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24 どうしようもない者達
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テイル王国軍部、某所。
ブリーフィングルームに集められた面々は皆複雑な面持ちをしていた。
そこにはかつての会議、クロードが激怒した会議に居合わせた将達の姿もある。
集められたのはネクソン配下の調べによりクロードへいやがらせや不当な扱いを行なっていた者達。
勾留されてはいないものの、捕縛という不名誉な行為を受けた面々。
そんな面々をぐるりと見回し、不愉快そうに口を開くのはコザだ。
「諸君。知っての通り軍部は、テイル王国は壊滅的な打撃を受けた。そして陛下はお怒りだ。いまだかつてないほどの怒りだ」
「陛下のお怒りはごもっとも。わがテイル王国の礎を壊されたのですからな。してコザ司令、今回の事件の首謀者、テロリストクロードの行方は特定されたのですか?」
「何?」
「クロードは何らかの策を講じて国家転覆をはかり逃亡、どこかに潜伏してさらなる混乱を引き起こそうと画策しているとか」
「いやいや、クロードは隣国アルバレスの間諜と共謀し、アルバレスに亡命しているという話もあるぞ」
「アルバレスといえば小物のくせに我が国に対抗心を燃やしている弱小国ではないか。そんな所に行って何をなそうというのか」
「所詮はモンスターの管理係、大した事は出来ぬのだろうなぁ。はっはっは!」
「そもそも我々がここに集められた理由がわからん。それになぜ私が捕縛されなければならんのだ? 明らかに越権行為ではないのか?」
「ネクソンは最近調子に乗ってるのではないか? 少しばかりクロードを咎めたからと言ってなぜこんな仕打ちを受けねばならんのだ」
苦虫を噛み潰したような顔をしていたコザは柄にもなくぽかん、と口を開けて口々に好き勝手言いのける面々を見る。
そして自分が口走った言葉を思い出した。
確かにコザは事件当日、テロリストだと断定して兵士達に指示を飛ばした。
あれからコザはネクソンの拘束されて牢に入れられていたのでその後の事は分からない。
だが集まった面々の口ぶりから、クロードがテロリストだという話がまかり通ってしまっているのがわかった。
だがこの者らは少なくともネクソンらが捕縛した者達のはずで、その時に何も説明されなかったのだろうか。
この者らの言っている事がどこまで、何が真実なのかは分からない。
アルバレスに亡命? どうしてそうなる? アルバレスは魔界とは逆方向だ。
ブルーリバー皇国ならいざ知らず、アルバレスなど問題外の話だ。
それを彼らはなぜ自慢げに語れるのだろうか。
答えは簡単だ。
彼らはみな自分こそが正しいと信じ切っているからだ。
それはコザも例外ではなく、彼は国王ガイアからあれほどの仕打ちと怒りを向けられてなおその怒りの矛先が自分に向いた事が信じられなかった。
自分は何も悪い事はしていない。
クロードの勤務態度がよくないから、注意し、導いてやっていたと信じ切っているからだ。
なぜクロードが国の宝なのか、その本質を理解出来ていないコザにとって今回の一件は非常に理不尽なものだと。
しかしガイアの怒りは本物、その怒りのはけ口に司令官という立場の自分が不幸にも選ばれてしまった。
その程度の思考でしかなかったのだった。
だが王であるガイアからの指示には従わねばならない。
コザがガイアから下された指令は一つ。
クロードを探し出し、国へ連れ戻す事。
コザの頭の中にはそのために、この場に集まる面々をどう言い包めて作戦に協力させるか、という事だけだった。
「言いたい事はそれぞれあるとは思う。だが今は陛下の命が最優先だ。そのための有意義な話をしよう」
ブリーフィングルームに集められた面々は皆複雑な面持ちをしていた。
そこにはかつての会議、クロードが激怒した会議に居合わせた将達の姿もある。
集められたのはネクソン配下の調べによりクロードへいやがらせや不当な扱いを行なっていた者達。
勾留されてはいないものの、捕縛という不名誉な行為を受けた面々。
そんな面々をぐるりと見回し、不愉快そうに口を開くのはコザだ。
「諸君。知っての通り軍部は、テイル王国は壊滅的な打撃を受けた。そして陛下はお怒りだ。いまだかつてないほどの怒りだ」
「陛下のお怒りはごもっとも。わがテイル王国の礎を壊されたのですからな。してコザ司令、今回の事件の首謀者、テロリストクロードの行方は特定されたのですか?」
「何?」
「クロードは何らかの策を講じて国家転覆をはかり逃亡、どこかに潜伏してさらなる混乱を引き起こそうと画策しているとか」
「いやいや、クロードは隣国アルバレスの間諜と共謀し、アルバレスに亡命しているという話もあるぞ」
「アルバレスといえば小物のくせに我が国に対抗心を燃やしている弱小国ではないか。そんな所に行って何をなそうというのか」
「所詮はモンスターの管理係、大した事は出来ぬのだろうなぁ。はっはっは!」
「そもそも我々がここに集められた理由がわからん。それになぜ私が捕縛されなければならんのだ? 明らかに越権行為ではないのか?」
「ネクソンは最近調子に乗ってるのではないか? 少しばかりクロードを咎めたからと言ってなぜこんな仕打ちを受けねばならんのだ」
苦虫を噛み潰したような顔をしていたコザは柄にもなくぽかん、と口を開けて口々に好き勝手言いのける面々を見る。
そして自分が口走った言葉を思い出した。
確かにコザは事件当日、テロリストだと断定して兵士達に指示を飛ばした。
あれからコザはネクソンの拘束されて牢に入れられていたのでその後の事は分からない。
だが集まった面々の口ぶりから、クロードがテロリストだという話がまかり通ってしまっているのがわかった。
だがこの者らは少なくともネクソンらが捕縛した者達のはずで、その時に何も説明されなかったのだろうか。
この者らの言っている事がどこまで、何が真実なのかは分からない。
アルバレスに亡命? どうしてそうなる? アルバレスは魔界とは逆方向だ。
ブルーリバー皇国ならいざ知らず、アルバレスなど問題外の話だ。
それを彼らはなぜ自慢げに語れるのだろうか。
答えは簡単だ。
彼らはみな自分こそが正しいと信じ切っているからだ。
それはコザも例外ではなく、彼は国王ガイアからあれほどの仕打ちと怒りを向けられてなおその怒りの矛先が自分に向いた事が信じられなかった。
自分は何も悪い事はしていない。
クロードの勤務態度がよくないから、注意し、導いてやっていたと信じ切っているからだ。
なぜクロードが国の宝なのか、その本質を理解出来ていないコザにとって今回の一件は非常に理不尽なものだと。
しかしガイアの怒りは本物、その怒りのはけ口に司令官という立場の自分が不幸にも選ばれてしまった。
その程度の思考でしかなかったのだった。
だが王であるガイアからの指示には従わねばならない。
コザがガイアから下された指令は一つ。
クロードを探し出し、国へ連れ戻す事。
コザの頭の中にはそのために、この場に集まる面々をどう言い包めて作戦に協力させるか、という事だけだった。
「言いたい事はそれぞれあるとは思う。だが今は陛下の命が最優先だ。そのための有意義な話をしよう」
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