ブラック王国軍から脱退した召喚士、前世の記憶が蘇り現代兵器も召喚出来るようになりました

登龍乃月

文字の大きさ
上 下
8 / 73

8 テロリストの男は

しおりを挟む
「コザ司令、どうしましょう!」
「うろたえるなバカラ少将! モンスター如き駆逐してしまえばよいのだ!」

 そう言いながらもコザは内心かなり狼狽えていた。
 気分良く飲んでいた酒など一瞬で抜けるくらいに。

『本当にいいんですね? 俺がいなくなったら王国は終わりですが』

 憎々しいクロードの言葉が反芻される。
 あの時の言葉はきっと負け惜しみだと、引き止めてくれないゆえの最後の足掻きだと、そう思っていた。
 クロードが逃亡し、三日間は何事もなく、それゆえにコザは「やはりな。何も起こらないではないか」と嘲笑っていた。
 しかし今日、突然始まったモンスター達の異常行動。

「あのテロリストめ……!」

 コザはこう考えていた。
 クロードの腹いせ、報復行動だと。
 
「クロードを探せ! 絶対にこの周囲にいるはずだ!」

 きっと奴はワイバーンで遠くに逃げたとこちらに思い込ませ、この三日間どこかに潜んでこの機会を窺っていたのだ。
 でなければモンスター達の行動に理由がつかない。
 あれほど従順だったモンスター達が突如暴走するなど今までなかった事だし、ありえない事だ。
 と、そう考えていた。
 モンスター達がどこから供給されているかは知らないが、反乱を起こしたのなら処分し、また新たに連れてくればいいのだ。
 幸いにも若い、この数年以内に生まれたモンスター達の一部は正常に言う事を聞き、兵士達と共に鎮圧を行っていると聞く。
 先祖代々だかなんだか知らないが、ろくに戦果もあげず、モンスターの世話係のような分際でぐうたらと金だけはもらっていく。
 あまつさえこの俺に暴言を吐き捨て中指まで立てたのだ。
 能無しは能無しらしく俺に媚びを売っていれば違っただろうに。

「テロリストクロードを探し出せ! 絶対に逃すな!」
「は!」

 兵士達が駆け出すのを目にも止めず、コザはお気に入りの煙草に火を付ける。
 一息吸い、肺の中に満ちていく煙を堪能し、余韻を感じながら煙を吐き出していく。
 そんな時、閉まった扉が激しい音を立てて開いた。

「ど、どうした? ダラス司令」
「何呑気にモク焚いとんじゃこのクソボケがあああ!」
「がはっ!」

 憤怒の形相のダラスが現れたかと思えば、猛烈な勢いでコザの横っ面をぶん殴った。
 不意を突かれたコザは盛大に吹っ飛び、ダラスの背後には「あちゃあ……」と額を押さえて呟くアスターの姿があった。

「立て馬鹿者が!」
「ま、まて! 一体どうした! 落ち着け!」
「これが落ち着いていられるか!」
「だから何の話だ!」
「待てダラス」

 何が起きたのかと混乱するコザを再び殴り付けようとしたダラスの腕を掴む者がいた。

「局長……どうしてここに」

 召喚士クロードの事情を知る三人のうち最後の一人、公安部局長ネルソンが険しい顔をしてそこに立っていた。

「落ち着きたまえダラス。一体何事か」
「話せネルソン! こいつは!」
「ダラス! 今はテロリストのクロードを探す方が先決だろう!」
「「「なに?」」」

 コザが放った一言を受け、ダラスとネルソン、アスターの声が見事にハモった。
 その一言で少し冷静になったのか、ダラスは拳を収めてコザを見下ろす。

「コザ。どういう事だ」
「だから言った通りだ。クロードがこの事態を引き起こした! 報復行動だよ!」

 立ちあがりながらそう言うコザの顔を見る三人の顔は非常に厳しいものだったが、コザはそれも気付かずに自分の意見を話した。
 そしてコザが自らの考えを自慢げに語り終えた途端、再びダラスの拳が飛んだ。
 鳩が豆鉄砲をくらったかのような表情のコザにダラスが怒りをぶちまけた。

「貴様は自分が一体何をしたかわかっていない! これはお前が引き起こした事態だ!」
「な、なぜそうなる! この事態の原因は今話しただろう! ネルソン局長も何か言ってくれ!」
「まぁ待てダラス。彼の言い分には一部の隙も擁護の余地はないが、それとこの場で殴りつけるのは違う」
「……は?」

 コザはネルソンの口から出た言葉が信じられず呆然となる。

「は? ではないよコザ司令。あなたのしでかした事は国家反逆罪に匹敵する、いやある意味テロリストと同義やもしれんな」
「な、何を……」
「アスター将軍から貴様ら将官とクロードとのやりとりの全てを聞いている! 言い逃れは出来んぞコザ!」
「いや、だからそれは……」
「コザ司令。勘違いしているようだから言っておくが召喚士クロード・ラスト、ラスト家はテイル王国の宝であり礎だ。そのような人とたかが方面軍司令一個人、どちらを優先すると思うのかね?」
「は……? いや、だが……俺はそんな話言いたことも……」
「当たり前だ。これは国のトップシークレット、知る人間は国王陛下、公安局長である私、モンスター部隊統括司令のダラス、そして形式上直属の上司という立場を与えられているアスター将軍だけだ」
「だが奴はテロリストだ! でなければこのような事態に説明が!」
「説明なら付きますよコザ司令。私は彼の上司でしたので色々と聞いていました。彼の制御がなくなればモンスター達の縛りがなくなり、好き勝手に動き始める、ということも。そして貴方の部下達からの陰湿な嫌がらせの数々もね。彼が大事にする必要はないと言っていたので黙認しておりましたが」
「そ、そんな……」
「コザ司令、この件は国王陛下に報告させてもらう。むろん君がクロードに投げつけた暴言の数々もね」
「……そんな……うそだ……」
「嘘ではないよコザ司令。そして君を国家反逆罪及びテロ容疑で拘束させてもらう」

━━━━━━━━━━━━━━━

ご覧頂きありがとうございます!
感想、ご指摘、お待ちしております。
執筆のモチベーションにも繋がるので是非とも感想などいただけると嬉しいです。
よろしくお願いします!
しおりを挟む
感想 123

あなたにおすすめの小説

前世では伝説の魔法使いと呼ばれていた子爵令嬢です。今度こそのんびり恋に生きようと思っていたら、魔王が復活して世界が混沌に包まれてしまいました

柚木ゆず
ファンタジー
 ――次の人生では恋をしたい!!――  前世でわたしは10歳から100歳になるまでずっと魔法の研究と開発に夢中になっていて、他のことは一切なにもしなかった。  100歳になってようやくソレに気付いて、ちょっと後悔をし始めて――。『他の人はどんな人生を過ごしてきたのかしら?』と思い妹に会いに行って話を聞いているうちに、わたしも『恋』をしたくなったの。  だから転生魔法を作ってクリスチアーヌという子爵令嬢に生まれ変わって第2の人生を始め、やがて好きな人ができて、なんとその人と婚約をできるようになったのでした。  ――妹は婚約と結婚をしてから更に人生が薔薇色になったって言っていた。薔薇色の日々って、どんなものなのかしら――。  婚約を交わしたわたしはワクワクしていた、のだけれど……。そんな時突然『魔王』が復活して、この世が混沌に包まれてしまったのでした……。 ((魔王なんかがいたら、落ち着いて過ごせないじゃないのよ! 邪魔をする者は、誰であろうと許さない。大好きな人と薔薇色の日々を過ごすために、これからアンタを討ちにいくわ……!!))

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~

名無し
ファンタジー
「モンド、ここから消えろ。てめえはもうパーティーに必要ねえ!」 「……え? ゴート、理由だけでも聴かせてくれ」 「黒魔導士のくせに魔力がゴミクズだからだ!」 「確かに俺の魔力はゴミ同然だが、その分を戦闘勘の鋭さで補ってきたつもりだ。それで何度も助けてやったことを忘れたのか……?」 「うるせえ、とっとと消えろ! あと、お前について悪い噂も流しておいてやったからな。役立たずの寄生虫ってよ!」 「くっ……」  問答無用でA級パーティーを追放されてしまったモンド。  彼は極小の魔力しか持たない黒魔導士だったが、持ち前の戦闘勘によってパーティーを支えてきた。しかし、地味であるがゆえに貢献を認められることは最後までなかった。  さらに悪い噂を流されたことで、冒険者としての道を諦めかけたモンドだったが、悪評高い最下級パーティーに拾われ、彼らを成功に導くことで自分の居場所や高い名声を得るようになっていく。 「魔力は低かったが、あの動きは只者ではなかった! 寄生虫なんて呼ばれてたのが信じられん……」 「地味に見えるけど、やってることはどう考えても尋常じゃなかった。こんな達人を追放するとかありえねえだろ……」 「方向性は意外ですが、これほどまでに優れた黒魔導士がいるとは……」  拾われたパーティーでその高い能力を絶賛されるモンド。  これは、様々な事情を抱える低級パーティーを、最高の戦闘勘を持つモンドが成功に導いていく物語である……。

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

【完結】聖女が性格良いと誰が決めたの?

仲村 嘉高
ファンタジー
子供の頃から、出来の良い姉と可愛い妹ばかりを優遇していた両親。 そしてそれを当たり前だと、主人公を蔑んでいた姉と妹。 「出来の悪い妹で恥ずかしい」 「姉だと知られたくないから、外では声を掛けないで」 そう言ってましたよね? ある日、聖王国に神のお告げがあった。 この世界のどこかに聖女が誕生していたと。 「うちの娘のどちらかに違いない」 喜ぶ両親と姉妹。 しかし教会へ行くと、両親や姉妹の予想と違い、聖女だと選ばれたのは「出来損ない」の次女で……。 因果応報なお話(笑) 今回は、一人称です。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

良家で才能溢れる新人が加入するので、お前は要らないと追放された後、偶然お金を落とした穴が実はガチャで全財産突っ込んだら最強になりました

ぽいづん
ファンタジー
ウェブ・ステイは剣士としてパーティに加入しそこそこ活躍する日々を過ごしていた。 そんなある日、パーティリーダーからいい話と悪い話があると言われ、いい話は新メンバー、剣士ワット・ファフナーの加入。悪い話は……ウェブ・ステイの追放だった…… 失意のウェブは気がつくと街外れをフラフラと歩き、石に躓いて転んだ。その拍子にポケットの中の銅貨1枚がコロコロと転がり、小さな穴に落ちていった。 その時、彼の目の前に銅貨3枚でガチャが引けます。という文字が現れたのだった。 ※小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...