ブラック王国軍から脱退した召喚士、前世の記憶が蘇り現代兵器も召喚出来るようになりました

登龍乃月

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3 カルディオール

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 魔王城に配属されて三日目。
 今日は何をやらされるのかと思えば--。
 
「よろしくねぇ、クロちゃん」

 四天王の一人、闇のカルディオールが椅子にしなだれかかりながら手をひらひらさせている。
 胸元が大きく開いたボンテージ姿はとってもエッチです。

「よ、よりょしくおねがいしましゅ」

 やばい、緊張して噛んでしまった。

「あらあら……緊張しているのねボウヤ、仕事の前にスッキリしとく……?」
「え……い、いいんですか……?」
「もちろんいいわよぉ。しっかりじっくり汗を流して……わかり合いましょぉ?」
 音もなく、そして瞬時に俺の背後に回ったカルディオールが俺の首を撫で、そこから胸へ……あぁそんなとこ触っちゃらめええ。
 
「さ、行きましょ……?」
「は、はいぃい……」

 鼻の下をだるんだるんに伸ばし、この後に起こる桃色パラダイスな展開に胸もどこかも熱くさせ、連れていかれたのは。
--連れていかれたのは。

「ふんんん!」
「そいやあああ!」
「まだだ! まだいける! ラスト三回!」
「ふおおおお!」

 ゴリゴリマッチョな魔王軍兵士達がバッチバチにトレーニングしているジムだった。
 男達の熱気が立ち込め、弾ける汗、ほとばしる嬌声、踊る筋肉、上がるウェイト。
 度重なる負荷に悲鳴をあげる筋肉はギンギンにパンプし、さらなる負荷を追い求める。
 筋肉のために、筋肉を、筋肉が、筋肉ゆえに筋肉。

「おう! やってるかぁ! テメェラァ!」
「オス! 姉さん!」
「ドユコトー……」

 さっきまでの妖艶な闇のカルディオールはどこにもおらず、腰まである紫色の髪をポニーテールにまとめ、トレーニングウェアに着替えたマッチョお姉さんがそこにいた。

「さぁヤリましょぉ? 筋肉を動かせば緊張も解れるわん」
「ひゃい……」

 俺はこの後滅茶苦茶筋トレした。

「ぜぇ……はぁ……も、むり……」
「はぁいお疲れ様ぁ。それじゃ本番いくわね」
「ま、まだトレ、するんですか」
「違うわよぉ。お・し・ご・と」
「ひえええ」

 回された仕事、それは俺の得意なデスクワークだった。
 魔族の文字は読めないので、言語翻訳の魔導具を貸してもらいながらの作業となった。
 カルディオールは総務人事のような役割の仕事も担っているため、必然的にデスクワークが多くなるのだそう。
 一日中机に座って書類整理を行う日もざらにあるらしい。
 運動不足になりがちなライフサイクルの改善に週三回は城内部に設置されたトレーニングジムで汗を流しているのだとか。
 そのおかげでカルディオールは魔王軍一の美貌と美ボディを保持し続けているという。

「終わりました」
「えっ!? もう終わったの!?」

 カルディオールから回された書類は比較的簡単な処理の部類だったのですぐに片付ける事が出来た。

「それじゃあこっちの……」

 隣の書類の山を指差すが、

「それは終わったやつです」
「うっそん……じゃあこれは……?」
「終わってます」
「やっばぁ……逸材ねぇ」

 そうだろうか?
 おそらく二、三時間はかかっているし、参考資料とにらめっこしながらの作業だったのであまり捗った感じはしない。
 それに書類も、非常にわかりやすく書かれていたし、タスクごとの振り分けも完璧で、俺がやったのは本当に目を通したくらいなのだが。
 おそらくテイル王国でこの量をやったら三倍の時間はかかるだろうし、要領を得ない書き方や責任逃れのための言い分なんかも書いてあったりするし、別の書類を参照、とかもあったりするからな……本当に無駄な作業だったよ。

「うん、ちゃんと出来てる……これも、これも……」
「大丈夫そうですか?」
「大丈夫もなにも太鼓判よ! 助かるわあ! 今日は友達のサキュバスとディナーの約束があったのだけど、遅れずにいけそうだわぁ、本当に助かったぁ」
「それはよかったです」
「クロちゃんもくる? 友達のサキュバス、男紹介しろってうるさくてぇ」
「い、いえ! 自分は大丈夫です!」
「そう? 困ったらいつでも言ってね? 紹介できる女友達や女部下はたくさんいるからぁ」
「わ、わわわかりました」

 たくさんいるって……軍規とかないのか……?

「それじゃお疲れ様ぁ」
「はい、おやすみなさい」

 一日の仕事を終え、筋トレで酷使した筋肉を揉み解しながら自分の部屋に帰った。
 俺にあてがわれたのは魔王軍一般兵用の部屋なのだが、どう見ても一般兵にしては作りが豪華すぎた。
 ウォーターサーバーに簡易キッチン、保冷庫にユニットバスなどが設置されていて、ベッドもふかふか、寝心地最高なのである。
 そもそも一般兵では六人部屋が当たり前ではないのか。
 こんなことを言ったら多分、魔王軍の誰もが「は?」というだろうから言わないけど。
 
「サモン:ヒートスライム」
『みゅ』
 
 バスタブにヒートスライムを召喚し、全裸になった俺はゆっくりとスライムの中に体を沈める。
 スライムは楽しそうに体を震わせ、体の隅々まで包み込んでくれる。
 スライムは雑食で人間を襲うこともあるが、こうして上手く使役すれば体の垢を全部分解してくれる生き物なのだ。
 そしてヒートスライムは何より暖かい。
 適度な弾力に身を預けると、酷使した筋肉がじんわりと温まってくる。

「悪いけど少しマッサージしてくれるか?」
『おみょっ』

 脹脛、二の腕、首、背中、腰、ぐにぐにと押される感触に浸りながらしばらく堪能。
 スライム風呂から上がり、召喚したヒートスライムをリリースする。
 ぷるぷると震えながら消えていくスライムに手を振り、寝巻きに着替えた俺は眠りについた。
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