ブラック王国軍から脱退した召喚士、前世の記憶が蘇り現代兵器も召喚出来るようになりました

登龍乃月

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連載版 2

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 俺が魔王軍に転職して二日目、早速割り振られた仕事が--。

「あ、あの、いいんですかこんな事で」
「む? 不服か」
「い、いえ……」

 大地のゴリアテが俺の背後から野太い声を飛ばしてくる。
 ゴリアテは身長三メートルはあるエンシェントオーガ。
 外皮は鋼のように硬く、関節部には盛り上がったアダマン石が張り付いているが、本人曰くこれは装備とオシャレだそうだ。
 機能性とカッコよさを追求した結果がコレらしいのだけど、俺はまだゴリアテの美意識に追いつけていなかった。

 閑話休題。

 魔王軍なのだからさぞ大変な仕事を任されるのだろうと、不安と緊張にかられていた俺。
 だが実際に割り振られた仕事。
 それは--。
 ゴリアテと共に魔王城敷地内の花壇の世話だった。

「この花綺麗だろう」
「はい、とっても綺麗です」

 拍子抜けしながらもゴリアテの説明をきちんとメモに取り、小走りで後をついていく。
 ゴリアテは身長がでかい分、歩幅もでかい。
 そして歩くたびに地面が揺れるもんだからバランスを取らないと上手く歩けない。
 ちょっとした体幹トレーニングになりそうだ。

「こいつの花言葉を知っているか?」

 ゴリアテは何個目かの花壇の前に座り、小さな可愛らしい紫色の花弁をつけた花を指差す。

 見たことのない花だ。
 なんだろう、可愛らしいし……純粋、とか?

「いえ、わかりません」
「裏切り、というのだ」

 物騒な花言葉だった!

「これは復讐、これは憎悪、それからこれは--」

 ゴリアテは凶悪な顔をさらに凶悪に歪めて笑い、可憐な見た目に似合わない物騒な花言葉を俺に教えてくれた。
 見た目に似合わないといえばこのゴリアテもそうだ。
 天下の魔王軍四天王の一人、大地のゴリアテ。
 泣く子がさらに泣くような人相は見るもの全てに恐怖を与えることは間違いない。
 間違いないのだが、ゴリアテが主に担当しているのは魔王城敷地内の緑化や、各部屋や廊下に置かれた生花の管理、敷地内で耕された畑の管理といった実に地味なものだった。
 大地の、と付くのだからもっともと言えばもっともなんだけど、意外性が物凄くて拍子抜けしてしまったのは内緒だ。

「ゴリアテ様ー! トレント達が有給欲しいそうですがー!」

 魔王城の三階部分にある窓から、ゴリアテの部下であるアースリザードが手を振って叫んでいる。
 手には紙が握られており、あれがきっと有給承認の用紙なのだろう。

「かまわーん! 期限が過ぎそうな者がいたらそいつらにも通達してやれー!」
「了解ですー!」
「ず、ずいぶんざっくりなんですね」
「何がだ?」
「いえほら、有給って中々思うように取れないじゃないですか」

 自慢じゃないが、俺がテイル王城で働き始めて十年、有給なんてものは一度ももらったことはない!
 どうだ!
 なんせ一年目に「有給欲しいのですが」と言った所返ってきた言葉が「みなが汗水垂らして働いているのに貴様はのうのうと休みながら金をもらう気なのか?」である。
 今考えれば「知ったことか」って感じだけど。

「お前は何を言っているのだ?」
「えっ」
「有給は常日頃命を燃やして働いてくれている者達への感謝の印だ。こちらの都合でどうこう出来ることではない」
「え……でも、人員不足、とか……」
「そんなもの私や部下、他の四天王や幹部共が頑張ればいいだけの話だろう。責任者は責任を取るためにその任を任されているのだから」
「そ、そっすね……」

 やばい。
 ちょっと惚れそう。
 いやむしろ惚れた。
 俺あんたに一生ついてくよゴリアテ様。
 どうやら魔王城の勤務思想と俺の常識がかなりずれているのは理解出来た。
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