ブラック王国軍から脱退した召喚士、前世の記憶が蘇り現代兵器も召喚出来るようになりました

登龍乃月

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13 テイル王国玉座の間

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 テイル王国玉座の間にて--。

「コザ・ディクトル司令官」
「は……!」

 コザは頭上から投げかけられた言葉に背筋が凍る。
 モンスターの反乱事件から二日後、ネクソン局長により勾留されていたコザは玉座の間に連行された。

「此度の件、非常に残念に思う」
「……は」
「お前はしてはならぬ事をしでかした。その認識はあるか?」
「……はい」
「そうか。経緯は全て聞いた。お前はクロード・ラストに度重なる暴言を吐き、あまつさえ抹殺しようとした。相違ないか」
「ありません……!」
「コザよ。面をあげい」
「は!」

 コザは心の中で少し安堵していた、王の口調がいつもと変わらない。
 それはダラスやネクソンが言うほどの事では無いのではないかと。
 コザは王の次の言葉を待つべく顔を上げたが、自分の考えが間違っていた事を知る。

「この馬鹿者が!」
「がっ!」

 顔を上げた途端、正面からの衝撃でコザは背後に吹っ飛ばされた。
 何が起こったのかと目を白黒させていたコザだが、王の手元に浮かぶ魔法陣から、あぁ自分は王の魔法を食らったのだと理解した。
 そして憤怒に染まる王の顔を見た。
 未だかつて見たことの無い怒りの形相。
 憤怒の王はその怒りを隠すこともなく、コザへと向ける。

「貴様は! 貴様はぁ!」
「あぐっ! がはっ!」

 王の手元からは次々と人の頭部程もある氷の礫が射出され、体を丸めたコザを打ち据えていく。
 玉座の間に控えているのは事情を知るダラス、アスター、ネクソンのみ。
 その誰もが王の行為を止めようとはしなかった。

「はぁっ……! はあっ……! 貴様はテイル王国を滅ぼす気か! ラスト家に罵詈雑言を吐き、あまつさえ手放すとは! 愚か者が! 恥をしれ! ラスト家は子爵ぞ! 貴様のような木っ端軍人如きが何を偉そうに……!」
「も、もうしわけ……がはっ!」

 一際大きな礫――というよりは大きな氷塊が頭に直撃したコザは白目を剥いてその場に倒れた。
 流れ出る血を見ても王の態度は変わらない。

「そのゴミを牢に入れておけ!」
「は!」

 虫けらを見るかのような冷酷な視線をコザに向けた王の一声に、アスターが迅速に動いた。

「ネクソン」
「は」
「このゴミと共謀しクロード・ラストを貶めた者を探し出し拘束せよ」
「御意」
「ダラス」
「ここに」
「お主は崩壊した軍を立て直せ、組織の再編成と街に溢れるモンスターの捕獲、そして他国からでも良い、テイマーを連れてこい。手当り次第だ。テイマーが到着次第、順次調教を開始せよ」
「御意」
「……苦労をかける」
「心中お察し致します」

 王は憤怒の色を収め、物悲しそうな瞳を虚空へ向ける。

「申し訳ございません……父上、おじい様。そしてライザ・ラスト……我が友よ」

 ライザ・ラスト、クロード・ラストの父親であり現王ガイアの親友でもあった男。
 若かりし頃よりテイル王国軍を支え、若かりし王子ガイアを支え続けた傑物。
 ライザはこの世を去るその時まで息子であるクロードとガイア、テイル王国を案じていた。
 
「私が悪いな……軍部の、クロードの身に起きていた事を察してやれんかった」
「陛下は何も悪くありません」

 虚空を見つめながら呟くガイアにネクソンがフォローを入れるが、

「よい。本当の事だ、三代目が国を潰すとはよく言ったものだ。クロード、なぜ言ってくれんかった」
「分かりません……」
「クロードの件はこの私の管理不行き届きも」
「アスターよ。お主は何も悪くない、クロードが大事にするなと言ったのであろう? であればお主は悪くない」
「……は。寛大な御心に感謝いたします」

 アスターは頭を下げ、気を失っているコザを引き摺るように玉座の間を後にした。
 ダラスとネクソンも頭を下げ、その後に続く。
 
「クロードよ、帰って来てはくれまいか……」

 誰も居なくなった玉座の間に、ガイアの悲哀のこもった声が溶けて消えた。
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