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21 激闘!ライオネル!
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「第一小隊集中砲火を浴びて壊滅! 第二、第三小隊は合流し、右翼から突撃の模様!」
「くはは! いいぞいいぞ! 無理はするな! 前進と後退を繰り返してプレッシャーをかけろ!」
兵からの報告を受け、嬉々として指示を出すクレイモアを見ながら俺は何を召喚するか悩んでいた。
今回虎蜘蛛族に力添えするのは、単純に虎蜘蛛側の戦力が少ないからだ。
たまに両方を相手取って戦う事もあるらしいけど。
ウェンズデー丘陵は多数の魔法によりそこかしこにクレーターが出来ており、度重なる爆発により銀楼狐側も虎蜘蛛側も、そして魔王軍側の兵士達も派手に吹っ飛んでいるにも関わらず死傷者はまだ出ていないようだ。
あれほどの爆発や衝撃でも致命傷にならないのだから魔族の頑強さは恐るべきものだ。
ウェンズデー丘陵に散らばる兵力の規模はさほど多くないのは報告書でわかっている。
騎馬などはおらず、全てが歩兵か魔法兵だ。
なら今回は無人兵器ではなく、普通のモンスターを召喚することにしよう。
「サモン:ライオネル、サウザンドコール」
ライオネル、二頭を持つ獅子型のモンスターが俺の召喚に応えて次々とその姿を現す。
その数は千体。
「行け! ただし加減しろよ!」
『ワォオオオー!』
弾けるように飛び出したライオネル達を見送り、視線をクレイモアに移す。
「召喚士始動、だな」
「千体程度でこの戦いがどうにかなるとは思えませんけどね」
「はっはっは! 違いない! だが相手の意表をつく事は出来たぞ?」
クレイモアの指差した先を見ると、銀楼狐族が慌てふためいて蜘蛛の子を散らしたような形になっている。
「銀楼狐はあまり接近戦が得意ではないからな。あの獅子はいい撹乱になる」
爆発、吹き飛ぶライオネル達数十体。
閃光、さらに吹き飛ぶライオネル。
だがライオネル達も負けてはおらず、虎蜘蛛族や魔王軍と連携を取り始めている。
突撃で減ったライオネルはおよそ百と少し。
戦いはこれからだ。
虎蜘蛛族は当初突如現れた魔王軍とライオネルに驚いていたが、今では実に柔軟に戦っている。
糸を飛ばして魔王軍部隊のフォローに回ったり、魔法で作り出した石柱の上からライオネルと共に奇襲をしかけたりと縦横無尽に戦っていた。
――そして一日目の戦闘が終わり、魔王軍部隊は思い思いに体を休めていた。
「今回はすぐ終わりそうだな!」
「そうだなぁ! クロードのライオネルの活躍がな!」
「俺達も負けてらんねぇや!」
「俺は今日八十五人倒したぜ!」
「俺は百と二人だ!」
「やるじゃねぇかお前ら!」
隊員達は酒を手に自分の武勇を語り、仲間を褒め称えている。
魔界の戦争は実に規則正しく、午前十一時に開戦の音が鳴り響き、午後十九時には終戦の音が鳴り響く。
翌日も出動出来そうなら出動し、休養が必要だと判断されれば戦線復帰は出来なくなる。
そうして数を減らしていき、最終的に負けを認めた方が負けというもの。
これを聞くと人界の戦争が馬鹿らしくなるけれど、これが出来るのは魔族の強靭な肉体があるからだと認識している。
今日何度も起きた爆発、何人もの魔族やライオネルが吹っ飛ばされていたが、これが人間なら確実に爆発四散しているだろう。
爆発規模から言って、エイブラムスなども導入してもいいかとは思ったけど……戦車砲は貫通弾だからなぁ。
確実に死なない、という確証が無いので導入は見送っている。
やってる事は戦争なのに、死人が出たら良くなさそうな雰囲気なのが不思議というか奇妙というかなんというか。
平たく言えば派手な大運動会みたいだよな。
ちなみに魔王軍の被害は軽微で、負傷者三十八名、戦闘不能が十二名だけであり、戦闘不能の隊員と付き添いの救護兵一人は既にチヌークで魔王城への帰投が完了していた。
「くはは! いいぞいいぞ! 無理はするな! 前進と後退を繰り返してプレッシャーをかけろ!」
兵からの報告を受け、嬉々として指示を出すクレイモアを見ながら俺は何を召喚するか悩んでいた。
今回虎蜘蛛族に力添えするのは、単純に虎蜘蛛側の戦力が少ないからだ。
たまに両方を相手取って戦う事もあるらしいけど。
ウェンズデー丘陵は多数の魔法によりそこかしこにクレーターが出来ており、度重なる爆発により銀楼狐側も虎蜘蛛側も、そして魔王軍側の兵士達も派手に吹っ飛んでいるにも関わらず死傷者はまだ出ていないようだ。
あれほどの爆発や衝撃でも致命傷にならないのだから魔族の頑強さは恐るべきものだ。
ウェンズデー丘陵に散らばる兵力の規模はさほど多くないのは報告書でわかっている。
騎馬などはおらず、全てが歩兵か魔法兵だ。
なら今回は無人兵器ではなく、普通のモンスターを召喚することにしよう。
「サモン:ライオネル、サウザンドコール」
ライオネル、二頭を持つ獅子型のモンスターが俺の召喚に応えて次々とその姿を現す。
その数は千体。
「行け! ただし加減しろよ!」
『ワォオオオー!』
弾けるように飛び出したライオネル達を見送り、視線をクレイモアに移す。
「召喚士始動、だな」
「千体程度でこの戦いがどうにかなるとは思えませんけどね」
「はっはっは! 違いない! だが相手の意表をつく事は出来たぞ?」
クレイモアの指差した先を見ると、銀楼狐族が慌てふためいて蜘蛛の子を散らしたような形になっている。
「銀楼狐はあまり接近戦が得意ではないからな。あの獅子はいい撹乱になる」
爆発、吹き飛ぶライオネル達数十体。
閃光、さらに吹き飛ぶライオネル。
だがライオネル達も負けてはおらず、虎蜘蛛族や魔王軍と連携を取り始めている。
突撃で減ったライオネルはおよそ百と少し。
戦いはこれからだ。
虎蜘蛛族は当初突如現れた魔王軍とライオネルに驚いていたが、今では実に柔軟に戦っている。
糸を飛ばして魔王軍部隊のフォローに回ったり、魔法で作り出した石柱の上からライオネルと共に奇襲をしかけたりと縦横無尽に戦っていた。
――そして一日目の戦闘が終わり、魔王軍部隊は思い思いに体を休めていた。
「今回はすぐ終わりそうだな!」
「そうだなぁ! クロードのライオネルの活躍がな!」
「俺達も負けてらんねぇや!」
「俺は今日八十五人倒したぜ!」
「俺は百と二人だ!」
「やるじゃねぇかお前ら!」
隊員達は酒を手に自分の武勇を語り、仲間を褒め称えている。
魔界の戦争は実に規則正しく、午前十一時に開戦の音が鳴り響き、午後十九時には終戦の音が鳴り響く。
翌日も出動出来そうなら出動し、休養が必要だと判断されれば戦線復帰は出来なくなる。
そうして数を減らしていき、最終的に負けを認めた方が負けというもの。
これを聞くと人界の戦争が馬鹿らしくなるけれど、これが出来るのは魔族の強靭な肉体があるからだと認識している。
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爆発規模から言って、エイブラムスなども導入してもいいかとは思ったけど……戦車砲は貫通弾だからなぁ。
確実に死なない、という確証が無いので導入は見送っている。
やってる事は戦争なのに、死人が出たら良くなさそうな雰囲気なのが不思議というか奇妙というかなんというか。
平たく言えば派手な大運動会みたいだよな。
ちなみに魔王軍の被害は軽微で、負傷者三十八名、戦闘不能が十二名だけであり、戦闘不能の隊員と付き添いの救護兵一人は既にチヌークで魔王城への帰投が完了していた。
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