4 / 73
4 炎と氷
しおりを挟む
やってきました四日目、今日と明日働けばお休みがもらえるそうです。
やったぜ!
「さて、こうしてクロード君にはご足労してもらったわけだが」
と炎のブレイブ。
「君にやってもらうのは皿洗い、食器磨き、テーブルセット、食器の回収、これだけだ」
と氷のアストレア。
「えっと、それは分かったんですけど……」
「「なんだ?」」
「お二人とも、なんでエプロンつけてるんですか?」
そう。
四天王最強と言われる炎のブレイブと四天王最優と言われる氷のアストレア。
腕を振るえば猛火が飛び吹雪が踊る。
人界で恐れられたこの二人がなぜか、ピンク色の可愛らしいフリフリのついたエプロンをつけて俺の前に立っている。
「なんで……あぁ」
「そうか、君は我々の仕事内容を伝えられていないのだな」
「おっしゃる通りで」
「なるほど。であれば教えよう」
「我らは魔王城の料理番」
「腕を振るえば食材が飛び、冷たく美味しいデザートが踊る」
「あーはは……そうだったんですか」
二人してバッチリポーズを決めているが、ピンクのエプロンのせいでどうにも締まらない。
「む。貴様このエプロンを凝視しているな」
「貴様にはこのエプロンの凄さが分かるのだな」
「えっと、凄さとは」
「このエプロンは魔王クレア様が直々に賜ってくれたものだ」
「えっそうなんですか」
「いかにも。このエプロンは油を弾き、汁や調味料の汚れから我らを守ってくれる」
「おそらく魔獣テンペストの猛威からでも我らをお守りくださるだろう」
「いやそれは言い過ぎな気が……」
エプロンを握りしめて恍惚とした表情の二人と、人界で恐れられている二人が同一人物だとは到底思えない、ていうか思いたくない。
まぁでもそれだけクレアに忠義を誓い、絶大な信頼を置いているという現れなのだろう。
「さて、そろそろランチタイムだ」
「果たして新入りの人間にこの地獄が耐えられるかな……?」
「あはは……お手柔らかにお願いします」
悪どく笑う二人の表情は地獄がお似合いな怖さだが、ランチっでどう地獄を見るのだろう。
と、この時の俺はそう思っていた。
チーン、と食堂がオープンする合図が鳴ると同時に兵士のみなさんが雪崩れ込んできた。
「クロード! 席についた順番から水を出せ!」
「はい!」
「クロード! 五番テーブルが呼んでいるぞ!」
「はい!!」
「クロード! ピリ辛クラーケン炒め! 七番テーブルご飯大盛りだ!」
「はいい!!!」
「クロード!」
「クロード!」
「はあああい!」
ガムシャラに動き、二人の指示を聞き出来上がった料理を捌き、水を出し、食器を下げる。
戦争のようなランチタイムが終わり、俺は満身創痍でお皿を洗っていた。
「どうだった?」
「アストレアさん……いやあ、正直舐めてました……」
「はっはっは! そうだろうな! だがクロード、いい動きだったぞ?」
「本当ですか? ありがとうございます」
「王国では色々あったと聞く。その心情は窺い知れないが……こちらではあまり無理をするなよ?」
「はい。ありがとうございます」
山積みされた食器とグラスを洗い終え、椅子に座って一息ついていると、コトリ、とテーブルに何かが置かれた。
いい匂い……。
「飯だ。食うがいい」
「え! いいんですか!?」
「無論だ。腹が減っては戦は出来ぬというだろう?」「そうです、けど……い、いただきます!」
「味わって食えよ」
「ふぁい!」
「はっはっは! そんなにがっつかんでも飯は逃げん、ゆっくり食うがいい」
四天王二人に見守られながら、肉と魚介炒めをおかずに大盛りのご飯をばくばくと食べ進めていく。
皿の上はあっというまに綺麗になり、俺のお腹は見事にふくれていた。
「少し休憩したらディナーの準備に取り掛かるぞ。覚悟しておけ」
「ウィ! シェフ!」
「ふん、調子のいいやつめ」
こうして俺は二人にしごかれながらディナー戦争を生き残り、棒のようになった足を引き摺るようにして自室へと帰ったのだった。
やったぜ!
「さて、こうしてクロード君にはご足労してもらったわけだが」
と炎のブレイブ。
「君にやってもらうのは皿洗い、食器磨き、テーブルセット、食器の回収、これだけだ」
と氷のアストレア。
「えっと、それは分かったんですけど……」
「「なんだ?」」
「お二人とも、なんでエプロンつけてるんですか?」
そう。
四天王最強と言われる炎のブレイブと四天王最優と言われる氷のアストレア。
腕を振るえば猛火が飛び吹雪が踊る。
人界で恐れられたこの二人がなぜか、ピンク色の可愛らしいフリフリのついたエプロンをつけて俺の前に立っている。
「なんで……あぁ」
「そうか、君は我々の仕事内容を伝えられていないのだな」
「おっしゃる通りで」
「なるほど。であれば教えよう」
「我らは魔王城の料理番」
「腕を振るえば食材が飛び、冷たく美味しいデザートが踊る」
「あーはは……そうだったんですか」
二人してバッチリポーズを決めているが、ピンクのエプロンのせいでどうにも締まらない。
「む。貴様このエプロンを凝視しているな」
「貴様にはこのエプロンの凄さが分かるのだな」
「えっと、凄さとは」
「このエプロンは魔王クレア様が直々に賜ってくれたものだ」
「えっそうなんですか」
「いかにも。このエプロンは油を弾き、汁や調味料の汚れから我らを守ってくれる」
「おそらく魔獣テンペストの猛威からでも我らをお守りくださるだろう」
「いやそれは言い過ぎな気が……」
エプロンを握りしめて恍惚とした表情の二人と、人界で恐れられている二人が同一人物だとは到底思えない、ていうか思いたくない。
まぁでもそれだけクレアに忠義を誓い、絶大な信頼を置いているという現れなのだろう。
「さて、そろそろランチタイムだ」
「果たして新入りの人間にこの地獄が耐えられるかな……?」
「あはは……お手柔らかにお願いします」
悪どく笑う二人の表情は地獄がお似合いな怖さだが、ランチっでどう地獄を見るのだろう。
と、この時の俺はそう思っていた。
チーン、と食堂がオープンする合図が鳴ると同時に兵士のみなさんが雪崩れ込んできた。
「クロード! 席についた順番から水を出せ!」
「はい!」
「クロード! 五番テーブルが呼んでいるぞ!」
「はい!!」
「クロード! ピリ辛クラーケン炒め! 七番テーブルご飯大盛りだ!」
「はいい!!!」
「クロード!」
「クロード!」
「はあああい!」
ガムシャラに動き、二人の指示を聞き出来上がった料理を捌き、水を出し、食器を下げる。
戦争のようなランチタイムが終わり、俺は満身創痍でお皿を洗っていた。
「どうだった?」
「アストレアさん……いやあ、正直舐めてました……」
「はっはっは! そうだろうな! だがクロード、いい動きだったぞ?」
「本当ですか? ありがとうございます」
「王国では色々あったと聞く。その心情は窺い知れないが……こちらではあまり無理をするなよ?」
「はい。ありがとうございます」
山積みされた食器とグラスを洗い終え、椅子に座って一息ついていると、コトリ、とテーブルに何かが置かれた。
いい匂い……。
「飯だ。食うがいい」
「え! いいんですか!?」
「無論だ。腹が減っては戦は出来ぬというだろう?」「そうです、けど……い、いただきます!」
「味わって食えよ」
「ふぁい!」
「はっはっは! そんなにがっつかんでも飯は逃げん、ゆっくり食うがいい」
四天王二人に見守られながら、肉と魚介炒めをおかずに大盛りのご飯をばくばくと食べ進めていく。
皿の上はあっというまに綺麗になり、俺のお腹は見事にふくれていた。
「少し休憩したらディナーの準備に取り掛かるぞ。覚悟しておけ」
「ウィ! シェフ!」
「ふん、調子のいいやつめ」
こうして俺は二人にしごかれながらディナー戦争を生き残り、棒のようになった足を引き摺るようにして自室へと帰ったのだった。
3
お気に入りに追加
3,534
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~
さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』
誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。
辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。
だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。
学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる
これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~
名無し
ファンタジー
「モンド、ここから消えろ。てめえはもうパーティーに必要ねえ!」
「……え? ゴート、理由だけでも聴かせてくれ」
「黒魔導士のくせに魔力がゴミクズだからだ!」
「確かに俺の魔力はゴミ同然だが、その分を戦闘勘の鋭さで補ってきたつもりだ。それで何度も助けてやったことを忘れたのか……?」
「うるせえ、とっとと消えろ! あと、お前について悪い噂も流しておいてやったからな。役立たずの寄生虫ってよ!」
「くっ……」
問答無用でA級パーティーを追放されてしまったモンド。
彼は極小の魔力しか持たない黒魔導士だったが、持ち前の戦闘勘によってパーティーを支えてきた。しかし、地味であるがゆえに貢献を認められることは最後までなかった。
さらに悪い噂を流されたことで、冒険者としての道を諦めかけたモンドだったが、悪評高い最下級パーティーに拾われ、彼らを成功に導くことで自分の居場所や高い名声を得るようになっていく。
「魔力は低かったが、あの動きは只者ではなかった! 寄生虫なんて呼ばれてたのが信じられん……」
「地味に見えるけど、やってることはどう考えても尋常じゃなかった。こんな達人を追放するとかありえねえだろ……」
「方向性は意外ですが、これほどまでに優れた黒魔導士がいるとは……」
拾われたパーティーでその高い能力を絶賛されるモンド。
これは、様々な事情を抱える低級パーティーを、最高の戦闘勘を持つモンドが成功に導いていく物語である……。
推しがラスボスなので救いたい〜ゲーマーニートは勇者になる
ケイちゃん
ファンタジー
ゲームに熱中していた彼は、シナリオで現れたラスボスを好きになってしまう。
彼はその好意にラスボスを倒さず何度もリトライを重ねて会いに行くという狂気の推し活をしていた。
だがある日、ストーリーのエンディングが気になりラスボスを倒してしまう。
結果、ラスボスのいない平和な世界というエンドで幕を閉じ、推しのいない世界の悲しみから倒れて死んでしまう。
そんな彼が次に目を開けるとゲームの中の主人公に転生していた!
主人公となれば必ず最後にはラスボスに辿り着く、ラスボスを倒すという未来を変えて救いだす事を目的に彼は冒険者達と旅に出る。
ラスボスを倒し世界を救うという定められたストーリーをねじ曲げ、彼はラスボスを救う事が出来るのか…?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
良家で才能溢れる新人が加入するので、お前は要らないと追放された後、偶然お金を落とした穴が実はガチャで全財産突っ込んだら最強になりました
ぽいづん
ファンタジー
ウェブ・ステイは剣士としてパーティに加入しそこそこ活躍する日々を過ごしていた。
そんなある日、パーティリーダーからいい話と悪い話があると言われ、いい話は新メンバー、剣士ワット・ファフナーの加入。悪い話は……ウェブ・ステイの追放だった……
失意のウェブは気がつくと街外れをフラフラと歩き、石に躓いて転んだ。その拍子にポケットの中の銅貨1枚がコロコロと転がり、小さな穴に落ちていった。
その時、彼の目の前に銅貨3枚でガチャが引けます。という文字が現れたのだった。
※小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる