんな事があったんですね……ひどい方です。人界はみなそうなのでしょうか」
「うーん……どうかなぁ、他の国の軍部はブルーリバーしか知らないし、知ったと言ってもホルンストという一個人の考えだけだ。それだけで全てを判断するのは難しいね」
「そうですよね……」
「ミーニャは人間の事をどう思っているんだ?」
「どう、とは?」
「ほら、弱いくせによく吠えるとかさ」
「あー、うーん、どうでしょう。私の出身は北にあるのですが、そこ人間がくることはないんです。ドがつくほどの田舎ですからね。だから正直可も無く不可も無く、といった所でしょうか」
「魔界は広いもんな。そういう事もあるか」
「私の出身は雪国で、これといった娯楽もない、平々凡々とした村でした。とっても綺麗なんですよ? あたり一面銀雪に覆われて、そこで入る温泉なんてそれはもう格別なんです」
「雪かあ、見た事ないなぁ」
「そうなんですか!? じゃあ今度私の村に来てください。案内しますよ!」
「あはは! 機会があったらお願いしようかな」
「はい、ぜひ!」
ミーニャはワンピースから突き出した尻尾をふりふりと揺らし、とても楽しそうだ。
クロードも朗らかに笑っている。
あんな顔を見るのは初めてだな。
人事ながら私も嬉しくなってしまう。
そんな二人の光景を、ハイドで隠れたみんなも同じように眺めて、思い思いの感情を抱いているのだろう。
きっとクレア様はハンカチを噛みしめて涙を浮かべていることだろう。
あの人は変に涙もろいところがあるからな。
ここに誰が来ているかは分からないが、確実にゴリアテとカルディオールはいる。
クレイモアはどうか分からんな、あやつは色恋よりも戦時訓練の方が性に合っていると言っていたし。
姉であるクレア様とは真逆の趣味をしているな。
ちなみにここの金木犀達はゴリアテが人界から仕入れた種を栽培し、試験的に植え込みとして使っている。
幾度となく嗅ぐが、金木犀の香りはとても良いものだ。
二人のいい感じの空気にも、金木犀はきっと役立っているはずだ。
夕日は沈み、青と黒が混じり合った空に星の煌めきと月の姿が浮かぶ。
料理も四種目に入っており、クロードの緊張もだいぶ解れているようだ。
「あの、お聞きしてもいいですか?」
「ん?」
「クロードさんは異世界のモンスターも召喚できるともっぱらの噂なのですが……」
「本当だよ」
「おおー! み、みたいです!」
「みたいって……うーん……」
「駄目なんですか?」
「駄目ではないけど、可愛らしいもんじゃないよ?」
「構いません! 異世界のモンスターがどのような姿形なのかが気になって……話には聞いているんですよ? エイブラなんとかが魔王城の外壁をぶち抜いたとか、魔王軍の部隊をそっくりそのまま遠い場所へ運んだとか」
「あー……はは……うーん、小型……小型……何かあるかな……」
目をキラキラさせてせがむミーニャは子供のようで、クロードもせがまれて満更ではない様子。
だがクロードは頭を傾げ、何か悩んでいるようだった。
そして何か閃いたように顔を上げた。
「じゃあ小さいのを」
「やった! ありがとうございます!」
「サモン:RQ-16 T–ホーク」
クロードが床に手を向けると、小さな魔法陣が浮かび上がり、せりあがるようにソレは姿を現した。
「これは……?」
「T–ホークって言ってね、攻撃能力はないけど偵察とか監視とかをメインにしてる無人機だよ」
「へぇー……小さい子なのに凄いですね。まだ赤ちゃんですか?」
「赤ちゃん……いや、これはこのサイズが、うん、まぁ大人かな」
「ちょっと大きなピクシーのようですね。かわいいです! 触ってもいいですか? 噛みませんか?」
「大丈夫だよ、噛まない噛まない」
「わあい! こんにちはホークちゃん、いいこいいこ」
ミーニャは椅子から降り、クロードの召喚したホークなるモンスターの頭部を優しく撫でる。
撫でられても微動だにしない所をみると、しっかりと教育されているようだ。
少し変わった見た目ではあるが、見ているとなんとなく愛着が湧いてきそうなフォルムをしている。
あれがペットではなく、監視や偵察を担うというのだから侮れない。
「飛ばしてみようか」
クロードが指を弾くとホークは僅かに動き、そのままゆっくりと上昇を始めた。
「凄い! 予備動作無しで飛び上がるなんて!」
ホークはミーニャの頭上まであがり、その場でくるくると旋回を始めた。
まるでダンスをしているピクシーのようにも思える。
(凄いのう、我も触りたいのう)
(クレア様シッ!)
(ぬ、すまぬ)
私のすぐ横でクレア様のお声が聞こえた。
まさか横にいるとは思わず、私も少し驚いてしまった。
確かにクレア様のいうこともわかる。
是非とも触ってみたいものだ。
「うーん……どうかなぁ、他の国の軍部はブルーリバーしか知らないし、知ったと言ってもホルンストという一個人の考えだけだ。それだけで全てを判断するのは難しいね」
「そうですよね……」
「ミーニャは人間の事をどう思っているんだ?」
「どう、とは?」
「ほら、弱いくせによく吠えるとかさ」
「あー、うーん、どうでしょう。私の出身は北にあるのですが、そこ人間がくることはないんです。ドがつくほどの田舎ですからね。だから正直可も無く不可も無く、といった所でしょうか」
「魔界は広いもんな。そういう事もあるか」
「私の出身は雪国で、これといった娯楽もない、平々凡々とした村でした。とっても綺麗なんですよ? あたり一面銀雪に覆われて、そこで入る温泉なんてそれはもう格別なんです」
「雪かあ、見た事ないなぁ」
「そうなんですか!? じゃあ今度私の村に来てください。案内しますよ!」
「あはは! 機会があったらお願いしようかな」
「はい、ぜひ!」
ミーニャはワンピースから突き出した尻尾をふりふりと揺らし、とても楽しそうだ。
クロードも朗らかに笑っている。
あんな顔を見るのは初めてだな。
人事ながら私も嬉しくなってしまう。
そんな二人の光景を、ハイドで隠れたみんなも同じように眺めて、思い思いの感情を抱いているのだろう。
きっとクレア様はハンカチを噛みしめて涙を浮かべていることだろう。
あの人は変に涙もろいところがあるからな。
ここに誰が来ているかは分からないが、確実にゴリアテとカルディオールはいる。
クレイモアはどうか分からんな、あやつは色恋よりも戦時訓練の方が性に合っていると言っていたし。
姉であるクレア様とは真逆の趣味をしているな。
ちなみにここの金木犀達はゴリアテが人界から仕入れた種を栽培し、試験的に植え込みとして使っている。
幾度となく嗅ぐが、金木犀の香りはとても良いものだ。
二人のいい感じの空気にも、金木犀はきっと役立っているはずだ。
夕日は沈み、青と黒が混じり合った空に星の煌めきと月の姿が浮かぶ。
料理も四種目に入っており、クロードの緊張もだいぶ解れているようだ。
「あの、お聞きしてもいいですか?」
「ん?」
「クロードさんは異世界のモンスターも召喚できるともっぱらの噂なのですが……」
「本当だよ」
「おおー! み、みたいです!」
「みたいって……うーん……」
「駄目なんですか?」
「駄目ではないけど、可愛らしいもんじゃないよ?」
「構いません! 異世界のモンスターがどのような姿形なのかが気になって……話には聞いているんですよ? エイブラなんとかが魔王城の外壁をぶち抜いたとか、魔王軍の部隊をそっくりそのまま遠い場所へ運んだとか」
「あー……はは……うーん、小型……小型……何かあるかな……」
目をキラキラさせてせがむミーニャは子供のようで、クロードもせがまれて満更ではない様子。
だがクロードは頭を傾げ、何か悩んでいるようだった。
そして何か閃いたように顔を上げた。
「じゃあ小さいのを」
「やった! ありがとうございます!」
「サモン:RQ-16 T–ホーク」
クロードが床に手を向けると、小さな魔法陣が浮かび上がり、せりあがるようにソレは姿を現した。
「これは……?」
「T–ホークって言ってね、攻撃能力はないけど偵察とか監視とかをメインにしてる無人機だよ」
「へぇー……小さい子なのに凄いですね。まだ赤ちゃんですか?」
「赤ちゃん……いや、これはこのサイズが、うん、まぁ大人かな」
「ちょっと大きなピクシーのようですね。かわいいです! 触ってもいいですか? 噛みませんか?」
「大丈夫だよ、噛まない噛まない」
「わあい! こんにちはホークちゃん、いいこいいこ」
ミーニャは椅子から降り、クロードの召喚したホークなるモンスターの頭部を優しく撫でる。
撫でられても微動だにしない所をみると、しっかりと教育されているようだ。
少し変わった見た目ではあるが、見ているとなんとなく愛着が湧いてきそうなフォルムをしている。
あれがペットではなく、監視や偵察を担うというのだから侮れない。
「飛ばしてみようか」
クロードが指を弾くとホークは僅かに動き、そのままゆっくりと上昇を始めた。
「凄い! 予備動作無しで飛び上がるなんて!」
ホークはミーニャの頭上まであがり、その場でくるくると旋回を始めた。
まるでダンスをしているピクシーのようにも思える。
(凄いのう、我も触りたいのう)
(クレア様シッ!)
(ぬ、すまぬ)
私のすぐ横でクレア様のお声が聞こえた。
まさか横にいるとは思わず、私も少し驚いてしまった。
確かにクレア様のいうこともわかる。
是非とも触ってみたいものだ。
2
お気に入りに追加
3,534
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
婚約破棄は誰が為の
瀬織董李
ファンタジー
学園の卒業パーティーで起こった婚約破棄。
宣言した王太子は気付いていなかった。
この婚約破棄を誰よりも望んでいたのが、目の前の令嬢であることを……
10話程度の予定。1話約千文字です
10/9日HOTランキング5位
10/10HOTランキング1位になりました!
ありがとうございます!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです
竹桜
ファンタジー
無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。
だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。
その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】聖女が性格良いと誰が決めたの?
仲村 嘉高
ファンタジー
子供の頃から、出来の良い姉と可愛い妹ばかりを優遇していた両親。
そしてそれを当たり前だと、主人公を蔑んでいた姉と妹。
「出来の悪い妹で恥ずかしい」
「姉だと知られたくないから、外では声を掛けないで」
そう言ってましたよね?
ある日、聖王国に神のお告げがあった。
この世界のどこかに聖女が誕生していたと。
「うちの娘のどちらかに違いない」
喜ぶ両親と姉妹。
しかし教会へ行くと、両親や姉妹の予想と違い、聖女だと選ばれたのは「出来損ない」の次女で……。
因果応報なお話(笑)
今回は、一人称です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
はぁ?とりあえず寝てていい?
夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。
※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる