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11 工事
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「おーい新入りー! こっちに一体回してくれー!」
「はい!」
トンテンカンテンと朝早くから城内に響く修繕工事の音。
多くの魔族が瓦礫の撤去や資材の搬入などを行っており、俺もその中の一人。
休みを返上して修理に参加しており、目下全力で用途に合ったモンスターを召喚していた。
「サモン:アイアンゴーレム。サモン:ハードスライム」
頼まれた用途別に召喚したモンスター達はきびきびと動いてくれていて、作業員達ともよく馴染んでいる。
今は城内や庭に散乱した数多くの瓦礫の撤去作業を行なっているのだが--。
「行くぞー!」
俺の目の前で巨大な瓦礫がポーイと放物線を描いて外に落下していく。
ズドン、という落下音が鳴り、それが立て続けに鳴り響いている。
魔族の屈強な肉体は人よりも大きな瓦礫を軽々と担ぎ上げ、ボールのようにポンポンと外に放り投げられていく。
そして片付いた所から順繰りに足場が組まれて修復作業が始まっている。
庭に落下した瓦礫は荷車に回収されて外へと運び出されている。
「そろそろ昼にすんべや」
「うす」
気付けば太陽が空のてっぺんに登っていた。
現場監督に渡された水をぐいと飲み干し、その場に座り込んだ。
「大したもんだなぁ新入りよぅ」
ハイオーガの現場監督が俺の隣にどかりと座る。
手には大きな弁当箱が抱えられていた。
「いえいえ、壊してしまったのは俺の不注意だったので」
「にしてもこの魔王城に風穴をあけるたぁ、新入りの召喚したモンスターはつえぇんだな」
現場監督は弁当箱を開きながら言った。
弁当の中身は彩り豊かにおかずが詰め込まれており、もう一つの弁当箱には魔界ではメジャーは黒米がぎっしりと入っていた。
「これカミさんの手作りなんだぜ」
「愛妻弁当いいですね」
「新入りにゃいねーのかい?」
「俺ですか」
痛い所を突かれたと思いながらおにぎりをぱくつく。
このおにぎりも黒米だ。
朝早く起きた俺は食堂に向かい、ブレイブに許可を貰ってこのおにぎりを作ったのだ。
おかずはなし。
「テイル王国から逃げてきたんだろう? 女残してきたんか?」
「いえ、俺にそういう人はいません」
「なんでぇ、若いのにもったいねぇなぁ」
「なにぶん仕事が忙しかったもので……」
「忙しいったって女っけの一つや二つあるべよぉ」
「それがですね……」
不思議な顔をする現場監督に、今まで俺が置かれていた境遇と仕事量などを話した。
「おめぇも大変だったんだなぁ」
「はは、まぁ」
最初は驚いた顔をしていた現場監督だったが、話を進めるうちに悲しそうな表情に変わり、最後には少しうるうるしていた。
「俺だったらぜってぇ無理だな。すぐにぶんなぐっちまう」
「監督ならやりそうですね」
「かっかっか! 短気で喧嘩好きなオーガだかんな! 喧嘩は祭りよ!」
「さすがです」
魔族には好戦的な種族が多数おり、オーガ種もその一つ。
体に付いた傷こそ勲章というような種族であり、筋骨隆々な体躯から繰り出される膂力は凄まじいものがある。
そんなオーガが仕事内容を聞いて涙ぐんでくれるとは……やっぱブラックすぎたなぁ。
「まぁでも安心しろや。ここにいる限り王国みてぇな扱いはうけねぇさ」
「はい。それは実感しています」
「そうだろそうだろ。俺達はそれが当たり前だったがよう、新入りの話聞くと幸せな職場だなって思うぜ」
「幸せですね。こんな職場」
「魔王様はつえーし、四天王の方々もつえーし、つえーだけじゃなくて采配もしっかりしてる。良い上司だよ」
「ですねぇ」
「そういや新入り、今更で悪いが名前はなんつうんだ?」
「あ、クロードです」
朝顔合わせの時に自己紹介したんだけど、やっぱり覚えられてなかったか。
「クロードか! 午後もしっかり頼むぜ!」
「おす!」
弁当を食べ終えた監督はタバコすってくるぜ、と言って去っていった。
オーガもタバコ吸うんだな。
おにぎりを全て平らげた俺は、お茶を飲みながら周りを見る。
どの魔族も楽しそうに歓談し、食を進めている。
愚痴を言っている魔族は一人もいない。
食事時に愚痴をもらしてしまうと食事も美味しくなくなってしまう。
愚痴をいうだけの不満が溜まってないとも言えるけど、仕事に不満がないって素晴らしいことだよなぁ。
としみじみ思う俺であった。
「はい!」
トンテンカンテンと朝早くから城内に響く修繕工事の音。
多くの魔族が瓦礫の撤去や資材の搬入などを行っており、俺もその中の一人。
休みを返上して修理に参加しており、目下全力で用途に合ったモンスターを召喚していた。
「サモン:アイアンゴーレム。サモン:ハードスライム」
頼まれた用途別に召喚したモンスター達はきびきびと動いてくれていて、作業員達ともよく馴染んでいる。
今は城内や庭に散乱した数多くの瓦礫の撤去作業を行なっているのだが--。
「行くぞー!」
俺の目の前で巨大な瓦礫がポーイと放物線を描いて外に落下していく。
ズドン、という落下音が鳴り、それが立て続けに鳴り響いている。
魔族の屈強な肉体は人よりも大きな瓦礫を軽々と担ぎ上げ、ボールのようにポンポンと外に放り投げられていく。
そして片付いた所から順繰りに足場が組まれて修復作業が始まっている。
庭に落下した瓦礫は荷車に回収されて外へと運び出されている。
「そろそろ昼にすんべや」
「うす」
気付けば太陽が空のてっぺんに登っていた。
現場監督に渡された水をぐいと飲み干し、その場に座り込んだ。
「大したもんだなぁ新入りよぅ」
ハイオーガの現場監督が俺の隣にどかりと座る。
手には大きな弁当箱が抱えられていた。
「いえいえ、壊してしまったのは俺の不注意だったので」
「にしてもこの魔王城に風穴をあけるたぁ、新入りの召喚したモンスターはつえぇんだな」
現場監督は弁当箱を開きながら言った。
弁当の中身は彩り豊かにおかずが詰め込まれており、もう一つの弁当箱には魔界ではメジャーは黒米がぎっしりと入っていた。
「これカミさんの手作りなんだぜ」
「愛妻弁当いいですね」
「新入りにゃいねーのかい?」
「俺ですか」
痛い所を突かれたと思いながらおにぎりをぱくつく。
このおにぎりも黒米だ。
朝早く起きた俺は食堂に向かい、ブレイブに許可を貰ってこのおにぎりを作ったのだ。
おかずはなし。
「テイル王国から逃げてきたんだろう? 女残してきたんか?」
「いえ、俺にそういう人はいません」
「なんでぇ、若いのにもったいねぇなぁ」
「なにぶん仕事が忙しかったもので……」
「忙しいったって女っけの一つや二つあるべよぉ」
「それがですね……」
不思議な顔をする現場監督に、今まで俺が置かれていた境遇と仕事量などを話した。
「おめぇも大変だったんだなぁ」
「はは、まぁ」
最初は驚いた顔をしていた現場監督だったが、話を進めるうちに悲しそうな表情に変わり、最後には少しうるうるしていた。
「俺だったらぜってぇ無理だな。すぐにぶんなぐっちまう」
「監督ならやりそうですね」
「かっかっか! 短気で喧嘩好きなオーガだかんな! 喧嘩は祭りよ!」
「さすがです」
魔族には好戦的な種族が多数おり、オーガ種もその一つ。
体に付いた傷こそ勲章というような種族であり、筋骨隆々な体躯から繰り出される膂力は凄まじいものがある。
そんなオーガが仕事内容を聞いて涙ぐんでくれるとは……やっぱブラックすぎたなぁ。
「まぁでも安心しろや。ここにいる限り王国みてぇな扱いはうけねぇさ」
「はい。それは実感しています」
「そうだろそうだろ。俺達はそれが当たり前だったがよう、新入りの話聞くと幸せな職場だなって思うぜ」
「幸せですね。こんな職場」
「魔王様はつえーし、四天王の方々もつえーし、つえーだけじゃなくて采配もしっかりしてる。良い上司だよ」
「ですねぇ」
「そういや新入り、今更で悪いが名前はなんつうんだ?」
「あ、クロードです」
朝顔合わせの時に自己紹介したんだけど、やっぱり覚えられてなかったか。
「クロードか! 午後もしっかり頼むぜ!」
「おす!」
弁当を食べ終えた監督はタバコすってくるぜ、と言って去っていった。
オーガもタバコ吸うんだな。
おにぎりを全て平らげた俺は、お茶を飲みながら周りを見る。
どの魔族も楽しそうに歓談し、食を進めている。
愚痴を言っている魔族は一人もいない。
食事時に愚痴をもらしてしまうと食事も美味しくなくなってしまう。
愚痴をいうだけの不満が溜まってないとも言えるけど、仕事に不満がないって素晴らしいことだよなぁ。
としみじみ思う俺であった。
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