ブラック王国軍から脱退した召喚士、前世の記憶が蘇り現代兵器も召喚出来るようになりました

登龍乃月

文字の大きさ
上 下
9 / 73

9 遊び場テイル王国

しおりを挟む
「あーあ……まぁそうなるよなぁ」

 魔王城自室にて、テイル王国の軍事施設に飛ばしたスカイガーディアンから送られてくる映像をのんびりと見る。
 もちろん送られてくる映像は脳内だ。
 至る所で煙があがり、至る所が破壊されている。
 モンスター達の姿は既にどこにもなく、送られてくる映像はモンスター達と兵士達との激しい戦闘の爪痕だけ。
 だけだが、かなりの被害が出ている事が容易に想像できる。
 二日前の俺は……ゴリアテとお花談義できゃっきゃうふふしていた時か。
 俺がのんびりとお花達に水をあげてる時、テイル王国は大騒動の真っ只中だったというわけか。

「だから言ったのにな。ま、自業自得だろ」

 
 スカイガーディアンに王都上空を旋回させるよう指示を送る。
 
『キュイッキュイッ』
「いやだから絶対そんな鳴き声しないだろって……カメラの音かな?」

 王都の各所からも煙は上がっていて、大通りや路地裏、家屋や商業施設、あちこちに被害の跡が見える。
 
「あ、ゴーレム活動停止してるわ……完全に像になってるな」
『キュッキュッ』

 歩く姿勢のまま止まっているゴーレムや、段差に座り足の上に手を置いて考えるようなポーズのゴーレム、仁王立ちしてどこかを指差し「大志をいだけ」といわんばかりポーズで固まっているゴーレムなど様々だが、見える範囲で動いているゴーレムは一体もいない。
 
「ん? 土煙……あぁ、グレイトウォーホースの群れか」

 土煙をあげながら大通りを爆走しているグレイトウォーホース達はレースさながらに王都市街地を周回している。
 先頭集団と後続集団の差はそこまでない。
 おっと先頭集団から二頭飛び出した!
 その差は一馬身、二馬身、三馬身、ぐいぐい離していく!
 トップ争いはこの二頭、トンデモネーヤとソレミタコトカの二頭だ!
 激しいぶつかりあいだ! 
 なんだよ。あいつら随分楽しそうにやってるな。
 グレイトウォーホースは走る事が大好きな種族だ。
 戦闘や演習がない限り、ずっと厩舎に繋がれる生活を続けてきたあの子達からすれば、今が一番最高に幸せな瞬間だろう。

『ぎょあ、ぎょあ』
「ん? なんだ? カメラに羽……あぁ、グリフォンだな?」

 王都上空高度約七千メートルを周回するスカイガーディアンに近付けるといったらグリフォン以外考えられない。
 元々高高度を飛びまわるグリフォンだが、人間がその高度に耐えられるわけもなく飛行高度を制限していた分、伸び伸びと羽ばたく事が出来るだろう。
 カメラを移動させると実に楽しそうに空中遊泳をしているグリフォン達が見えた。

 サイレントウルフ達の姿が見えないが……あの子達は元々ひっそりこっそり、人目のつかない場所で暮らす種族だし、どこかにあるサイレントウルフのベストプレイスを見つけに旅立ったのだろう。
 元気でやれよ。

『アォーーン』
 
 どこからともなく聞こえてきたサイレントウルフの遠吠えに、自然と口角が緩む。
 街のそこかしこに、軍で使役されていたモンスター達が元気そうにしている。
 人で賑わったテイル王国の栄華は既に無く、今は野生にかえったモンスターが遊びまわる巨大なアスレチックに変貌してしまっていた。
 ま、どうにか仲良くやってくれよな。
 コザ司令官殿。
 これはあんたがたが招いた結果だ。
 親子三代に渡り尽力してきたラスト家を手放した結果だよ。
 アスター将軍やネクソン局長、ダラス司令にはちょっと悪いことしたなとは思っている。
 けどアスター将軍には辞めることも伝えたし、なによりあの現場にいた。
 きっと便宜を図ってくれるだろう。
 グレイトウォーホースを使用していた騎兵隊やグリフォン空戦隊は事実上壊滅、解散だろうし、ゴーレムをベースに展開されていた砲術部隊も強固な壁を失い弱体化。
 サイレントウルフとバディを組んで作戦を遂行する歩兵部隊も相方がいなくなり弱体化。
 それ以外の部隊もそうだろう。
 なんせ軍の全部隊に用途別に召喚したモンスター達が寄り添って、いや、手を貸していたのだから。
 それをコザ司令は放り投げたのだ。
 コザ司令や俺の事を散々コケにしてきた連中がどうなるかなんて知ったこっちゃないが……強く生きろよ。

「スカイガーディアン、おつかれさん。もういいぞ」

 スカイガーディアンをリリースし、ゆっくりと目を開ける。
 寝る前にシャワー浴びないと。
 明日からは休み返上の修復作業がまっているのだから。



━━━━━━━━━━━━━━━


ご覧頂きありがとうございます!
感想、ご指摘、お待ちしております。
執筆のモチベーションにも繋がるので是非とも感想などいただけると嬉しいです。
よろしくお願いします!
しおりを挟む
感想 123

あなたにおすすめの小説

前世では伝説の魔法使いと呼ばれていた子爵令嬢です。今度こそのんびり恋に生きようと思っていたら、魔王が復活して世界が混沌に包まれてしまいました

柚木ゆず
ファンタジー
 ――次の人生では恋をしたい!!――  前世でわたしは10歳から100歳になるまでずっと魔法の研究と開発に夢中になっていて、他のことは一切なにもしなかった。  100歳になってようやくソレに気付いて、ちょっと後悔をし始めて――。『他の人はどんな人生を過ごしてきたのかしら?』と思い妹に会いに行って話を聞いているうちに、わたしも『恋』をしたくなったの。  だから転生魔法を作ってクリスチアーヌという子爵令嬢に生まれ変わって第2の人生を始め、やがて好きな人ができて、なんとその人と婚約をできるようになったのでした。  ――妹は婚約と結婚をしてから更に人生が薔薇色になったって言っていた。薔薇色の日々って、どんなものなのかしら――。  婚約を交わしたわたしはワクワクしていた、のだけれど……。そんな時突然『魔王』が復活して、この世が混沌に包まれてしまったのでした……。 ((魔王なんかがいたら、落ち着いて過ごせないじゃないのよ! 邪魔をする者は、誰であろうと許さない。大好きな人と薔薇色の日々を過ごすために、これからアンタを討ちにいくわ……!!))

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~

名無し
ファンタジー
「モンド、ここから消えろ。てめえはもうパーティーに必要ねえ!」 「……え? ゴート、理由だけでも聴かせてくれ」 「黒魔導士のくせに魔力がゴミクズだからだ!」 「確かに俺の魔力はゴミ同然だが、その分を戦闘勘の鋭さで補ってきたつもりだ。それで何度も助けてやったことを忘れたのか……?」 「うるせえ、とっとと消えろ! あと、お前について悪い噂も流しておいてやったからな。役立たずの寄生虫ってよ!」 「くっ……」  問答無用でA級パーティーを追放されてしまったモンド。  彼は極小の魔力しか持たない黒魔導士だったが、持ち前の戦闘勘によってパーティーを支えてきた。しかし、地味であるがゆえに貢献を認められることは最後までなかった。  さらに悪い噂を流されたことで、冒険者としての道を諦めかけたモンドだったが、悪評高い最下級パーティーに拾われ、彼らを成功に導くことで自分の居場所や高い名声を得るようになっていく。 「魔力は低かったが、あの動きは只者ではなかった! 寄生虫なんて呼ばれてたのが信じられん……」 「地味に見えるけど、やってることはどう考えても尋常じゃなかった。こんな達人を追放するとかありえねえだろ……」 「方向性は意外ですが、これほどまでに優れた黒魔導士がいるとは……」  拾われたパーティーでその高い能力を絶賛されるモンド。  これは、様々な事情を抱える低級パーティーを、最高の戦闘勘を持つモンドが成功に導いていく物語である……。

推しがラスボスなので救いたい〜ゲーマーニートは勇者になる

ケイちゃん
ファンタジー
ゲームに熱中していた彼は、シナリオで現れたラスボスを好きになってしまう。 彼はその好意にラスボスを倒さず何度もリトライを重ねて会いに行くという狂気の推し活をしていた。 だがある日、ストーリーのエンディングが気になりラスボスを倒してしまう。 結果、ラスボスのいない平和な世界というエンドで幕を閉じ、推しのいない世界の悲しみから倒れて死んでしまう。 そんな彼が次に目を開けるとゲームの中の主人公に転生していた! 主人公となれば必ず最後にはラスボスに辿り着く、ラスボスを倒すという未来を変えて救いだす事を目的に彼は冒険者達と旅に出る。 ラスボスを倒し世界を救うという定められたストーリーをねじ曲げ、彼はラスボスを救う事が出来るのか…?

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

良家で才能溢れる新人が加入するので、お前は要らないと追放された後、偶然お金を落とした穴が実はガチャで全財産突っ込んだら最強になりました

ぽいづん
ファンタジー
ウェブ・ステイは剣士としてパーティに加入しそこそこ活躍する日々を過ごしていた。 そんなある日、パーティリーダーからいい話と悪い話があると言われ、いい話は新メンバー、剣士ワット・ファフナーの加入。悪い話は……ウェブ・ステイの追放だった…… 失意のウェブは気がつくと街外れをフラフラと歩き、石に躓いて転んだ。その拍子にポケットの中の銅貨1枚がコロコロと転がり、小さな穴に落ちていった。 その時、彼の目の前に銅貨3枚でガチャが引けます。という文字が現れたのだった。 ※小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...