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40 うーん
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クロードとミーニャが席についたころ、廊下では。
(馬鹿野郎! 何声出してんだ!)
(いててて! すみません親方!)
(静かにするのじゃ、お前ら殺すぞ)
((申し訳ございませんクレア様))
誰もいない廊下にヒソヒソと謎の声が響いたと思えば、廊下の一部が揺らめくように動いた。
そして小さく扉が開き、閉じた。
扉を背にしているクロードとミーニャはそれに気付いた様子は無い。
よくよく見れば金木犀の植え込みの前が微妙に揺らめいており、しかもそれが複数見受けられる。
「いらっしゃいませ、クロード様、ミーニャ様、本日のコースを担当させていただきます、シェフマスターブレイブでございます」
「……様?」
いつもの様子とはまるっきり違うブレイブの態度に、クロードは目を丸くしている。
テーブルの上には綺麗にたたまれたナプキンと銀の皿、そして何本ものスプーンとフォーク、ナイフが置かれていた。
「ここで特別コースをお願いすると、ブレイブ様とアストレア様から直々にご挨拶をいただけて、なおかつブレイブ様から尊敬語でのおもてなしを受けることが出来るんです。結構人気なコースなんですよ? ね? ブレイブ様?」
「いかにも。多くの紳士淑女の皆様方にご贔屓していただいております」
「そ、そうなんですか……」
クロードからしてみれば、直属の上司から敬語で対応されている状態であり、やはり少し戸惑いがあるように見える。
だがクロードよ、お前、今の娘の言葉で何も気付かないのか?
気付かないならそれはそれでいいのだがな。
まぁいい。
私は氷のアストレア、その程度の事で動揺などしたりはせぬ。
と言うことで先ほどからナレーションを務めさせていただいている氷のアストレアだ。
なにぶんこういった事は初めてなのでな、少し緊張している。
今現在、四階テラスは厳重な警備がしかれており、あり一匹とて通す事はないだろう。
ここには四天王全員と魔王クレア様、そしてクロードと懇意にしている者達が集まっている。
中には先日作戦を共にした三人の人間も同席している。
とは言っても、集まっているみなはクレア様の手によりハイドの術をかけられているので、クロードもミーニャもそれに気付く事はない。
こういった部下のプライベートを覗くような行為はあまり好きでは無いのだが、クレア様やカルディオールはこういう事が大好きだ。
クレア様は世継ぎを作る気などさらさらないくせに、他人の色恋事になるとまるで自分のことのように喜ぶ。
そこまではいい。
だがその成り行きを見れるならば特等席で鑑賞したいというのだ。
不手際があれば心の中で熱いエールを送って一人でハラハラし、なんでそんな事を言ってしまうんだ、と頭を抱える。
クレア様がこういった覗き見のような行為を始めたのはいつのことだったか、それは定かでは無いが、魔王城でカップルが誕生しそうだという噂を聞きつけたら最後、全ての業務を放り出してしまう。
そして二人のことの成り行きを見守るのだ。
いつしかそれは魔王城全体の一大イベントになってしまい、現在のように四天王及びその対象者が懇意にしている者達へ、伝達される。
もちろん秘密裏にカップルになる者も多いのだが、そういう情報はなぜかカルディオールや大して仕事のない諜報部がよく集めている。
よくないことだとはみな自覚している。
だがしかし……なぜかやめられないのだという。
娯楽の少ない魔王城では、恋愛というのは一大イベント、闘技場での戦いと同じように燃え上がる。
なにぶん人間と違い、魔族が子を為すにはそれなりの時間が必要だ。
ゆえに、だからこそ、色恋というのは魔族にとって非常に重要な通過儀礼なのだ。
魔王城には多種多様な種族が混在しているために、ハーフやクオーターという混血が生まれやすい。
恋に種族など関係ないのだ。
自分で何を言っているか分からなくなってきたが、みながここに集まっているのは決して冷やかしや興味本位というわけではない。
みな一様に真面目なのだ。
と、私が尺稼ぎをしている間にブレイブが一品目を持ってクロードとミーニャの前に立った。
(馬鹿野郎! 何声出してんだ!)
(いててて! すみません親方!)
(静かにするのじゃ、お前ら殺すぞ)
((申し訳ございませんクレア様))
誰もいない廊下にヒソヒソと謎の声が響いたと思えば、廊下の一部が揺らめくように動いた。
そして小さく扉が開き、閉じた。
扉を背にしているクロードとミーニャはそれに気付いた様子は無い。
よくよく見れば金木犀の植え込みの前が微妙に揺らめいており、しかもそれが複数見受けられる。
「いらっしゃいませ、クロード様、ミーニャ様、本日のコースを担当させていただきます、シェフマスターブレイブでございます」
「……様?」
いつもの様子とはまるっきり違うブレイブの態度に、クロードは目を丸くしている。
テーブルの上には綺麗にたたまれたナプキンと銀の皿、そして何本ものスプーンとフォーク、ナイフが置かれていた。
「ここで特別コースをお願いすると、ブレイブ様とアストレア様から直々にご挨拶をいただけて、なおかつブレイブ様から尊敬語でのおもてなしを受けることが出来るんです。結構人気なコースなんですよ? ね? ブレイブ様?」
「いかにも。多くの紳士淑女の皆様方にご贔屓していただいております」
「そ、そうなんですか……」
クロードからしてみれば、直属の上司から敬語で対応されている状態であり、やはり少し戸惑いがあるように見える。
だがクロードよ、お前、今の娘の言葉で何も気付かないのか?
気付かないならそれはそれでいいのだがな。
まぁいい。
私は氷のアストレア、その程度の事で動揺などしたりはせぬ。
と言うことで先ほどからナレーションを務めさせていただいている氷のアストレアだ。
なにぶんこういった事は初めてなのでな、少し緊張している。
今現在、四階テラスは厳重な警備がしかれており、あり一匹とて通す事はないだろう。
ここには四天王全員と魔王クレア様、そしてクロードと懇意にしている者達が集まっている。
中には先日作戦を共にした三人の人間も同席している。
とは言っても、集まっているみなはクレア様の手によりハイドの術をかけられているので、クロードもミーニャもそれに気付く事はない。
こういった部下のプライベートを覗くような行為はあまり好きでは無いのだが、クレア様やカルディオールはこういう事が大好きだ。
クレア様は世継ぎを作る気などさらさらないくせに、他人の色恋事になるとまるで自分のことのように喜ぶ。
そこまではいい。
だがその成り行きを見れるならば特等席で鑑賞したいというのだ。
不手際があれば心の中で熱いエールを送って一人でハラハラし、なんでそんな事を言ってしまうんだ、と頭を抱える。
クレア様がこういった覗き見のような行為を始めたのはいつのことだったか、それは定かでは無いが、魔王城でカップルが誕生しそうだという噂を聞きつけたら最後、全ての業務を放り出してしまう。
そして二人のことの成り行きを見守るのだ。
いつしかそれは魔王城全体の一大イベントになってしまい、現在のように四天王及びその対象者が懇意にしている者達へ、伝達される。
もちろん秘密裏にカップルになる者も多いのだが、そういう情報はなぜかカルディオールや大して仕事のない諜報部がよく集めている。
よくないことだとはみな自覚している。
だがしかし……なぜかやめられないのだという。
娯楽の少ない魔王城では、恋愛というのは一大イベント、闘技場での戦いと同じように燃え上がる。
なにぶん人間と違い、魔族が子を為すにはそれなりの時間が必要だ。
ゆえに、だからこそ、色恋というのは魔族にとって非常に重要な通過儀礼なのだ。
魔王城には多種多様な種族が混在しているために、ハーフやクオーターという混血が生まれやすい。
恋に種族など関係ないのだ。
自分で何を言っているか分からなくなってきたが、みながここに集まっているのは決して冷やかしや興味本位というわけではない。
みな一様に真面目なのだ。
と、私が尺稼ぎをしている間にブレイブが一品目を持ってクロードとミーニャの前に立った。
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