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23 ブルーリバー皇国
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クロードがテイル王国から去ってしばらくの事。
テイル王国における崩壊事件は大陸中の国家の知る所となった。
大陸一の軍事力を誇っていたテイル王国には様々な国からのスパイが潜り込んでおり、事件当日には自国への報が走らされていた。
テイル王国が誇るモンスター達が反乱及び逃亡、街中を駆け回っているという異常事態は各国にとってこれ以上ない好機となっていた。
「なるほど。クロードなる人物がテイル王国より出奔、その後あの事件が起きた、と」
「はい。軍関係者、追跡部隊のグリフォン隊の一人がそう漏らしておりました」
「あのワイバーンがそれだったか」
「おそらくは」
ブルーリバー皇国はテイル王国から魔界境界までの直線上に位置し、魔界境界に隣接している国家であった。
報を持ってきた兵士の言う通り、確かにテイル王国での事件の三日前、ブルーリバー皇国上空から魔界へ高速で飛び去る一体のワイバーンが目撃されている。
「そのクロードなる人物がテロを起こした、とは考えられないのか?」
報告を受けたブルーリバー皇国国防長官がもっともな意見を言う。
テイル王国に派遣されていた各国のスパイの中には、ブルーリバー皇国のスパイも含まれている。
隣国というわけではないが、大国であるテイル王国の挙動やそれにまつわる情報などは、ブルーリバー皇国にとっても大事なものだ。
「はい。その線も考え洗ってみましたが不可能かと」
「なぜだ?」
「クロードを追跡したグリフォン部隊はテイル王国の国境まで追跡をしております。ですが国境に辿り着くまで目視出来ている間、ワイバーンは一度も着地していないようです。仮に我が国を通過した後に着地してテイル王国へ戻ったとしても」
「時間に無理がある。か。だが時限式の何かをしかけていたとは考えられんか? 逃亡した数日後にモンスターの勾留を解く何かを」
「それは、わかりかねます」
「そうか」
「ですが……これは不確かな情報なのですが」
「なんだ?」
「そのクロードがモンスター達の出生に深く関わっているとか」
「ふむ……調教師か何かか?」
「いえ、召喚士、らしいです。クロードがモンスターを召喚し、それを軍部が利用していると」
「何?」
騒ぎが起きればどこからともなく噂は立ち、火のない所に煙は立たず。
綻びを見せたテイル王国軍部の僅かな亀裂。
その僅かな亀裂から漏れ出した情報は、亀裂そのものを徐々に、しかし確実に広げていった。
その後の調査によって情報の確証を得たブルーリバー皇国は動きを見せ始めた。
テイル王国の軍事力を支えていたとされるクロード、その者を皇国に招き入れる事が出来たらどうなるのか、と。
そうなれば世界の動きは一気に変わる。
ブルーリバー皇国がテイル王国に変わってのし上がる事も可能なのではないか。
その意見は小さな波紋を生み、波紋は波となりうねりとなってブルーリバー皇国を突き動かしていく。
そして魔界へと飛び去ったクロードを自国に招致するべく動き出したのだった。
魔界は人類の敵である魔族の住う地。
そんな地に人間であるクロードがいつまでも滞在しているとは思えない。
報告によればワイバーンが飛び去ったのは魔王城の方角だ。
なんとしてもクロードを招致したい皇国は強引とも言える作戦を立案。
魔王城まで直進すれば約二週間の行軍で到着する。
魔王城に囚われている、と進言する者もいたがその意見は棄却され、魔王城までの直線距離を中心にクロードを探し出す事が決定した。
しかし屈強な魔族がいる魔界に少数精鋭で行けば壊滅は必死、弾き出された人数は約五万。
五万の軍勢がクロード捜索部隊として派遣される事になったのだった。
テイル王国における崩壊事件は大陸中の国家の知る所となった。
大陸一の軍事力を誇っていたテイル王国には様々な国からのスパイが潜り込んでおり、事件当日には自国への報が走らされていた。
テイル王国が誇るモンスター達が反乱及び逃亡、街中を駆け回っているという異常事態は各国にとってこれ以上ない好機となっていた。
「なるほど。クロードなる人物がテイル王国より出奔、その後あの事件が起きた、と」
「はい。軍関係者、追跡部隊のグリフォン隊の一人がそう漏らしておりました」
「あのワイバーンがそれだったか」
「おそらくは」
ブルーリバー皇国はテイル王国から魔界境界までの直線上に位置し、魔界境界に隣接している国家であった。
報を持ってきた兵士の言う通り、確かにテイル王国での事件の三日前、ブルーリバー皇国上空から魔界へ高速で飛び去る一体のワイバーンが目撃されている。
「そのクロードなる人物がテロを起こした、とは考えられないのか?」
報告を受けたブルーリバー皇国国防長官がもっともな意見を言う。
テイル王国に派遣されていた各国のスパイの中には、ブルーリバー皇国のスパイも含まれている。
隣国というわけではないが、大国であるテイル王国の挙動やそれにまつわる情報などは、ブルーリバー皇国にとっても大事なものだ。
「はい。その線も考え洗ってみましたが不可能かと」
「なぜだ?」
「クロードを追跡したグリフォン部隊はテイル王国の国境まで追跡をしております。ですが国境に辿り着くまで目視出来ている間、ワイバーンは一度も着地していないようです。仮に我が国を通過した後に着地してテイル王国へ戻ったとしても」
「時間に無理がある。か。だが時限式の何かをしかけていたとは考えられんか? 逃亡した数日後にモンスターの勾留を解く何かを」
「それは、わかりかねます」
「そうか」
「ですが……これは不確かな情報なのですが」
「なんだ?」
「そのクロードがモンスター達の出生に深く関わっているとか」
「ふむ……調教師か何かか?」
「いえ、召喚士、らしいです。クロードがモンスターを召喚し、それを軍部が利用していると」
「何?」
騒ぎが起きればどこからともなく噂は立ち、火のない所に煙は立たず。
綻びを見せたテイル王国軍部の僅かな亀裂。
その僅かな亀裂から漏れ出した情報は、亀裂そのものを徐々に、しかし確実に広げていった。
その後の調査によって情報の確証を得たブルーリバー皇国は動きを見せ始めた。
テイル王国の軍事力を支えていたとされるクロード、その者を皇国に招き入れる事が出来たらどうなるのか、と。
そうなれば世界の動きは一気に変わる。
ブルーリバー皇国がテイル王国に変わってのし上がる事も可能なのではないか。
その意見は小さな波紋を生み、波紋は波となりうねりとなってブルーリバー皇国を突き動かしていく。
そして魔界へと飛び去ったクロードを自国に招致するべく動き出したのだった。
魔界は人類の敵である魔族の住う地。
そんな地に人間であるクロードがいつまでも滞在しているとは思えない。
報告によればワイバーンが飛び去ったのは魔王城の方角だ。
なんとしてもクロードを招致したい皇国は強引とも言える作戦を立案。
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しかし屈強な魔族がいる魔界に少数精鋭で行けば壊滅は必死、弾き出された人数は約五万。
五万の軍勢がクロード捜索部隊として派遣される事になったのだった。
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